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警報発令

おかしい

今までこんなことは無かった


ブループリントの申請の許可が下りなかった

今回、アルは様々な問題が発生している大英帝国の植民地となっているインドへの転生を申請した


転生での申請も何度も経験して、随分と慣れてきた

ブループリントに不備は無かったはず

インド人の女性としての一生を送る計画だった

しかし、民間ボランティア団体からの返答は危険度が高すぎるため、許可できないとのこと


戦時中の植民地で、酷い人種差別が横行しているインドの危険は承知の上

今までだって散々な目に遭ってきた

今回が、特別危険だとは思わない


確かにガイアは、世界戦争が勃発して貧富の差、人種差別、女性や子どもへの虐待等これまでにない劣悪な状況に陥っている


「宇宙人による侵略です」


我々天使も困っています、お手上げですよ、と肩をすくめる天使


(宇宙連合が手をひいてからは無法地帯じゃ)

(どんどんと勢力を増しておる)

(人を人とも思わぬ外道どもめ)


今のガイアで権力を握っているのは、一部の悪の宇宙人ということね

だから、危険なのかな?


「私の知るところでは、ポータルを占拠して、宇宙人の出入りを妨害しているようです」


そんな…ガイアを好き勝手にして乗っ取るつもり?


「今起きている世界戦争も、宇宙人によるものです」


(ガイアを破壊するつもりじゃ)

(あの者共は、全てを滅亡へと導く)

(今のガイアへ行くのは危うい)


そんな時だからこそ、行かなければ

もう一度ブループリントを作成してみる


アルは、直接インドに転生するのは難しいと考え、大英帝国の貴族として植民地先のインドへ入国する計画に変更した

転生もウォークインに変えて、滞在期間を短くした


今度は許可が下りたが、宇宙連合からガイアは危険星域と指定する警報が発令された

ボランティア団体の返答には、現地でのトラブルには一切責任を持てないとの注意事項がぎっりしと追記されていた


アルも少し躊躇した

今回のガイア行きが終わったら、しばらく様子を見た方がいいかもしれない


それ程までに、ガイアはよくない状態だった

同じ宇宙人でも、身震いする残虐さ、無意味な破壊

自ら滅亡への道をまっしぐらに進む

理解できない行い

人間を、ガイアを、守らなければ



(気をつけるのじゃぞ)

(使命もいいが、己を大切に)


「私たち天使も、今のガイアには近づくのは困難ですので、くれぐれも無理をなさらぬように」




“無茶をするなよ”


DPまで心配そうに言う


わかってる、ありがとう

早めに帰るから


行ってきます、と月のポータルへと降り立つアル

ずっと見送るDPに一度振り返ると、ガイアへと出発した


ガイアまでは、いつもと変わらず辿り着いた

大英帝国へのポータルは、最初に来たストーンヘンジはもう使われておらず、川沿いのロンドン塔になっていた


小さな白い鳥になって、塔の上から街全体を見下ろす

だいぶ様変わりしたイングランド

さて、ウォークインする個体の元へ


大きな屋敷の寝室で、病弱な貴婦人が危篤状態に陥っていた

傍らに立つのは、夫でありこの屋敷の主人の貴族階級の英国人男性


意識を失った妻にうろたえている

スピリットが抜け、入れ替わりに窓から素速くアルが入る


「おぉ、ヘレナ、もうダメかと思ったぞ」


「あなた、私、死ぬまでにインドへ行く夢を叶えない限りは死ねないわ」


「インド?ヘレナの望みなら何でも叶えよう、元気になったらインドへ行こう」




病弱だったヘレナは、不思議なことにすっかり健康になり、インドへと旅行へ行くことになった


夫の手がける事業の一つに、インドで生産した綿製品をイギリス本土で販売する会社があり、インドへは仕事で行くついでに妻のヘレナの観光旅行も兼ねることになった


優雅なスエズ運河の船旅を経て、インドへと到着した

インドの別宅へと車で移動する

肌の色の違う人々

別荘の使用人のインド人たちが迎えてくれた


夫は仕事で忙しく飛び回っているので、ヘレナには専属のドライバーと車、護衛と世話係が与えられた

人種差別をしない優しいヘレナに、皆戸惑いながらも歓迎してくれた


屋敷での給仕をする女性の使用人たちにも親しげに接するヘレナ

最初は皆驚いた顔をしたけれど、そのうちに心を開いてくれるようになった


「ねぇ、あなた方が食べているスパイス料理?とても美味しそうね」


「いえ、奥様が召し上がるようなものではございません!旦那様に叱られます」


ヘレナは本国で食べているよう豪華な食事よりも、使用人の皆が手で食べているカレーが気になっていた


主人には内緒で、お願い!と使用人たちの食事を分けて貰い、部屋でこっそり食べた


美味しい…


ヘレナ(アル)はすっかりインドのスパイス料理が気に入り、滞在中は隠れてカレーばかり食べた

代わりに、ヘレナ用の豪華な食事は使用人の皆に食べてもらった

皆、恐縮して断っていたが、ヘレナがあまりにも嬉しそうにカレーを食べるので、諦めて受け入れてくれた






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