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洗脳

「あ、あなた一体何を……」


「実は、以前から君の態度がリリア様らしくないことが気になっていたから……罠にかけさせて貰ったんだ。

リリア様は小学生時代からブラックコーヒーを好んで飲んでいたと耳にしてね……

どうして君は今、そのブラックコーヒーにミルクとシロップを入れているんだい?」


「あ……!」


私は思いもよらなかった追求に視線を泳がせる。

どう答えたらいい……?ミカゲさんは本当にリリアが好き、それは今までの彼の行動からも十分に伝わってきた。


今、私がリリアじゃないとバレれば……ミカゲさんはどう思うのだろう?

アニメのように闇堕ちしてしまうだろうか?私の事を殺そうとするだろうか?

何にしてもウリュウとミカゲさんの関係を確実に悪くしてしまう要素となりうる。


「わ、私はリリアよ!それ以外の何者でもないわ!」


私は慌てて言い放つ。するとミカゲさんは鋭い視線を向けながら、

「では、幼少期のことについて何か覚えている事はありますか?俺は貴方のお父上と仲がいい。

すぐに事実確認できるので教えて下さい。」

と言う。


「え……えっと……」


そんなの、言える筈がない……。

私はリリアじゃないのだから。


迷っていると、ミカゲさんは隣に座りそっと私の手を握る。


「大丈夫、怖がらなくていい……。俺はただ君の口から真実が聞きたいだけなんだ。

頼む、本当の事を教えてくれ。」


ミカゲさんは優しい声で囁く。


……ミカゲさんは本気でリリアが好きなんだもの、きっと気になって仕方が無いはず。


本当のことを……言うべきだ。


「私は……リリアじゃ、ない……リリアの身体に転生者の『真理愛』が入った存在なの。」


私は震える声で言い放つ。するとミカゲさんは優しく私を抱き締め、「よく言ってくれたね」と言いながら頭を撫でた。


張り詰めた緊張感から開放された私は、ミカゲさんの優しい声にどこか安堵していた。


「……真理愛、その転生者っていうのは何?」


「えっと……死んだ人間が転生して他人として生まれ変わった時に、その自我が残った人の事を……言うのかしら。」


「成程、だから君はリリア様であってリリア様ではないと……本物の彼女はどこに?」


「私にもわからないわ、たまに夢で会うことはあるけど……」


「君は何かに巻き込まれただけでこの事象に詳しい訳じゃないのか」


流石と言わざるを得ないくらいに、ミカゲさんは理解が早い。


「ごめんなさい、騙すつもりは無かったの」


「勿論解っているさ、君は俺と接する時いつも心苦しそうだった。

可哀想に……他人としての人生を歩まなくてはならなくなってしまっただけでなく、組織の事にまで気を回さなくてはいけなかったなんて……さぞ大変だったろう?」


ミカゲさんは笑顔で言う。

なんだか、今までの苦労を解って貰えたような、不思議な気持ちだ。


「俺もウリュウと手を組みたいのはやまやまだが、地球人とあまり接触したくないというのが本音だ。

そこで、こういうのはどうだろう?俺は地球人と接触もしないが、敵対もしないことを君やウリュウに誓うよ。

だから俺の下につかないか?」


「でも……ナギを救出しなきゃ……」


「勿論協力するさ、君達の計画の為に高額の予算を回してもいい。

大丈夫、俺は君の味方だよ真理愛。

だからウリュウを一緒に説得してくれないか?」


この人の声を聞いていると、とても安心してきて……

なぜかそうした方がいい気さえして来てしまう。


「あの……わた……し……」


「お客様ー?いたいけな少女を洗脳しようとしないで頂けますかあ?」


私が呆けていると、ミカゲさんのテーブルに水を置きながらウェイターが言い放つ。


「え……?」


「ウリュウ君からリリアちゃんをよく監視しとけって言われたからなんのことかと思ったらこういうことかよ……ミカゲ君、相変わらずの人心掌握術だね。」


ウェイターは呆れたように言いながらミカゲさんを睨む。


「あの……どなた……ですか?」


私が尋ねると、ウェイターは「君のヘタレたお兄ちゃまだよ」と言う。


「もしかして……緑川!?」


私が声を上げると、緑川が憑依しているであろうウェイターはグッドサインをしてみせた。


「洗脳なんて人聞きの悪い。俺はただ彼女に説得を試みていただけだよ。

彼女……真理愛はリリア様その人では無いが、ウリュウやシノからの評価も高い。」


「は!?いやあいつらは私の事ただの便利な道具ぐらいにしか思ってないわよ」


「彼らは口では『利用価値がある』等と言ってはいるがその実……君の事を本気で欲している。

君が俺に付いてくれればウリュウもシノもこちらに付くだろうと思っていたんだが……」


ミカゲさんは言いながらコーヒーを呷る。

ウリュウとシノが私を?そんなはずはない。


それにしてもこの男、狙いがあって私に優しい態度を取っていたのか。

危うくミカゲさんの要求を呑んでしまいそうになる所だった。


「だめだよ、話し合いはおしまい。リリアちゃんは俺が回収するからミカゲ君は離れて。」


緑川に憑依された男が私とミカゲさんを引き離す。


「真理愛、困ったらまた俺を頼りにおいで、君にとって最善の選択を考えてあげよう。……今度は邪魔が入らないよう個室の店で。」


ミカゲさんはそう言って笑顔で手を振る。


「騙されちゃだめだよ、あいつはああやっていいように人を操ろうとするんだ。

少しでも隙を見せたら丸め込まれるから注意して。」


……リリア目線でのミカゲさんは、誠実でただリリアに憧れているだけの好青年だった。

それが私がリリアでないと分かった瞬間感情を揺さぶって洗脳しようとしてくるなんて……!


やはりあの男はアニメで見た通りの狡猾な男だ、油断してはいけない。


それにミカゲさんの「地球人と接触したくない」というスタンスはウリュウの最終的な目標に対して大きな障害となりうる。


あの人を味方に引き込むのは難しそうだ……

何より、今回のように説得を試みている間に私がミカゲさんに落とされる可能性が高い。


と、なるとやはりシノを仲間に引き込むのが1番、か……?


悩んでいると、緑川に憑依された男が私の顔を伺った後に

「そんなにミカゲ君を説得したいなら、ミカゲ君の事について調べてみたらどうかな?」

と尋ねる。


「そんなのどうやって……あ……いや、そっか、貴方は元々ウリュウの部下なのよね?」


「そういう事!使ってくれるなら何でも情報を調べてくるよ?」


「じゃあ……ミカゲさんとシノについて調べて欲しいの!どうでも良さそうな情報から何まで、調べ上げて来て!」

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