バリアを破るのは
「凛太朗…!もしかしてなんだけど、彼のシールドって
出せる面積に限界があるんじゃない?」
「…どういう事?」
「だっておかしいじゃない、わざわざあんな小さいシールド
小出しにして守るより、自分をシールドで覆いながら
攻撃すれば負けないのにあいつはそれをしない…
もしかして出しておける面積に限界があって、
今それをカツカツにして戦ってるんじゃ…?」
「…!なら、攻撃してる時にこっちも攻撃すれば…!」
私は彼の言った事を試すように、
シールドを撃って来たタイミングを見計らい氷塊を撃ち込む。
すると、少年の腕に氷塊がヒットしたのが解った。
「ビンゴみたいよ凛太朗…!」
「流石リリア!よく気付いたね!」
「ちっ…限界に気付いたからって何だって言うんだ!
こっちは永遠にお前らからの攻撃を守ってればそれで勝てるんだよ!」
確かに、持久戦に持ち込まれると面倒ね…!
一気に広範囲から彼を攻められればいいんだけど…!
「リリア!ちょっと時間稼いでて!」
凛太朗はそれだけ言うと何処かに消えてしまう。
「えっ…!?ちょっと!うわ!」
油断していた私の足元にバリアが撃ち込まれる。
どうしよう…!時間稼ぐったって…!
私の武器は1方向の火力特化だし、足元を固めるにしても
相手がちょこまか動くせいで狙いが定まらない…!
「リリア様…!危険です!ここは引いて下さい…!」
ミカゲさんが消え入りそうな声で言う。
「だ、だめよ!そんな事できないわ!
あなたが狙われるだけじゃない!」
少年はこちらににじり寄り、私を狙っている。
まずい、近付かれたら相手が狙いやすくなるだけ…!
どうしたら…!
「ビイイイイイイイイイイ!」
刹那、サイレンの様な音が響く。
そして後ろにあった建物の二階から
水滴が降って来て私の頬を濡らす。
「わっ…!何なのこれ!」
スプリンクラー…?
すると水滴は段々と空中に集まり出し、複数の弾になる。
「もしかして…!凛太朗の能力!?」
後ろを振り返ると、凛太朗は水の弾を少年を囲むように配置して…
それを彼めがけて撃ち込んだ。
「ぐあっ…!」
少年の防御は間に合わず、凄まじい水圧の攻撃に苦しんでいる。
「多方向の攻撃なら俺の得意分野!水があればこっちのもんよ!」
彼は多方向から何度も水の弾を撃ち込む。
「ぷはっ…!痛い痛い…!解った!負けだ…!
負けでいいからもう辞めてくれ!」
攻撃が止むと、水玉模様の痣が出来てしまった少年は、へろへろとその場にへたりこんでしまった。
「くそぉ…!」
「ナイスよ凛太朗ー!」
私は凛太朗に駆け寄るりハイタッチする。
「残るは…後ろの人だね」
凛太朗が残された少女を睨むと彼女はビクリと体を震わせる。
私は彼女の顔をライフルで狙うと、少女の顔に氷のマスクが出来上がり彼女は沈黙してしまった。
「はっ…!身体が軽い!動けます!」
ミカゲさんはそう言って元気に起き上がる。
「良かった!後は…あっちの戦いだけど…」
私はウリュウの方を見やる。
恐らく最速のクロとウリュウの時間を遅くする能力は相殺し合っており、
こちらからは早すぎて目で追う事も出来ないが
本人たちは等速で剣を打ち合っている様だ。
「こればっかりはどう手を貸したらいいかも解らないし…
困ったわね」
私が言うと、本人たちは普通の時間軸に帰って来て息を吐く。
「やるじゃねえか…!ウリュウだっけ?
こんなに長くやり合ったの久しぶりだぜ!」
「君も結構しぶといね…その能力、どうせ長くはもたないんだろ?
早く負けを認めたら?」
そう語るウリュウも、大分消耗しているように見える。
…いや、むしろ相手の方は体力的にまだ余裕がありそうだ。
「ねえウリュウ…持久戦になって困るのってあんたも同じじゃないの?」
私が言うと彼は少し項垂れ
「はあ…そうなんだよね…
しょうがない、あれ使うか」
と言って、私の方をちらりと見る。
「…何」
「僕を婚約者候補にした事…いくら後悔しても取り消しは無しだぜ」
ウリュウは訝しげに言うと、ゆっくり息を吸い始める。
すると髪は白く変わり、彼の顔には鱗の様な模様が浮かび、歯と耳は尖り…
瞳は爬虫類の様に鋭い瞳孔に変わって行った。
彼の元々のルックスの良さも相まって、
その姿はとても神秘的だった。
「…あんまり…見ないでくれ」
彼は俯きながら言うと私の体をクロのいる方向に向ける。
「一回だけ…3分の間僕の見てる世界に『人を連れていける』
君なら誰を連れて行く?」
「そりゃ間違いなくミカゲさん…
って、言いたいとこだけど…
私にやらせて欲しい」
「…どうして?」
「私…貴方の部下だから役に立ちたいの
…そういうのって…駄目?」
彼は、少しだけ笑い、
「期待してる」
とだけ言って私の手を握った。