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当たり前の幸せ

「―そうなの、最近反抗的で…

 …っ私…!どうしたらいいのか…!」


暗いリビングで、焔の母が泣きだす。

彼女の向かいに座っているのは…金髪の若い男だった。


「よう解ります…お辛いでっしゃろ?

 大丈夫、俺が何とかしますさかい」


「田村さん…どうか焔を…!

 焔を元に戻してあげて…!」


「勿論お役に立ちまっせ、

 …なあに、彼女の手を借りれば

 すぐに解決しますよ、ねぇ

 リリアちゃん?」


「…はい」


ーーーーーーー


「日本ヒーロー協会って名前で、どうよ?」


私達は、ブルーの家に集まっていた。

というのもこれから新たに作る組織の色々を決める為話し合う必要があったからだ。


「いいじゃない!シンプルでかっこいいわ!」


「あんまり気を衒いすぎても

 ブラックホール団みたいな

 事故が起きますしね!」


フユキが笑顔で言う。


「フユキ!それどう言う意味だよ!」


ブラックは青筋を浮かべながらフユキの頭をぐりぐりと押す。

この光景も久々ねー…最早わびさびを感じるわ。


「あかりちゃんと俺は今月いっぱいまで、

 焔君は来月の15日でヒーロー本部を辞めるから

 それまでに引越しとか諸々やっとかないとね」


「場所はもう確保してあるの?」


「勿論!バッチリいいとこ借りといたよ」


ブルーはウインクしながら言う。

この手際の良さ、やっぱり彼を引き入れて正解だったわね!


「…あの…事務所の事も勿論気になるよ?

 ただそれより…」


ナギは言いかけて後ろを見やる。

するとそこには真っ白に燃え尽きた焔が宙を仰いでいた。


「レッド先生…あれ、どうしたの…?

 今日最初に会った時は抱き付きながらお礼言われたから

 てっきり元気だと思ったのにリリアの顔見てから

 ずっとこんな感じ…」


「ウリュウさんがリリア様の婚約者になったって聞いてから

 リリア様の顔見るとあんな調子なんです!」


「焔君リリアちゃんにガチ恋してたもんなー… 

 しかも相手があのイケメンと来たらああもなるって」


あかりが頬杖を付きながら呆れたように言う。


(ピンクさんは想像してたより所作が男っぽいな…)


「いやでもあの…本当に形だけの婚約なのよ?

 私もウリュウも結婚する気とか無いから!

 それに知ってるでしょ?ウリュウってすっごく性格悪いの!

 私がそんなのと結婚すると思う?」


「だってよー?焔君」


「う…だ」


「はい?何?」


「いやだいやだいやだっー!そういう『意地悪なアイツ』系の婚約者って

 だんだん一緒にいる内に悪くないかも…ってなって

 最終的に好き同士になって結婚しちゃうんだ!

 母さんが見てたドラマでもそうだったもん!」


焔が駄々をこねながら言う。

あの母親意外とそう言うの見てるのね…


「ドラマはドラマ、現実は現実でしょ!

 子供みたいに泣かないでよ」


…最近、今までの反動かのように焔の態度は年相応…或いはそれ以下になり

少し感情を表に出すようになって来た。

…出し過ぎな気もするけど…。


「初恋の相手が金持ちの超イケメンと婚約かあ…

 何か思ったよりも世知辛い初恋経験しちゃってんな焔君…

 まあそのほろ苦さも…嫌いじゃないぜ」


「あはは!ピンクさん何様なんですか?」

フユキが満面の笑みで口にする。


「…フユキもここにいるって事はヒーロー協会に入るのよね?」


「はい!卒業後はここで頑張ろうと思ってます!

 ゆかり君とも連絡とってるんですが…

 なんだか昨日から連絡つかなくって」


「あら…疲れちゃったのかもね」


私達がそんな他愛無い話をしていると、焔の携帯が鳴る。


「ごめん、出るね」


彼は部屋の外まで出て電話に出ると、

「嘘!?今すぐ行く!」

と言って電話を切る。


「焔君、何かあった?」

ブルーが尋ねると、


「うん…母さんから電話があって

 凛太朗が倒れたから今すぐ来てって

 ごめん、今日は抜けるね!」

焔はそう言ってブルーの家を後にした。


「ええ!?大変じゃない…!気を付けてね!」


「…事務所の名前も決まったし、俺達も解散しようか大吾さん」

ピンクが言う。


「そうだね、それじゃ今日は解散!

 皆気を付けて帰って」


「俺はまだ大吾さんと話したい事あるから残っていい?」


「いいけど、先に親御さんに連絡してよ」


「はあ!?おいガキじゃあるめえし…!」


「14歳はガキです!」


「だーかーら俺の中身は33歳だっての!」


…何か、あかりとブルーはあれからより一層いいコンビになったわね。

あの二人がいる組織なら焔やフユキもきっとうまくやって行けるわ。


私は二人が言い合う様を微笑ましく眺めながらブルーの家を出た。


「…フユキ、リリアならまだしも何で俺の手握ってんだよ」


帰り際、ナギが訝しげに言い放つ。


「だってー!久しぶりに会えて嬉しかったんですもん!

 ナギ君!俺ナギ君が寝てる間リリア様のこと沢山守ったんですよ!

 偉い?偉いでしょー!」


「なんで俺がお前に偉いねよしよしなんて言わないといけないんだ!」


「ふふ…まあまあ…フユキは本当によく頑張ってくれたんだからいいじゃない」


…何か、幸せだなあ、こういうの。

特に事件とかは起こらず、推しの日常を眺めてられるって

こんなにありがたいことだったのね。


私はふと、何者かの視線を感じて振り返る。


「…?」


すると、子どもの後姿が見えた。


今の私よりちょっと若い…背丈的に10歳くらいかしら?

それに珍しい服着てたわね、まるで…そう

初めてブラックホール団に来た日のリリア…みたいな…


「リリア?どうかした?」

私はふいにナギに呼ばれ向き直る。


「あ…ああ!何でもないの!子供がこっちを見ていた様な気がして…」


そう、ただの子供じゃない…気にしすぎね。


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