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「なななな……何言ってんのホワイト……じゃなかった! 真白!? 」


「フユキでいいですよ」


「フユキ……! 駄目じゃない冗談でもそんな事言っちゃあ……! あなたの正義ってそんな物なの!? 」


私は彼の肩を掴んで揺する。


彼は特に気にした様子もなくヘラヘラしながら

「冗談じゃないし……何が正義かは俺自身が決めますから! 」

と言い放った。


「ここまでヒーローになる為頑張って来たんじゃない! どうしてそんな……! 」


ホワイトとレッドが接触した以上、フユキに大きな変化が訪れるのはそう遠くない未来の筈……!

私の影響で心変わりしたのなら改めさせなければ!


「理由、言わないといけませんか? 個人的なことだし、俺リリア様に嫌われたくないですから……」


こちらは画面越しにずっとホワイトの活躍を追ってきたのだ、嫌いに等なるはずがない。

しかし嫌がっているのに無理に聞くのも野暮だろう、なんて心苦しいのか。


「いや、言わなくてもいい! 君はうちに入るべきだ。」


私が悶々としていると、背後から聞きたくもない声が響く。


「!?」


振り向くとそこには大嫌いな上司が、

ニコニコと天使のような笑みを浮かべて立っていた。


「うわっ……! ウリュウ……様! どうして私の部屋に! 」


バツの悪いところを見られてしまった、気分を害していないといいのだが……


「用があったから尋ねたら、メイドさんがリリアは部屋にいるって言うから……ノックしても反応無いし入って来ちゃった! 」


「ノックして反応無かったら入ってこないで! どこから聞いてたの!? 」


「彼がここに入りたいって言ったあたり? 」


一番面倒な部分をしっかり聞かれてしまっている…!


「すっごいイケメンのお兄さんですね! 誰ですか? 」


「まり……リリアの上司のウリュウです! 君、見るからに強そうだねー、うちに入るなら歓迎するよ。」


「え! 本当ですか!? 」


「騙されちゃ駄目! こいつは天使のような顔してるけどこの組織のどの悪人面した奴より悪どいんだから!」


「酷い言いようだなあ、君のミスにも寛容ないい上司じゃないか」


その点には感謝しているが、それだけでは普段の言動と行いの悪印象は払しょくしきれない。


「そ、それで……何しに来たんですかウリュウ様」


私が咳払いを挟んだ後に尋ねる。


「ん……いやあ……まあ彼がいてもいいか。君の記憶について聞きたい事があったんだ、君って所謂転生者な訳だけど……

ただただ知らない世界に放り出されたって感じでもないよね。この世界の事はどの程度知ってるの? 」


「記憶……覗いたんじゃなかったっけ? 」


確か前罹った時に「真理愛」の記憶を見られてる筈だ。

その時「コズミック7」の情報も得ていそうなものだが……


「全部は見てないよ、君って一応女子だろ? 訴えられたりしたら嫌だから」


「一応じゃないわよ! 一応じゃないわよ!? 一応じゃないわよ!!! 」


私は彼を指さしながら叫ぶ。


「わあ……俺、自分よりデリカシー無い人初めて見ました……」


ホワイトはその様子を青ざめながら見ていた。


「こ、この世界のことは4、5年後メインに見て来たから、ある程度はどういう場所か解ってるつもり。最近の事情についてはよく知らないけどね! 」


「そう、4年後…この組織ってどうなってるの?例えばそうだな、どういう人がトップでどういう結末を迎えるのか。」


「……途中までしか知らないんだけど……『ミカゲ』って奴がトップになって地球人をバンバン襲うようになるし、2期の最後は幹部のリリア、つまり私が死んで大幹部以外全滅。

……悪いけど、多分こっち側に勝ち目ないかな。」


特に二期後半の特訓パート以降、ブラックとホワイトの能力は大幅に強化されていた。

今目の前にいるこの男すら、あの二人には太刀打ちできなかっただろう。


「へー……何でそんな大事な情報黙ってたの? 彼の引き抜きにも前向きじゃないし、君って裏切者なのかな。」


「違うわよ、どう頑張っても破滅ならやる事やってやろうって気概なだけ!その証拠に謀反とかは起こして無いでしょ」


「なるほどね……どうせ4、5年後には滅びゆく組織かあ。なんだか嫌だなあ、頑張って幹部になったのに」


「人選ミスね、あなたって人の上に立つと危ういわ」


「はは! 照れちゃうなー! そんなに褒めないで! 」


褒めてないわよ…!


「じゃあさ、方向性を変えちゃわない?リリア……このままいけば崩壊、なら未来を変えたら崩壊しないよね?

例えばコズミック5として未来に戦うであろう子達を今始末するとか。」


確かに……せめてホワイトだけでも消えれば、戦況は大きく傾くだろう。

今の時点でどの程度の実力なのかは不明だが、リリアの姉「エリヤ」に強化された彼は手に負えない筈。

しかしホワイトが死んでしまう未来は避けなければならない、

何故ならもしそんなことになってしまえば私がショックで死んでしまうからだ。


「そんなの手伝えないわ! 私が望まない……! 却下よ」


「何で? 望まないなんて言える立場じゃない癖に。」


ウリュウが私を威圧する。

……この男、アニメでは台詞すら無かったが、どのくらいの実力を有しているのだろう?

リリアは戦闘面で「天才」と謳われていた、努力すれば勝てる相手なのだろうか?

だが、リリアの本能が私に訴えかけている、この男を敵に回すべきではない、と。


「何も全否定がしたい訳じゃない、もっといい解決策がある筈って言いたいの。貴方の案を実行して困るのは、私が知ってるメンバーとは違うメンバーが入った時、私の予測が役に立たないこと……!

もしそうなったら私が知るより早く組織が滅ぶ可能性だってあるわ! その責任って誰が取る訳? ……私ではない筈よね? 」


「確かにそうだ、折角未来を知ってるみたいなのに、その知識が無駄になっちゃうよね。

じゃあどういう風に未来を変えたらいい方向に決着する? 」


これは、思ったよりも早く巡ってきたチャンスなのではないだろうか?

私の「ヒーローと敵対しない組織を作る」という目標を今この男に伝えれば、理解を得られるかもしれない!


「……ボスが変われば……いいんじゃないかしら。」


「ほお、ミカゲくんじゃない人になればいいって訳? 」


ミカゲ「くん」? 顔見知りのような言い方がひっかかる。

彼はミカゲの知り合いなのだろうか?


「そう、彼が地球人を敵に回さなければ、ここまでこの組織とヒーロー達は対立しなかった……変えるならヒーローサイドの事よりこの組織の方が良いわ。」


「で? 代わりに誰がボスになればいいと思う? 」


私は画面越しにこの組織を見ていたに過ぎないので、内情……さらにはアニメよりも前の状況など知りようもない。

幹部の名前くらいは記憶しているが、人柄や適性までは解らないな。


……いや、待てよ……?この男には野心があるのだろうか?


自分がボスになりたいとか、組織を変えたいという気持ちはあるのだろうか?

この男は何考えているか解らないが、現状私に最も近い幹部。

恩を売っておけば……或いは。


「あなたが……いいわ! あなたしかいない! 」


私はウリュウを真っ直ぐ見て言う。


「へえ? 君って僕の事嫌いなんだと思ってた。」


勿論嫌いだ。

しかし組織内に味方を作っておくのは今の私には大事なこと。

姉の件で四面楚歌な状態で「仕事さえこなせば認めてくれる」というウリュウのスタンスはある意味救いなのである。

加えてこの男、話が通じない相手でも無さそうだ。


ならば、こいつの信用を勝ち取っておくのは悪くない。


「そんなことない! 私、前いた世界でもこんな顔のいい人に会った事なくて

緊張しちゃうのよ! ほーんと……えっと……顔がかっこよくて……髪がサラサラで……すごく……ボス向きよね……? 」


「見た目しか褒められてないんだけど。」


「で、でもほら! 貴方に野心があるなら私は味方になるわ! 悪い話じゃないでしょ?」


「特に上昇志向は無いけど……ふむ、ミカゲ君が闇堕ちして組織が破滅……それなら僕が統治した方がはるかにマシだね。

うん! わかった! 一緒に組織のトップを目指そう、リリア! 君の働きに期待してるよ!」


彼はそう言って握手を促した。

私はおずおずと握ると、彼は私を引き寄せ、耳元で

「でも裏切ったら殺す」

と脅してくる。


ああ、やっぱりこの男は関わるべきではなかったかもしれない。

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