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密かな復讐

「わ、リリア……それ誰から貰ったの?」


リリアのことを探して事務所の中を探し回っていると、薔薇を見つめながらニコニコしている彼女が目に入り、「一緒に帰ろう」と誘ったのだが……


帰路の途中も、リリアは前が見えてるか怪しいレベルで薔薇を愛おしそうに見つめている。


気になって疑問を投げかけると、リリアはご機嫌な様子で

「焔に貰っちゃって!家に帰ったら飾るんです!」

と答えた。


(……嬉しそう。)


「俺だったら女の子に本物の花は贈らないな。

香りも強くて、手入れが面倒だし……手を尽くしてもいつか枯れるでしょ。」


リリアの目が覚めるようにと、皮肉を零す。

そうだ、造花の方が贈られた側も楽でいいに決まっている。

リリアは純粋だから……男から貰った贈り物に浮かれているだけ。


喜ぶリリアに少し苛立ちながら、それが顔に出ないよう必死に言い聞かせた。

任務は順調だ。リリアは俺に心を許しているし、ヒーロー本部を辞めろと諭せばきっと従ってくれる。


「どうしたんですか?急に……でも私、本物のお花好きですよ!

確かにいつか枯れちゃうけど、咲いてる一瞬が綺麗だから!」


赤城焔……13歳からヒーロー活動を始め、唯一任務で敗北記録を出していない男。

俺の知る限り最もヒーローらしいヒーロー、本物の象徴。


俺がこんなに手段を選ばずに必死な中、

たった1本、リリアに花を渡しただけでこんなに上機嫌にさせるなんてやはり本物のヒーローは違うのだ。


いつかリリアが俺の底を見た時、リリアはきっと本物を選ぶ。

どうせいつか枯れる、その本物の輝きに……勝てる偽物はいないから。


……いや、何を恐れているんだか。

所詮は異星人であることを隠してヒーロー本部に乗り込む悪党だ、俺がデビューする為の踏み台でしかない。


兄さんの能力が無くなってしまってから久しく……「学習」もできないから、劣化が激しくなっている。

このままでは、「兄さんの能力でヒーローになる」という夢が叶わなくなってしまう。


コズミックイエローを引きずり落とすこともできなかったし、リリアをヒーロー本部から追い出すことがデビューへの最後の希望だ。


もう少し惚れさせてから行動しようと思っていたが、昨日の緋山さんの動きが不穏だったこと然り、あまりもたついているとリリアが俺の浅さに気付いてしまう。


そろそろ渋矢にいた事実を突きつけて揺さぶってみようか……

考えていると、リリアの携帯が鳴る。


「あっ……ミカゲさんからだ。灰原先輩……」


こちらを見るリリアに、俺は「いいよ、出て。」と言って微笑んだ。


リリアは道の端によると、何やら花岡君と話し込んでいる。


花岡君もどうせ、ブラックホール団の一員か何かなのだろう。

リリアを護衛しに来たかなんだか知らないが、花岡君がエリヤに気に入られている以上リリアの傍にいることはできない。


全部俺の都合のいいように回っている、焦る必要は無いんだ。


そう思っていると、ふいにリリアが大きな声を上げる。


「え!?ミカゲさんが雑用係に降格した!?」


……その言葉を聞いて、俺の心は不安に支配された。


★ ★ ★ ★


「はあ!?ミカゲ君が雑用係に降格!?ま、待ってよ!どうしてそんなことになった訳!?」


それは灰原がリリアを誘う少し前のこと。

コズミック7の事務所で、エリヤが声を荒らげる。


「大変悩んだのですが……俺が経歴詐称をしてヒーロー本部に入ってしまったことに罪悪感を覚えてしまい、『黄村』さんに相談させて頂いたのです。」


「いやあ〜、エリヤちゃん!今どきこんな潔のいい男いないよお?アッパレ!」


「黄村」と呼ばれた黄色のスーツを着た男が、コズミック7の事務所で大笑いしている。

男は髪もシャンパンゴールドで、装飾品から何まで金色づくしの派手な中年だった。


黄村はヒーロー本部の重役の1人にして、「御三家」とも呼ばれる赤松、青柳に並ぶ権力者。

エリヤであってもその決定を覆すことなどできないのである。


「ま……待ってよ、ただの研究生がヒーロー本部の重役に相談って……なんでそんな事に……!」


「ミカゲ君とは昨日行きつけのバーでたまたま会ったんだよー!話聞いてみたら中々面白い奴でね!しかも……いい店知ってんだよこれが!」


黄村は助平な笑顔を浮かべながらミカゲの背中を叩く。


「……気に入って頂けて何よりです。」


「そんで?よく話聞いてみたら、自分をよく見せる為に双星出身だって嘘ついちゃったことを後悔してるって言うのよ!

こりゃ、俺が愛のペナルティを下すしかないと思ったわけ。」


「馬鹿な……!」


エリヤは髪を逆立てながらわなわなと震えている。


「決して、ミカゲ君とお店行くと女の子の反応がいいから言うこと聞いちゃった訳じゃないよ?こう見えて俺にも正義の心があるわけさ。」


言いながら、黄村はミカゲとグータッチを決めた。


「これからは雑用係として誠心誠意ヒーロー達を裏から支えていこうと思います。」


(この……クソ適当助平ジジイ……!)


エリヤは心の中で悪態を突きつつ、黙り込んでしまった。

展開に光が見えてきたので明日から18時の1回投稿にします。


また、やっと1部(1話〜119話)の地の文修正が終わりました!かなりお時間がかかってしまい申し訳ありません。


【⠀定期⠀】

最新の活動報告にて、この作品の挿絵についてアンケートを行っております。

もし興味があれば是非見て頂けたら幸いです。

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