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大切な人

「リリア…?ウリュウ様…?あと…誰…?」


ナギが呟くと、私は思い切り彼に抱き着く。


「ナギ―!」


「うわっ!?」


彼は赤面しながらも、私の体を軽く抱き返す。


「あの…泣いてるの?リリア…」


「よかった…!本当に…!」


「えっと…ナギ…さん?あなたが疲労で倒れて…

 二人に治療をお願いされたんですよ

 目が覚めて良かったです」


カグラが落ち着いた様子で言い放つ。


「え…倒れた!?双星襲撃は!?」


「終わったよ、うちの完全勝利」


淡々と言うウリュウにナギは目を丸くする。


「ええ!?いつの間に…!

 …待って下さい…!じゃあ例の決闘も…!?」


「ああ…晴れてリリアは僕の婚約者になったよ」


「ヒュッ」


ナギは青い顔をしながら喉から声にならない音を発する。


「あー!ちょっと変な事言わないで!あんなの無効よ!私が嫌だもの」


「よ…良かった…そうだよね、

 リリアはウリュウ様の事特に好きとかじゃないもん…」


ナギは

安心しきった様子で息を吐く。


「えー?でも…本当にいいの?

 僕はリリアのお父様から婚約の許しを得るくらいの家柄だし…

 たぶん彼女、婚約でもしてないと悪い虫がうじゃうじゃ寄って来るよ?

 知らない間に何処かの馬の骨に奪われたりして…」


『私この人と結婚するの!』


『チィースナギ君、うぃっすうぃっす』


「…ウリュウ様、暫くリリアの事よろしくお願いします」


「ナギ…今変な事考えなかった?」


「…まあ、何にしても治って良かったね

 カグラ君もありがとう」


「いえ!リリカに妹を助けて貰ったし…このくらいは当然です!」


「リリカ?」


「ああ…潜入の時に出会ったから偽名で覚えちゃったのよ」


(また各所で人を誑し込んで…!俺が寝てる間にライバルが増えてそうじゃないか!)

ナギは何か言いたげに私を見つめる。

…何?私変な事言ったかな?


「折角目が覚めたんだし…二人で何処か行ったら?

 リリアも僕と同じ疲労度くらいなら動き回れはするだろ」


ウリュウがそう言って私達に笑いかける。

私とナギは顔を見合わせると、にっこりと微笑んだ。


ーーーー


私達は電車に乗り、横波間まで向かう。


「あの遊園地から見える観覧車の眺めが最高らしいの!」


「そうなんだ…楽しみだね」


私は、遊園地で彼に色んなことを話した。

双星の防衛に成功した事から始まり、

フユキや焔がナギに会いたがっている事、

私も…ずっとナギと話したかったって事


本当に色々。


彼は昨日まで目を覚まさなかったとは思えないくらいずっと笑顔で…

私はそれが嬉しくて仕方なかった。


「…やっぱりリリアは凄いね」


「何が?」


「んー…めちゃくちゃに動いてるように見えて

 最後は全部何とかしちゃうとことか…

 人をどんどん誑し込んでいくとことか?」


後半になるにつれて彼の声は低くなる。

な…何よ、褒めてるの?怒ってるの?


「俺からしたらリリアと久しぶりって気は全然しなかったから

 なんか変な感じ…思えば俺、ずっとリリアの夢見てたかも」


「ええ!?」


そんな毎日夢に見ちゃうくらい私の事好きなの!?

もうナギったら…!


「いや…リリア…なのかな、あれ…

 ちょっと成長したリリアみたいな子が…ずっと俺の事膝枕してくれてて

 俺が寝そうになると『寝ちゃ駄目、寝たらもう目覚めなくなる』

 って起こすんだ…そんな夢…」


それ…って…

本物のリリア…?


…そっか、リリア、あなた…ナギの事ずっと後悔してたのね。

ナギが深く眠ってしまわない様に…ずっと見ててくれたんだ。

…ありがとう。


「…綺麗ね…海」


私からしたらちょっと複雑な場所だけど…

不思議と怖いとかいう気持ちは起きないのよね。


「あの…さ、まだ疲れてない?」


「疲れてはいるけど…もうちょっと動けそうよ」


「じゃあ、海行かない!?

 夕焼けが綺麗な時間帯だし…」


「勿論!」



私達は横波間の浜辺に着くと、

ナギがおどおどと波を見ている。


「…もしかして…水、嫌い?」


「あ…海ってロマンチックだから見る分にはいいんだけど…

 俺濡れるのとか無理なんだ

 雰囲気作りに良いかと思って来てみたけど失敗だったかも…」


「あはは!猫みたいね」


私は、少し悪戯心が沸き彼に奇襲をしかける。


「食らいなさい!」


海の水で水鉄砲を食らわせると、彼は間抜けな声を上げ驚く。


「リリア!何してるんだよ!」


「あはは!だって…あんまりにも嫌そうだったから面白くなっちゃって」


私はそう言って靴を脱ぐと海の方へ逃げる。


「リリア!足が凍っても知らないよ!」


「こんなんじゃ凍ったりしないわよ!

 悔しかったら入って来たら?」


私は彼を挑発するかのようにまた少量の水をかける。


「…あー!もう!変なとこ子供っぽいんだから!」


彼は真っ赤な顔で海に入って来ると、私にやり返す。


「きゃっ!やったわね!」


私達が水をかけ合って遊んでいると、はしゃぎ過ぎた私は

砂に足を取られ体制を崩してしまう。


「うわ!?」


「リリア!」


彼は、私を支えようとして一緒に倒れ込んでしまった。


「…ごめん…ナギと遊びに行けるのが嬉しくて…はしゃぎすぎた…」


私は顔を背けながら呟く。

少し横目で覗いた彼の姿は

海水で髪を濡らしていて少しだけ大人っぽく見えた。


「本当…もっと大人っぽいデートを想像してた

 リリアって案外ガキなんだね」


彼はそう言って私を睨む。

うう…悪かったわね…


「ねえリリア…何でもするって前に言ったよね」


「…言った」


「今…キスしていい?」


私は赤面して固まってしまう。


「キ…!?」


「嫌…だった…?」


嫌とかじゃないけど…そんな事頼まれるって思ってなかった!

でも彼は命を懸けて頑張ったんだし…

キ、キスくらいが何だっていうのよ!


「あ…そ…そんなんで…いいなら…!すれば!?」


私が目を閉じると、彼の唇が私の唇に触れたのを感じた。


自分の心臓の音と波の音だけか聞こえて来る。

ナギも…同じなのだろうか?


目を開けて見た彼の顔は夕日に照らされていて、

それでも少し赤くなっていることが解った。


「あ…立てる!?」


彼は私の上からどくと、手を差し伸べる。


「濡れちゃったね…着替えてから帰ろうか」


彼はそう言って私の手を引くと海の家まで歩いて行く。


「リリアのTシャツ…『かまぼこ星人』?

 …変わった柄だね…」


「あんただって『海の王者』って何よ!海嫌いなくせに…!」


「…ぷっ」


「あはははは!」


私達は駅でTシャツに着替えるとそのまま電車で渋矢に帰る。

繋がれた手は暖かく、彼が生きているんだって実感が沸いた。


ナギ、私ね…恋とか良く解らなくって疎いのだけど…

貴方の事、間違いなく大切な人だって思ってるのよ。

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