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ラナンキュラス

ミカゲさんとの話し合いは上手く行かなかったが、それは私があまりにも相手を知らなすぎたせい。

そして何より「ミカゲさんがリリアに牙を剥く筈がない」という慢心から足元をすくわれたせいでもある。


ミカゲさんが危険な男と分かった今、もう騙されたりはしない……!

逆に相手は私の事を「ただの中学生」と侮っているかもしれない。

今度は逆に私が足元をすくってやる、そう心に誓った。


……そして、シノの情報まで調べさせた理由だが……

前回の話し合いで交渉した時に思ったのだ、「シノは金だけを気にして動くわけではない」と。


前の話し合いの時、シノは4億よりも私を選んだ。

理由はどうであれ、あの時シノにお金以外の可能性を見た。

お金以外にもシノの心を動かすものは存在するかもしれない、

今回緑川に調べて欲しいのはその部分だ。


私は屋敷で資料を作成しながら、どうすればあの二人を説得できるかを一生懸命考えていた。


……そういえば……ミカゲさんは地球人と接触したくないと言っていた。


ならば、どうして2年前ウリュウが「地球人のハーフ」とカミングアウトした時嫌悪感を見せず協力したのだろう?


「リリアちゃーん!お、ま、た、せ♡

ミカゲ君とシノの来歴を調べてきたよー!」


緑川がそう言いながらテンション高めに部屋に入ってくる。


「あ、ああ……!ありがとう。」


緑川に手渡されたのは、やけに分厚い資料だった。

やはりこの男、スパイ活動をさせたらかなり優秀なようだ。


「ありがとう、拝見するわ」


「あと、シノの事なら細かいことはウリュウ君か僕に聞いた方が早いかもね、幼馴染だし。」


そういえばそうだ、シノは小学生くらいからウリュウや緑川と交流があったと聞く。


「それなら聞いてもいい?シノがお金よりも興味を持ちそうなものって何かあると思う?」


私の言葉を聞いて、緑川は首をひねる。


「んー……思いつかないけど……お金を積まれても靡かなかったことならあったかな。」


「本当!?」


「シノってとにっかくリリアちゃんのお姉ちゃん……エリヤが苦手でさ」


「……エリヤが?」


「昔、エリヤが言ったんだよ」


『ねえ、シノ……?私専属の発明家にならない?好条件で雇ってあげるし材料費も出してあげる』


エリヤはシノにも目を付けていたのか……シノは稀に見る天才で能力も全て把握している訳ではないが、すでに判明している「心の声が聞こえる」という能力の時点でかなり強い。

早めに目を付けて囲い込んでおきたいという気持ちも解る。


「そしたらシノ、すっごい嫌がっちゃってさ。僕からしたら当時すっごく羨ましかったけどなー……

あんな可愛くてお金持ちの子に雇われるなんて……えへへ……」


この男はブレないな……いまの顔を若葉さんに見せたらきっと命は無いだろう。


しかし……確かに意外だ、エリヤは私よりも家の金を自由に使えていたと聞いているし、相当な額を提示していたに違いない。

それでもシノが応じなかったのにはきっと理由がある筈だ。


「ミカゲ君は……うん、調べてて思ったけど結構苦労して来たみたいだね。

高校から付き合って来た僕の印象としては……悪いやつじゃあ絶対にないってこと。

でも昨日君も身に染みてわかったろ?ミカゲ君は人の感情を揺さぶって操るのがとっても上手いんだ。

隙を見せたら終わりだよ、油断しないでね。」


「ええ、ありがとう。」


ーーーーーーーー


私は緑川が帰った後に二人の来歴を読み漁った。


……ミカゲは施設出身……なのに家柄を重視されがちなこの組織で大幹部にまで上り詰めたのだから、彼の能力の高さはやはり並外れている。


一方シノはかなり裕福な家庭出身らしい、思えばウリュウと幼馴染という時点であり得る話か……


昔は能力が1つだけしかなかったが中学に入ってから「人の心が聞こえるようになる」能力を発現、その後暫くひきこもりがちだったがウリュウと緑川との交流は途絶えず……。

あの3人、思ったよりも固い絆があるようだ。


ミカゲとシノどちらから話し合えばいいのか考えていたが、昨日のミカゲとの出来事を考えるにシノを優先した方が良いだろう。


交渉条件は……そうだな、未来の事をシノにも話してやるというのはどうだろう?

現状ウリュウにしか未来に起こることを告げていないが、もしシノが味方になるならそれを話してみるのも悪くないかもしれない。

シノは交渉の時明確に私が未来を知っているという部分に価値を見出していそうだった。


これだけならわざわざ婚約関係になる必要も無いだろう。

よし、早速ウリュウに相談して……


私が席を立った瞬間、インターホンが鳴る。

一体誰だ?こんな夜中に。


使用人に「私が出るわ」と声を掛けると、私は玄関の扉を開ける。


「はーい、どな……た……」


そこには、赤いバラの花束を持ったミカゲさんが立っていた。


「やあ、昨日邪魔が入ってしまってちゃんと話せなかったろう?

真理愛、君とまたゆっくり話がしたい……どうかな?これからドライブでも」


私は花束を受け取ると、バラの花と思っていた花が別の花であることに気付く。


「……ラナンキュラス……」


バラの品種に「ラナンキュラ」というものが存在する程に薔薇に似ている花だ。


「……リリアに見えてリリアではない私に向けた嫌味のつもり?」


「とんでもない、君にぴったりの花言葉があるんだ

『君は魅力に満ちている』俺には君が宝石のように見えるよ、真理愛。」


この男の目的はただ一つ、私を懐柔するつもりなのだ。


勝ち誇った顔からミカゲさんの慢心が伺える。

本来ならこの罠に引っかかってやる筋合いなど無いが……

逆に油断している今がミカゲさんの足元をすくうチャンスだ。


「ええ、いいわ。行きましょう」


私はミカゲさんの手を取り、微笑んだ。

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