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傷跡

「うっお!?おっかね…」


あかりの呟きを聞きながら、私とブルーは下に降りる。

田村は驚いた表情で固まり、指一本動かせない様子だった。


「ひ…ひいいーーー!」


冴えない雰囲気の男性が、声を上げて逃げ出そうとするもあかりに襟を掴まれる。


「どーこ行く気だあ?偽物さんよお

 まだ話したりねえことあんじゃねえのか?

 警察で聞いてやっから来いよ」


「そんな…!嫌だ!『あの人』にバレたら何をされるか…!」


あの人…?


「…しっかし…喜助を警察に突き出そうにも…

 どうやってここから出すか、が…問題だよなあ」


ブルーが苦笑いで言う。

あ…まずい…そこまで考えて無かった。



田村はその後何とか氷の柱から取り出され、救急車で運ばれていった。

ブルーもそれに付き添いついていく事になり、

わたしはあかりと二人で取り残された。


「一件落着かあ、今日は本当にびっくりしたぜー…

 大吾さんが二人に分身してんだもん」


あかりが伸びをしながら言う。


「でも良かったよな!田村が見つかって!

 これで俺達正真正銘平和な日常に戻れるって訳だ」


彼女の笑みを見て、私は俯く。


「…どったの?ものすごーく悲しそうな顔して」


「あの…あの…ね…あかり…ナギの記憶…

 間に合わ…なくて

 消されちゃったみたいなの…」


私の言葉にあかりは驚愕する。


「え…待って…あ…

 そんなのあり…?」


「…それにね…私、朝にあった役員襲撃事件の…

 犯人だって勘違いされてるみたいで…

 レンジャー5にさっき襲われかけたのよ」


「だからさっき俺の後ろに隠れてたの!?

 レンジャー5って超大手のヒーロじゃん…

 これからどうするの?」


「わ、わからない…一応来る途中に

 上司には連絡を入れたんだけど…」


私が言いかけると、切羽詰まったような様子で

「リリア!」

と声が響く。


声の方を振り返ると、そこには息を切らしたウリュウがいた。


「短すぎるし誤字も多い報告だったから裏取りに手こずったぞ…!」


「ごめん、い、急いでて…」


「…とにかく事情は把握した、今外を歩き回るのは危険だ

 僕と今すぐ基地へ帰ろう

 あ…君は…ピンク?

 彼女を助けてくれたの?」


「いやいや…助けられたのは俺の方っすよ

 …それよりその…

 彼女とか…ナギ君とか…大丈夫なんですか?」


あかりが心配そうに尋ねる。


「わからない…事情が事情だ

 …最悪、ここで会うのが最後になるかもしれないとは言っておく

 君は一番最初に味方になってくれたヒーローだと

 リリアから聞いていた

 ここまでの協力…本当に感謝する」


「そんな…!ここまでとか言わず…!頼って下さい、これからも!

 俺はリリアちゃまの味方ですよ、絶対に!」


「あかり…」


「…ありがとう…失礼するよ」


ウリュウは私の手を引くと、そのまま私を車に乗せ基地に戻った。


ーーーーー


ウリュウの家に通されると、

私はお茶に写り込んだ自分の曇った顔を眺めていた。


「大丈夫?…って言っても君、大丈夫としか言わないんだっけ」


「私…解ってますって風な態度取られるの嫌いよ」


「それ僕のセリフ…まあいいや

 事態は思ったより深刻だ

 ヒーロー本部で起こったニュース、調べたよ

 よく見れば偽物だって解るが…

 君そっくりの人物が監視カメラに映っていたみたいだね」


私は彼の言葉に肩を落とす。

…本当に心当たりのない事だ、一体何が起こっているのだろう?


「シノが何とかハッキングで

 あの映像を消せないか試しているみたいだけど

 いくらあいつでも拡散された映像を全て消して回るのは容易じゃない

 君は今、簡単に外をうろつけなくなった」


「これじゃ…ナギを助けに行けない…」


私はカップを強く握る。

すると湯気を立てていた紅茶は私から漏れ出ていた冷気で

一気に冷めてしまった。


「彼は今、ヒーロー本部所属という事になっているから…

 無理に連れ出そうとすればまたヒーロー達に睨まれるかも知れない

 厄介だな…」


彼は少し考え込む。

…せっかく…地球人と異星人が仲良くなれる兆しが見えたのに

ヒーローとやり合ったりしたら、

本格的に敵対してしまう。


…どうしよう…私が…

私が迂闊だったから…!


「…うん、ブラックホール団で力を合わせて

 ナギを救出しよう!

 ヒーローと戦う事になったら

 それはそれで仕方ないという事で」


ウリュウはあくまでも明るく言い放つ。

私は彼のその無理して作った様な笑顔を見て、思わず涙を流した。


「…ウリュウ…ごめんなさい…!」


「わっ…泣くなよ!

 何で僕が謝られなきゃいけないわけ!?」


「貴方の夢…!私が駄目にしちゃった…!

 私がナギから離れなきゃ、

 私の偽物が監視カメラに映らなきゃ…

 ヒーローと対立する事にならなかったのに!」


彼は唸りながらため息を吐くと、私の頭を撫でる。


「…そうは言っても、所詮理想は理想だ

 君たちの存在には代えられないし

 全て不可抗力だろ?

 自分を責めすぎても仕方ないぜ」


「ウリュウ…」


「…リリア、ボスに会いに行こう

 人員を集めてナギを奪還しに行くんだ」


彼は真剣な顔で、そう言い放った。

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