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思い出の場所

『なあ、どうして君は一人でいるの?』


『俺は施設出身でね……今は名家の養子なんだ。それがバレたら周りから人が居なくなってしまった。

君も軽蔑しただろう?無理に話しかけなくていいよ』


『……どうして?僕はそんな事じゃ君を軽蔑しない。』


ーーーーー


私はミカゲさんに誘われるがまま彼の車に乗り込んだが

ミカゲさんは車を出すと集中したように黙り込んでしまった。

「どこに行くつもりなの?」と幾度となく尋ねても返答はなく、私は段々不安になって来る。


「ミカゲさん!」


「……えっ……」


何度目かの呼びかけで、やっとミカゲは反応を示す。


「さっきから話しかけてるのに反応が無いから戸惑ったじゃない……!どこに向かうつもりなの?」


「……申し訳ない、昔の事を考えていて……

海を目指していたところだよ、真理愛は海が好きでよく足を運んでいるとリリア様のお父様から聞いていてね。」


お父様がそんなにリリアの事をペラペラと話すなんて……娘である私は1回か2回顔を見たのみで話した記憶などほぼ無いに等しかった。

ミカゲさんは相当お父様に気に入られているらしい。


「貴方の事だから私を地下に閉じ込めて軟禁でも考えてるのかと思った。」


「そんな事する訳ないさ、君は友人の婚約者なのに……」


「友達の婚約者と認識してる癖に花束を贈ってドライブに誘うのね。」


私が言うとミカゲさんは目を細める。

ミカゲさんは叩き上げなのかもしれないが、私だって一時期は裏切り者の疑惑をかけられ様々な人間から無視されていたところから幹部にまで這いあがった女なのだ、そう簡単に懐柔などされない。


警戒していると、

ミカゲさんが一言「着いたよ」と言う。顔を上げると目の前には海面がキラキラと輝いていた。


「さあ、降りようか……どうぞ、手を」


「要らないわ、自分で降りれる」


ミカゲさんの手を跳ね除けると、私は車を降りる。


もう何度ここに訪れただろうか?

ここに来るとナギの事を思い出して少し元気になれるのだ。


「浜を歩こうか、寒くないかい?」


ミカゲさんはそう言ってコートをかける。

少し前であれば、「ああ、なんて紳士的なのだ」と感動していたところだが、今私の心の扉はミカゲさんに対して閉じかかっている。


私は無愛想に「ありがとう」と言い放つと浜に出た。


「海を見ている時、どんな事を考えているんだい?」


「どうしてあなたにそんな事教えなきゃいけないのよ」


「おいおい……そんな情報悪用しようがないだろ?どうしても聞かせて欲しいとは言わないが。」


……確かに……私はこれからこの男を逆に懐柔しようと画策しているのだ。

心の扉を閉めたままにしていても仕方がない。


「昔……ナギとここで遊んだの。水かけあって、転んで……それで」


私は言いかけて顔を真っ赤に染める。

「キスをしたのよ」なんて言えるはずがない。


「あー……そんな感じ!とにかく遊んだの、思い出の場所よ!」


「君はナギ君の事が本当に好きだったんだね……ああ、変な意味じゃないよ?

絆が強いって意味さ。」


ミカゲはそう言って笑う。

その当人は私の事を忘れているのだけどね。


「実は、君が昨日ナギ君救出の話をしていたから今の彼について少し調べさせて貰った。

現在彼は高校に通いながらヒーロー活動に勤しんでいて……なんでも人当たりが良い好青年として大人気だそうで、『王子』と周りから呼ばれているそうだ。」


そうなんだ……知らなかった。

もしかして高校生活が楽しくて髪を染めたのだろうか?

ナギが楽しいに越したことは無いが、すごく複雑だ。


「因みに彼女はいないらしい」


「はっ倒すわよ」


「失礼、余計な情報だったか。しかし俺がボスになった暁にはナギ君救助に多くの支援をしようと考えているんだ、これは本気だよ。

君とウリュウがボスになって一番実行したいのはその部分だろう?

何が足りない……?そんなに地球人と仲を深めることを望んでいるのかい?」


「ウリュウの理想は地球人との和解、ノータッチなら今の距離感と何も変わらないじゃない……。そのスタンスは曲げられないわ、私を懐柔しようなんて考えるのはやめて。」


「懐柔なんて……俺はただ君を理解したいだけなんだ。」


ミカゲさんが言うと、急に高い波が押し寄せてきて私は水を被りそうになる。

するとミカゲさんは咄嗟に私の体を抱きかかえ、私の代わりに水を被ってしまった。


「きゃ……!ご、ごめんなさい!冷たかったでしょ……?大丈夫?」


私が言うと、ミカゲさんは私から離れずに私の顎を持ち上げる。


「……俺を警戒してたんじゃないのかい?迂闊な子だ……

やっぱり君は普通の女の子みたいだね、リリア様とは似ても似つかない。」


近くで見ると、ミカゲさんの端正な顔立ちがはっきりとわかる。

私は顔が熱くなるのを感じながら

「馬鹿にしないで……!私は実力で幹部にまで上り詰めたの、

あまり舐めてると痛い目見るわよ」

と言い返す。


「侮っている訳じゃないさ、君はあの偏屈なウリュウやシノの信頼を勝ち取っている、その点では特異な存在だが……

感性や性格の部分では普通の女の子だと言いたいだけだ。」


ミカゲさんは言い切ると私の耳元で

「……なあ、真理愛……もしもの話だが、ウリュウがもし地球人とのハーフだと公になれば……選挙はどうなると思う?」

と囁いた。

現在全ての話を改稿(修正)しております。

32話まで完了しており、途中前後がかみ合わない部分があれば

改稿前なのだと思って頂けますと幸いです。

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