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身分制度

ヘレナは車でインドの市街地を観光してまわった

サリーという長い布のドレスを見たり、有名な寺院を見学した


途中、街中で騒ぎがあった

護衛の者が、危険ですので車にお戻りください、と促す

大勢の人が集まって、尋常ではない雰囲気だ


「いったい何事ですか?」


ヘレナが尋ねると、少し戸惑い顔で世話係のハッサンが、葬儀です、と答えた


「葬儀?それにしてはものものしい雰囲気ね…」


「…ヒンドゥー教のサティです」


ハッサンが無表情で説明を続けた


「夫が亡くなると、妻は生きたまま夫と同じ炎で焼かれるのです」


生きたまま…、ヘレナは絶句した


「妻は拒否できないのですか?」


「殉死することは、貞淑な妻にとって名誉なことなのです」


なんという女性の人権を無視したルール…

ヘレナは車の後部座席で黙り込んだ


インド人の婚姻は、本人の意志とは無関係にまだ幼い頃に決められると聞いている

その上、夫が亡くなったら殉死させられるなんて

年の離れた若い妻だとしたら…


インド人女性として転生しようとしていたことを思い出して、ヘレナは青ざめた

この国のカーストという身分制度は、問題だらけだ…

宗教が違っても、人の命の尊さは同じ


車のミラー越しに映る自分の顔が強張っているのに気づいて、深呼吸をした



また別の日に出かけた時は、寺院の周りの道で、まだ幼い子どもが座っているのを見た

朝通った道で見て、帰り道でも同じように座っている



「車を停めてください」


停車した車の中で、ハッサンにあの子どもたちは?と聞く


「カーストの最下層の者たちで、売られています」


売られて…?


「あの子どもたちを連れて帰ることはできますか?」


「できますが、…どうされるおつもりですか?」


「屋敷で使用人として働かすことは?」


「奥様がお望みであれば…可能だとは思います」


「では、そう願います」


やれやれ、と困った顔のハッサンは車を降りると子どもたちのもとへと歩いて行った

話をして交渉をすませると、戻ってきた


「お金はいくらでも払います」


ヘレナが言うと、先程お買いになったサリーより安いですよ、とハッサンが言う


屋敷の使用人が後から別の車で連れて帰るということで、車は出発した




焼け石に水

この国でできることなど、無いに等しい

ガイア全体が、どうにもならない状態だ

ここまでとは…

まるで宇宙の縮図


常にどこかで戦争が勃発して、罪なき弱きものたちが被害を被る

力を欲するものたちが、世界を支配しようと争い、平和な暮らしを破壊する


今、この国は植民地となっている

この国の民は搾取され続けている

幸せも、人権も、日々の生活も…


いや、国の話ではない

この星全体が支配されつつある

このままでは、この星は…


宇宙連合の助けが必要だ

個人で何とかなる範囲を超えてしまっている

戻って、宇宙連合としてもう一度活動しよう

この星は、もう介入が必要なほどのレベルだ…



予定していた滞在期間が終了し、ヘレナと仕事を終えた夫は、英国へと戻ることになった


帰路の途中で、ヘレナは体調が悪化して

家に帰ると寝込んでしまった

そのまま体調は回復せず、インドから帰って数日後に亡くなった

夫は嘆き悲しんだが、最期に夢だったインドへと連れて行けたことが、せめてもの救いになった


インド国内の情勢は、さらに厳しい状況になり、世界中が戦争に巻き込まれ緊張状態になっていた


ヘレナの身体から抜け出たアルは、来た時と同じようにポータルから帰ろうとしたのだが、ロンドン塔のポータルから出た先は、行きに来た時とは違っていた



アルと同じように、寿命が尽きたスピリットたちがたくさん列をなしている


ここは?皆亡くなった人たち?

どういうこと?ポータルを通ったはず…


アルはすぐ前に並んでいるスピリットに話しかけた


あの、ここはどこのポータルでしょうか?


「ポータル?ここは霊界だよ、死ぬのは初めてかい?」


霊界…

四次元領域のこと…?


ガイアは三次元に存在する

ガイアで霊界と言われるのは、宇宙でいうアストラル界という四次元領域のことだ


なぜ、ロンドン塔のポータルからそんなところに??


「この先で手続きをして、生まれ変わるんだよ」


あ、そうなんですね…

教えていただいてありがとうございます


生まれ変わる?またガイアに転生するということ?


嫌な予感がする…

そういえば、ポータルが占拠されてると天使が言ってた

もしかして、ガイアから出られないのでは…?


周りのスピリットを観察すると、ほとんどが人間のスピリットだが、宇宙人も混じっている

波動が違うので、アルには区別がついた

自分と同じように、宇宙からガイアへと訪れた宇宙人だろう

目的は、観光なのかボランティアなのかはわからないが…


列に並んでいるので、他の宇宙人のスピリットの近くに行くこともできない

仕方がないので、このまま先へと進むまで待つしかない


アルは訳がわからないまま、列が進むのを待った



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