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成り代り

―やばい…

 何だこの状況…?


…田村さんに勝利した翌日、俺はヒーロー本部に呼び出され

指令室の扉をくぐると、よく知る面々と

頭に包帯を巻いた役員のエリヤが俺を見ていた。


「…あかりちゃん、来てくれてありがとう

 急に呼び出したからびっくりしたでしょ?

 若葉ちゃんはやっぱりこなかったか…

 連絡が付かなかったからそうだとは思ってたんだけど」


「…えっと…これはどういう面子…ですかあ?」


俺は部屋の中で待機していた彼らを見やる。

焔君はまだいいとして…金髪の少年に

フユキ君、ナギ君って…殆どがヒーロー協会に移籍予定の人間じゃないか。


「どういう面子?嫌だなあ、コズミック7で集まらせたんじゃない」


コズミック7!?この頃には無いものだろ!?


「エリヤ、そういえば事件の事…

 大丈夫だったか?

 ニュースになってた女性役員って

 あんたの事だろ?」


金髪の少年…まさか未来のコズミックイエローか?

彼がエリヤに心配そうに尋ねる。


「そうなの…酷いよね、

 急に襲ってくるなんて…!」


エリヤは涙目で言い放つ。

事件って…例のカメラにリリアちゃまが映ってたって事件か?

被害者は公表されてなかったけどこの女だったんだ…!

くそ、リリアちゃまをはめたんだな!?


「エリヤ、安心してね

 俺が犯人を消し炭にしてやるから!」


彼女の手を取りながら、焔君が言い放つ。


「ありがとう焔君…

 でも無理はしないでね…?」


「しないよ、だって…

 絶対死なない強いヒーローになるって

 エリヤと約束したもん!」


焔君の言葉を聞いてエリヤは少し笑うのを堪えるように下を向き震えた。

…あれ…妙だ、焔君とエリヤってそんなに仲良かったか?

そんな約束いつしたんだよ…?


俺は咄嗟にフユキ君の方を見る。

この子は勘がいい、きっとこの妙な状況を不思議に思っている筈…!


「先生ずるい!俺も犯人捕まえてエリヤ様に褒められたいです!

 エリヤ様、俺もエリヤ様の為に頑張りますね!」


想像とは裏腹に、彼はあくまでも無邪気に言い放つ。

おかしい…フユキ君はまだヒーローになってない、

エリヤと接点なんてある筈ないんだ!

…まさか…『リリアちゃまの存在がエリヤに置き換わってる?』


俺は嫌な予感がして口を押える。

嘘だ…嘘であってくれ、こんなの…!


「エリヤ…怖かったよね

 大丈夫

 俺が…君を守るから」


ナギ君がエリヤを真っ直ぐ見ながら言い放った時、

俺は全てを察した。

リリアちゃまは…この女に仲間を奪われたんだ。



…話が終わり、俺達「未来のコズミック5」は解放される。

こんなのあんまりだろ…リリアちゃまのやって来たことが…

努力が…こんな簡単に奪われるなんて。


エリヤはあの後、

監視カメラに映ったリリアちゃまにそっくりな少女の写真を渡してきて

「この子を見つけたら捕獲して来て欲しい」

と命令してきた。


監視カメラに映った少女…確かにリリアちゃまによく似ているが、

本人よりも幼いように感じられる…

しかし、これだけ似ていれば注目を浴びてもおかしくない。

リリアちゃま…!どうしてあの子がこんな目に逢わなきゃいけねえんだよ!


ーーーーー


「しかし…本当に騙せるんでしょうか?

 あの妹さん、2年前の写真を参考に

 変身させたさせたのでしょう?」


全員を帰らせた後で、エリヤの秘書が彼女のデスクにコーヒーを置きながら心配そうに尋ねる。


「仕方ないじゃない…10歳以降の写真は

 燃やして捨てちゃったんだもん

 …女として美しくなって行くあの子なんて見てたら…

 私、病んじゃうの…」


エリヤは涙目になりながら秘書を上目遣いで見つめた。


「やれやれ…違和感を持たれなければいいのですが」


秘書は言いながら、可笑しそうに笑ってみせたのだった。


ーーーーー


ー 一方その頃、リリアはブラックホール団内で謹慎していた。


「ああ~~~~疲れた疲れた疲れたぁ~~~」


ラボの中でシノは言いながら項垂れる。

彼は私が映ってしまったカメラの映像を消そうと各地をハッキングしてくれていた。


「リリア、甘いもの」


「あ…はい!」


私は彼に言われた通り、手作りのクッキーを作って来ていた。

彼にそれを渡すとシノは机の上でだらけながらそれを頬張る。


「ちょっと!やってもらってなんだけど、

 そんな体制で物食べちゃ駄目よ!?

 だらけながら食べると牛になっちゃうんだから!」


「うっせー、お前は俺の母ちゃんかっての…

 お前の映った動画色んなとこに散らばり過ぎてんだからしょうがねえじゃん

 表層のはほぼ全部消したけどディープウェブまで手が届いてねえんだよ

 あーあー、何で俺様があんな安い報酬でこんな事しなきゃならねんだか」


「う…ご、ごめんなさい…あれが私から支払える限界の額だったの…」


私が使えるグレイシャ家の資産と言うのはかなり限られている。

会った事は無いけれど、リリアのお父様から許可が出ない限り

彼に払える報酬と言うのには限度があった。


「反省してんならもっと菓子をよこしな

 クッキーだけじゃねえよな勿論」


「チョコとケーキ…カヌレにマフィンも焼いて来たわ!好き?」


「あめえもんなら何でもいい」


彼はそう言って私の差し出したお菓子を頬張ると訝しげに私を見る。


「…美味しく…なかった?」


「…なあ、前から聞こうと思ってたんだけどよ

 あんたって…誰なんだ?」


私は彼に言われ、ぎくりと体を強張らせる。


「誰って…?」


「…あんたにワンド作ってやった時によお…

 お礼にくれた菓子が…

 なんつーかすっげえ不格好で、嫌なくらい甘くてよ

 …結構気に入ってたんだが

 これは何か店の菓子みてえだ、短期間でこんな

 成長するもんなのかと思ってさ」


ワンドを作って貰った時って…いつなんだろう?

短期間って事はつい最近のことなのかな?


「なんだ、そんなのも忘れちまったの」


「あっ…」


「…まあなんだ…忘れたって言うより…

 あんた、リリアじゃないんだろ」


私は思わず俯く。

まずい…!なんて回答したらいいのよ…!


私はシノの顔をちらりと見る。

机の上で項垂れている様に見えるが、

彼の眼差しは真剣なものだった。


こいつに嘘ついたってどうしようもないし…


「…ええ…私…『転生者』なの…

 えと、要するに…リリアじゃない別人が

 リリアの中にいる状態で…

 やっぱり…解っちゃうわよね、あなたには」


「まあな、考えてる事も違うし

 …なるほど…なあ、俺さ…

 初めあんたの事気にくわなかったんだよ」


シノはため息交じりに言う。


「それはなんとなく伝わった

 とにかく突っかかって来てたもの」


「やっぱりバレてたか

 …まあ厳密に言うと、あんたってよか

 あんたの姉ちゃんが気に食わなかったもんで

 姉妹揃ってあの気の優しいお坊ちゃん誑かしてんじゃねえかって

 かなり警戒してたんだ」


気の優しい坊ちゃん…まさかウリュウの事!?

こいつにはあの悪魔がそんな風に見えてる訳…?


「そう言うなって、あいつ結構優しいぜ?

 でも、あんたと一緒にいても一切ボロは出なかった

 …加えて、以前出会った印象とはだいぶちげえからさ

 何か裏があるんじゃねえかとは思ってたけど…ビンゴとはな」


「…やる気…失くした…?」


「いいや?俺様菓子があれば仕事するぜ

 明日も同じ量の菓子を持ってこい、

 そしたら今日と同じ分は仕事してやるよ」


菓子って…こんなの大した報酬にならないだろうし…

本当にこんな物でいいのかしら?


「いいって言ってんだろ

 絶対手作りして来いよ、嘘は解るからな」


「私のお菓子、気に入ってくれたんだ」


「うるせえ、無駄口叩くな」


ふふ、素直じゃないけどやっぱりこいつも結構優しいとこあるのよね。


「…でも…データだけ消しても今は印刷とかも出来るし

 完全に消すのって難しそうよね」


「ま、そこは確実には行かないが…

 うちには頼れるオニイサマ達がいるの忘れたのか?

 今頃へたれたおにいちゃまが何とかしてくれてる頃だと思うぜ」


彼は言いながらウインクする。


「へたれた…おにいちゃま?」

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