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焦り

駅に着くと、フユキはリリアやナギと別れ電車に乗り込む。


(せっかく久しぶりにナギ君と会えたのに

 家に帰るの嫌だな…2人に着いて行けばよかった)


考えている最中に、突如スマートフォンが鳴り出す。


(うわ…ゆかり君から?

 どうしよう、ここ電車の中だし)


迷っていると、電車の揺れが止まり扉が開く。


「蒼山2丁目~」


(丁度駅に着いた…!出よう)


フユキが慌てて出ると、受話器の先から

ゆかりの荒い息遣いが聞こえ、普通じゃない事を察する。


『フユキ…気をつけろ…!

 俺たち…狙われてっ…!』


「ゆかり君!?何それ!?

 今どこにいるの!?」


『四々木公園よ、早く来ないとこいつの命は無いから』


ゆかりでは無い何者かが言うと、

通話は切れる。


(今の声…リリア様?

 よく似てたけど、それにしては

 あどけなかった様な…)


ーーーーー


「へー!いい場所じゃない!」


翌日、私とナギはブルーに誘われナギと事務所になる予定の場所へと足を運ぶ。


「広くて綺麗でしょー?

 …まだ何もないのが玉に瑕だけど」


「ブルーさん、あの…良かったんですか?

 俺までお邪魔して…」


ナギが恥ずかしそうに言う。


「全然いいよ!君は焔君の命の恩人だし

 …あ、せっかくだし卒業したら

 ここに来るかい?」


「ぶっ…ブルーさんの事務所に!?!?

 いやいや恐れ多いですよ…!」


言いながらも、ナギの顔はにやけている。


「だめかい?君がいればフユキ君も焔君も

 喜ぶのになー」


「…そういえば、2人は今日いないの?」


「あー、そうなんだよ

 焔君ともフユキ君とも連絡が取れなくて…

 2人とも学生だし忙しいのかなー」


ブルーが肩を落としながら言う。

そういえば…昨日焔に送った

凛太郎、大丈夫だった?ってメッセージ、

既読すら付かないのよね。


「ブルーさーん!遊びに来たよ!」


私たちが世間話をしていると、若葉ちゃんが玄関から入ってくる。


「おー!若葉ちゃん!

 …あれ?お母さんは?

 一緒に招待したのに」


「あ…それが…一緒に歩いてたら

 お母さんが」


『何か…視線を感じるわ!若葉ちゃん

 先に行っててちょうだい!』


「って、どっか行っちゃって…」


若葉ちゃんがもじもじしながら言う。

不審者でも出たのかしら?


「それは怖いな…」


「ちっ…逃したわ」


話していると、丁度みつばさんが不機嫌そうに事務所に入ってくる。


「みつばさん!聞いたよ、誰かに見られてたんだって?」


ブルーが尋ねるとみつばさんは厳しい顔をしながら

「そうなの、明らかに後を着けられていたのだけれど…」

と言う。


「若葉ちゃんもみつばさんも

 女の子なんだから気を付けてね

 怖かったらいつでも呼んでよ」


「も、もおー!

 私にそう言う事言ってくれるのなんて

 ブルーちゃんだけよー!?」


みつばさんは照れながら言う。

ブルー…あの人案外天然のたらしね…


「…それに…あいつ、まだ捕まって無いんだろ?」


ブルーが真剣な表情で言い放つ。


「それって…田村の事?」


私が尋ねると2人は頷いてみせる。

…そう、双星襲撃後

私達が田村を縛っていた場所に戻ると

彼は忽然と姿を消していた。


かなりボコボコにされたらしいし、

これに懲りて

妙な気を起こさなきゃいいんだけど。


「全く動向が追えてないらしいわ」


「ごめん…私が油断したから」


「若葉さんのせいじゃないわ!

 気にしちゃだめ!」


私が励ましの言葉を投げかけると、


突如私の携帯にメッセージが入る。

凛太郎からだ…


【リリア、今から会えない】…?

あれ、凛太郎って倒れたんじゃないっけ?

妙ね…顔出すだけ出してみるか。


【今からいくわ】っと。


「あ…ねえナギ」


私はナギも誘おうとするが、ブルーを愛おしそうに眺める彼を見てやめる。

…ギリギリまでここにいさせてあげた方が良さそう。


「皆、私ちょっと友達に会いに行くからこれでお暇するわ!またね!」


「えっ…ああ!またねリリアちゃん!」


「リリア、俺も行くよ」


ナギが言うと私は彼に近づき

「私の事は気にしなくていいから!

 ブルーとお話楽しんで」

と言ってウインクする。


「わかった…ありがと」


私はナギに笑いかけるとそのまま事務所を出た。



リリアが出て行った後すぐに、ナギのスマホが鳴る。


(…フユキから…?)


「すみません、ちょっと電話に出てきます!」


ナギはその場にいる人間に断りを入れると、そのまま事務所の外で電話に出る。


「はい、もしもし…ナギだけど」


『あ!ナギ君!今どこですか!?

 今たまたま商店街のくじ引きで

 映画のペアチケット当てたんです!

 ヒーローの映画、ナギ君好きでしょ?

 ねー、見に行きましょうよ!』


「今からー…?俺、取り込み中なんだけど」


『いいじゃないですかー!

 昨日もあんまり話せなかったし、

 久しぶりに遊びましょうよ!』


(本当は嫌だけど…

 こいつ、俺がいない間

 リリアの事守ってくれてたみたいだし…

 付き合ってやる、か)


「…はあ、仕方ないな

 何処の商店街にいるの?」


『吉城寺です!絶対来て下さいね!』


フユキはそう言って電話を切る。


(吉城寺の商店街とかめっちゃ近いじゃん、

 ラッキー)


ナギはブルー達に一言挨拶すると、

そのまま商店街に向かった。


ーーーー


私は事務所近くの公園に呼び出されると、

ブランコの上で携帯を眺めている少年を発見する。

あ…制服だ、学校帰りかな?

へー、学ランなんだ…焔にも似合いそう!


って!そうじゃないでしょ私…!


「凛太郎!」


私が笑顔で手を振ると、彼は不安そうに私を見る。

あれ…何か、ただ会いたかったって雰囲気でもなさそう…。


「リリア、兄ちゃんから何か連絡来てない?

 昨日の夜から帰って来て無いんだよ!」


「は!?」


思いもよらない言葉に私は絶句する。

昨日の夜っ…て…!

明らかに電話が来て出て行った後よね!?


「母ちゃんに警察に言おうって相談したら

 『知り合いの家にいるから大丈夫』って

 …嘘はついて無かったけど、

 連絡も付かないなんて変だよ!」


確かに妙ね…


「私たちは昨日、

 凛太郎が倒れたって連絡を受けて

 焔がブルーの家を出て行ったとかしか見てないわ」


私が言うと、彼は目を丸くする。


「はい!?俺は倒れてないけど!」


何かが変だぞ、と言わんばかりに私達は顔を見合わせる。


「…これ、母ちゃんが何かしたパターン?」


「可能性はあるわ…」


それに、若葉ちゃん達をつけ回していたらしい存在や同じく連絡の付かないフユキの存在も気になる。

もしかして…誰かに狙われている?


私は嫌な予感がしてブルーにメッセージを送る。


【ブルー、何故かは解らないけど

 ヒーロー協会関係の人が

 狙われてるかもしれないわ、

 焔が家に帰ってないみたいなの】


私がメッセージを送信すると、

程なくしてブルーから返信が来る。


【それ…本当だとしたら

 今商店街に向かったナギ君と

 これから塾から帰るあかりちゃんって

 かなり危険なんじゃ…】


ナギが商店街に!?


【待って!ナギが商店街に向かったって

 どういう事!?】


【えっと…フユキ君に映画に誘われて

 これから会いに行くって言ってたけど】


フユキが?

私は心の焦燥を抑える様に息を深く吸うと、

フユキにメッセージを送る。


【フユキ、今どこにいる?

 会いたいの!】


…しかし、一向に既読すら付かない。


ー嫌だ…嫌だ!嫌だ!!

 やっと平和になったのに…!


【ブルー!私はナギを探しに行く!

 貴方はあかりを迎えに行って!】


私はそれだけ送ると凛太郎に向き直り

肩を掴む。


「…いい!?凛太郎…!

 あの母親を信用する事ないわ、

 警察に連絡するべき!

 私、友達を探しに行くから…

 貴方は警察へ通報を!」


彼は目を泳がせながらも首を縦に振る。

そして私達は2人同時に駆け出した。


お願い…!どうか無事であって!


ーーーー


一方その頃、あかりは塾を終え帰路についていた。


ったく、参っちまうよなー

俺って元医者だぜ?

中学生レベルの勉強なんて朝飯前なのに

何で塾など行かにゃならん。


だりー…前世で塾なんて死ぬ程行ったし

今世では勘弁願いたいぜ。


俺がため息を吐いていると、

急に路地から手が伸びて来て俺の腕を掴む。


「うお!?」


俺はそのまま、狭い路地に体を引き込まれてしまった。

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