カグラの恩返し
―焔がピサロとやり合っている頃、
リリアは西口に向かっていた。
急がなきゃ…!ミカゲさん達が危ない!
「リリカ!」
走っていると、どこからともなく私を呼ぶ声がして振り返る。
するとそこにはリカちゃんを負ぶったカグラが立っていた。
「良かった…!探してたんだよリリカ!」
「カグラ…!リカちゃんも!お兄ちゃんと会えたのね!」
「うん!お姉さんのおかげ!」
「あの…ありがとう、リリカ…何とお礼を言ったらいいのか」
カグラは申し訳なさそうに言う。
「いいのよそんなの…!無事で何よりだわ」
「あの…良かったら…なんだけど
これ、お礼」
カグラは言いながら目を閉じる。
すると私の体に冷気が戻って来るのを感じた。
「…!もしかして…!回復してくれたの!?」
「リリカの力が弱くなっちゃってるって言ってたから…」
「私敵なのにこんな事して平気?」
「いいんだ…俺にとって大事なのは…妹だけだから」
カグラの微笑を見て私はどこか安堵する。
良かった…また兄弟がこうやって一緒に居られて。
「ありがとう…!行ってくるわ!」
どこか身体が軽い…!これなら、戦闘の役にも立てる気がする!
…
現場付近に来ると、同じく西口に向かっている人影に気付く。
「ウリュウ!」
彼は私の声に気が付くとこちらに寄って来た。
「リリア…レッドは?」
「えっと…途中で幹部と遭遇して今戦ってるとこ…」
『ぎゃああああああああ!』
遠くから誰かの悲鳴が聞こえ、大きな炎の柱が見える。
「あ…多分今勝ったみたい…」
「そう…でも信じられないな、ミカゲ君が苦戦するなんて」
私からしたら来る途中もグリーンに締め上げられてたし
信じられなくもないけど…
ウリュウがここまで言うって事はミカゲさんってかなり強いのね。
西口に到着すると、座り込んでしまっているミカゲさんと
高速で動く「何者か」に翻弄されている凛太朗がいた。
「あー!やっと応援来てくれた!助けて!
ミカゲさんの能力が封じられてんだ!」
何者かと交戦しながら凛太朗が言う。
よく見ると敵は後2人いて、後ろで並んでおり
一人は何かを呟いているようだった。
「あれ…もしかして、能力を無効化しちゃう能力者とか?」
「だろうね…厄介なのに当たったな」
「げっ…水が切れた!二人とも注意して!
もう一人は高速で動けるんだ!」
凛太朗が言い切ると何者かが私に斬りかかり、ウリュウがそれを防ぐ。
「高速…ねえ
じゃあ時間を止められる僕の相手にもならないや」
そう言って彼は持っていた脇差で相手を弾き飛ばす。
弾き飛ばされた人物は、動きを止めこちらを見てにっかり笑う。
想像より若い…!相手は焔と変わらないくらいの少年だった。
褐色に長い黒髪をなびかせた少年は、ゆっくりこちらに寄って来ると
「へえ…結構やるのが出てきたじゃん!
よお!俺はネメシスの幹部で会長代理…!
所謂今回の襲撃の大将『クロ』!
お前らの大将はどれだ!?」
と、声を上げる。
「恐らくは僕だ…初めましてクロ君、
そんなに若いのに大将を任せられるとは感心だ」
ウリュウが前に出ながら言うと、二人は睨み合う。
「お前…時間操れるんだっけ?
でもさ…さっきの感覚、違和感があったんだよな
あんた時間をいつでも止められるって状況の割に
さっき女を切ろうとした時えらい焦ってるように見えたんだ…
もしかして『止められる』んじゃなくて…『周りの時間を遅くしてる』
んじゃないの?」
クロの言葉にウリュウは眉をピクリと動かす。
図星なんだ…!
「なら…!最速の俺様と勝負と行こうぜ!
どっちがより早く勝負を決められるか競争しようじゃねえの!」
「血の気の多いガキ…!」
二人は、早すぎて残像しか見えないほどの攻防を始める。
「うわうわうわ…!映画みたい!何だあれ!」
凛太朗が興奮気味に言う。
「言ってる場合!?今の内に後ろの二人を何とかするわよ!」
私は冷気を込め、何かを呟いている人間めがけて弾を撃ち込む。
…しかし、弾は見えない壁に阻まれ弾き返されてしまった。
「…シールド…!?」
「効きません…彼女は俺が守っていますから…」
何かを呟いている少女の隣にいた少年がそう言って前に出て来る。
「貴方の能力はバリアの展開って訳…」
「そういう事です、まずは俺を倒さないと彼女は倒せません」
彼は言いながら、こちらに何かを撃ち込んで来た。
私は咄嗟に氷でガードすると、弾が何かを確認する。
ガラス…じゃ…なさそう…
私が眺めていると、撃ち込まれた弾はサラサラと消えて行く。
…!もしかして…!
「バリアを撃ち込めるの!?」
私が尋ねると、少年は得意げに口角を上げる。
そ…そんなのってあり!?
「このバリアはゾウが踏んでも壊れない強度…
そんな強度のバリアが被弾すれば貴方も無事では済まないでしょう」
厄介なのが固まっちゃって…!
「ごめんリリア…俺周りに水が無いと役立たずなんだよ~」
凛太朗が私の後ろに下がりながら言う。
いや…寧ろよくこの面子相手に時間稼ぎ出来たわ
「大丈夫、下がってて!」
何発か氷塊を撃ち込むと、彼は小さなシールドでそれを防ぐ。
そしてまた少年はシールドをこちらに撃って来た。
私と凛太朗が避けると、シールドは砂のように溶けて消えて行く。
何か…変ね。
毎回一発ずつしか撃ってこないし…
それに被弾すると必ず消えてしまう…
!
…もしかして!
一部が書き上がったのですが
公開スケジュールをミスしており、
31日までに1部完が厳しくなってしまいました。
恐らく、9月頭頃に1部が終わると思われます。