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ミリアになった日

暗い場所で、意識が遠くなっていくのを感じる…

冷たい、苦しい…ここは…海…?

おかしいな、さっきまで家にいた筈なのに。


あれ…何で私沈んでるの…?


こわい…何これ…


ーーーーーーー


「おあ!?」


私は叫び声と共に目を覚ます。

なーんだ!溺れてる夢かあ、怖かった。


しっかし…何だろうこの部屋?

何だかやけに煌びやかだけど…ホテルかな?

私さっきまでどうしてたんだっけ?覚えてない…

急に誰かに呼び出されて…それで


「ミリア様、そろそろお支度を」


私が何とか思い出そうとしていると、メイド服の女が私に怪訝な顔で言う。

ミリア!?私の名前は真理愛だし!そもそもこの女の人誰!?


「あの…ど、どちら様…」


「何を仰っているんですか?はあ…寝ぼけているのかしら

 こちら今日着る予定のお召し物です、早く身支度をなさってくださいな」


そう言ってメイドは私にドレスやコルセットを投げつけた。


なんか…舐められている事だけはひしひしと伝わる…!

大体こんな服着た事無いんだけど!?これとかどこに付けるのよ!


状況を把握する為キョロキョロと周りを見渡していると

動揺した私と、『私』の目が鏡越しに合う。


「にょわーーーーーー!」


これ…!この意地の悪そうな釣り目!

強固な巻き髪!

私の好きなアニメ「宇宙戦隊コズミック7」の敵役

「ミリア」じゃない!


私は特にヴィラン萌えとか無かったし、

推しの「ブラック」をいじめてたキャラだから複雑だけど

キャラデザは可愛いと思ってたのよね…流石、アニメの通り美少女だわ!

じゃなくって!何が起こってるの!?


まさか…まさかこれ…


…夢?


そうよ!きっと何かの夢!

最近ずっとコズミック7ばっかり追ってたからその夢を見ちゃったのね!

しかし、このミリア何だか幼い…?


「いつまで自分の姿を眺めているのかしら、いやらしい」


「ナルシストも度を超すと病気ね」


あと凄い嫌われてる…!


「あの、この服の着方が解らなくて…教えて欲しいのだけど…」


引きつった笑いでお願いするも、メイド達は冷ややかな目で見るのみだ。


「そんな常識までお忘れになったの?

 嫌だ、頭悪いとは思ってたけどそんなに忘れっぽいとは…

 今日は就任式をお休みして病院に行かれるべきだわ」


就任式…?

こんだけいて結局誰も教えてくれないし!


「ちょっと!いつまで支度に手間取っているの!?」


少し凝ったデザインのメイド服を着た女の人がそう声を上げながら部屋に入って来た。


「げっ…キアラさん…!

 ミリア様がふざけるものだから準備が進まなかったんですう」


「キアラ」と呼ばれた彼女は少し地位の高いメイドの様だ。

おずおずとしながらメイド達が告げ口する。


「そうなんですか?ミリア様」


「違う…!その、服の着方を忘れちゃっただけ

 聞いても誰も答えてくれなくて」


「…貸して」


キアラさんはため息を吐きながらも淡々と私に服を着付けてくれる。


「あの…ありがとうございます」


私がお礼を言うと彼女は驚いた顔をして


「言葉だけって解っているのよ

 自分でも弁えていると思うけれど…あなたのお姉様が『あんなこと』

 になって誰も貴方を支持する人間なんかいない

 今更尻尾を振ったって無駄」

と淡白に返した。


嫌われ過ぎでしょ!

ミリアってアニメでは性格大分歪んでたけど

全然愛されてる感じしないな…結構可哀想な奴なのかも


訳も分からぬままおしゃれをして屋敷を出ると、

連れてこられたのはアニメでも見た事のある

「ブラックホール団」の基地だった。


うわー!アニメでも見たけどこうやって実際入ってみると広いしかっこいい!

あれ?でもあんまり知っている顔がいないな。


「きょろきょろしないで、ボスが来たわ」


キアラさんの言葉で真っ直ぐの方向を向くと、

見た事も無い老人がホールの真ん中へ歩いて来るのが見えた。

アニメで見たボスと違う、誰だろうあの人?


凝視していると老人はゆっくり私を見て


「悪の令嬢ミリア・グレイシャ、前に出なさい」

と威厳たっぷりに言い放った。


「あ…はい!」


私は急いで彼の前まで来ると、体が勝手に彼の前に跪く。

きっとミリアの体が、「この人に逆らってはいけない」

と覚えているのだろう。


「この席には代々グレイシャ家が就任する決まりだ

 お姉さんとは違い君には誠実さがある事を期待しているよ」


彼はそう言うと私の手を取って左手の人差し指に指輪をはめた。

きっとこれが幹部の証か何かなのだろう。


しかしお姉さんと違ってってどういう事…?そっか!

ミリアの姉はブラックホール団を裏切ってヒーロー側に付いたコズミック7の仲間だった筈…!

ミリアは姉に捨てられた恨みと味方がいない事への孤独さからヒーローを憎むようになった…そんな設定だった筈。

きっとこの就任式はお姉さんが裏切った後の物なんだ。


ひゃー、そりゃこんな空気にもなるよ!

私がお礼したって拍手してるのは数人だもん。

私だったらこんなとこ飛び出して行っちゃうかも…


「ミリアの教育係にはウリュウを付ける、

 初任務の話は彼から聞きなさい。それでは解散」


彼の言葉で全員が散り散りになる。


「はー、やっと終わった」


「怠かったー」


何よ…!聞こえるように言わなくたっていいじゃない!

揃いも揃って悪人面しちゃって…!


「あんなの気にする事ないさ、行くよ」


私の前に来て、そう微笑んだのはアニメでも見た事のある幹部だった。

やっと知ってるキャラが出て来てくれた…!

アニメでは大幹部だった男、「ウリュウ」

…まだ顔と名前しか解ってなかったけど

見た感じ優しそうだし何ならかなりかっこいいし…!

教育係がこの人だったのはラッキーだったかも!


そう思いながら意気揚々と彼に付いて行ったものの、

彼の部屋に訪れて投げかけられた第一声は


「君、裏切者でしょ?」


という不穏な物だった。

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