園部光という男
ミカゲと凛太朗とみつばは西口付近で異星人討伐に当たっていた。
「マダムにお坊ちゃん、ここは私にお任せください…
私の能力は『重力の操作』この一帯の重力を変えればこの通り」
ミカゲが手をかざすと、異星人達は地に伏せていく。
「ふん、頭が高い…」
「すごーい!眼鏡のお兄さん強かったんだね!」
凛太朗が目を輝かせながら言う。
「ええまあ…これでも幹部補佐にしてリリア様の婚約者候補ですから」
「え!」
(リリアって婚約者候補とかいるの!?
兄ちゃん明らかにリリアの事好きそうだったけど大丈夫なのかな!?)
「ここは眼鏡君に任せておけば問題無いわね!
やっぱり眼鏡で真面目そうな男って強くていいわー」
みつばが呑気に言い放つと、通信機が鳴る。
「はい、もしもし?」
『こちら東口B班!応援に来てくれた人たちがやられてて…!』
「応援…って、東口に行ったのって若葉さん達じゃ…」
凛太朗が言うとみつばは鬼のような顔で通信を切り
「私が行くわ、後はよろしくね、眼鏡君」
と言って急いでその場を離れた。
(若葉ちゃん…!どうか無事でいて…!)
ーーーーーーー
―みつばがこちらに駆けつけている頃、ピンクは夢を見ていた。
…
「いやー!光が病院行けって言ってくれてマジで良かった!
後もうちょっとで俺危なかったらしいわ!」
…あ…また…俺、女の子になってる夢、見てた?
そうだ…寛也…こいつ、難病だってわかって…入院する事になったんだ。
「もー!笑いごとじゃない!本気で心配したんだから!」
えっちゃんが涙目で言う。
「寛也…マジで無理すんなよ」
「なー、そう言うのやめろって
気遣わず普段通り来いって!そうだ…高校、
俺お前と同じとこ行くって決めたから」
「は!?無理無理何言ってんだお前!成績下から数えた方が早い癖に!」
俺が言うと、寛也は頬を膨らませる。
「いけるって!お前が勉強教えてくれたら絶対いける!」
「はは…まあ、期待しとくわ」
…
しかし、その約束が果たされることは無かった。
俺は、あまりのショックで寛也の葬式で泣く事も出来ず呆然としていたのを覚えている。
えっちゃんは対照的に、ボロボロになるくらいに泣いていた。
そりゃそうだ、こんな事さえなければきっと…あの二人は…
俺が…
もっと早く異変に気付いていれば…こんな事にならなかったのに…
「…助けなきゃ」
もう、誰かの「大切な人」が死なない様に…
男女の未来を守って行けるように、
子供達の未来を潰さない様に…!
―俺は大人になり、無事小児科の医師になることが出来た。
そしてえっちゃんは看護婦になり、俺の手伝いをしてくれるようになった。
「今日、ちょっとお暇だったねー」
「忙しいよりいいだろ
それより今日だっけ?飲み行きたいって言ってた日」
「そうだよー?ちゃんと付き合ってね、先生!」
…
「で?話って何だよあらたまって」
「あの…さ、君にとって複雑なのは重々承知で…
私…光君とお付き合いしたいんだ」
俺は、持っていたジョッキを机に落とす。
「あー!ちょいちょい、何やってんのさ!」
「…ごめん」
「…やっぱ…難しい?」
えっちゃんは俺の顔色を窺うように上目遣いで尋ねる。
「なんだろうな…難しいんだけど
俺…そういう気分になれなくて
人の恋バナとか聞くのは…大好きなんだけど」
「そうだよね、よく首突っ込んでるもん」
「だから…今は無理…かな
えっちゃんが悪いって訳じゃないんだ!…俺の問題で」
「…うん、理解!じゃあ…そういう気分になったら教えてくれ!」
彼女はそう言って、机に置いてあったジョッキを飲み干した。
(変なの…自分だってえっちゃんの事好きなくせに
どうして俺も好きだ、幸せになろうって言えないの…?)
ーーー
あ…寝て…た?
違う…気絶してたんだ…
私は周りを見渡す。
私の目線の先にはボロボロになった若葉ちゃんと緑川さんがいた。
そう…だった。
私…緑川さんを庇おうとして…
『何で庇うん?そいつ異星人なんやで』
『ーっ…!それでも…若葉ちゃんがこんなに守ろうとしてるのに
ほっとけないよ!』
『…そ、じゃ、君にも寝ててもらおか』
それで…私もやられて…
田村さん、強いなあ…
戦闘向きの能力じゃないのにここまで戦えるって流石だよ…
私、最近能力頼りになってたかも、反省…
「さて、若葉ちゃん?もう凝りたやろ
そんな男とっとと放しや」
そう言われた若葉ちゃんは、緑川さんを大事そうに抱えながら
「だめ…!緑川君は私が守るの!」
と声を上げる。
ああ…嫌だなあ…何でこんなに胸が痛むんだろう?
私には…関係の無い事なのに。
「んなら、緑川君の事忘れてもらおか」
田村さんの手が、若葉ちゃんに伸びる。
そう…関係ない…関係…ないんだしさ…
私、こんなにボロボロなんだもん。
寝てても誰も文句言わないって……
田村さんの指先が若葉ちゃんの髪に触れると、私は咄嗟にその手を掴む。
「うっわ…まだ動けたんや…
あかりちゃん?」
あれ…体が勝手に…
どっちが悪いか解らないんだから見てればいいじゃない。
ねえ、光君
貴方ってえっちゃんが好きだったと思うのよ。
えっちゃんが寛也君のこと好きなのに気付いてたから
自分の気持ち、言えなかったのよね。
もっと寛也君の異変に早く気付いていれば、
あの子は生きてたかもしれない
そう思ってずっと後悔してたんだよね。
何かね…その気持ち…
何故かよくわかるんだぁ…
きっと
寛也君が生きてた上でえっちゃんに告白したかったよね。
だって…
だってさ…
だってあいつがいなかったらさ…俺、ずりぃじゃんよ…!
俺が医者になったらさあ
子供の未来を守れるようになったらさ、
俺、この気持ちにも整理が付くって信じてたんだよ…!
でも、やっぱり無理だったわ
お前がいないと俺の恋、
進めも終われもしなかったんだ。
なあ…寛也
俺、この子達の恋を守れるかなぁ?
今度こそ…
後悔しないで済みそうか?
「汚ねえ手で…俺の推しを触んじゃねえよ!
推しも…推しの好きな人も!この俺が守る
俺はコズミックピンク桃園あかり!
精神年齢は33歳プラス3歳ほど!
お前みてえなガキにゃ…負けねえよ!」