第9話 まさか、彼女は⁉
午前中の授業が終わり。教室にいるクラスメイトは教室内で弁当を広げたり、別の場所で他の友人らと昼食をとるために教室を後にしていたりと色々だった。
……そう言えば、月見里さんは?
難波啓介は机に置かれてあった教科書やノートを片付けている際、ハッとして教室内をキョロキョロと見渡すが、彼女の姿はなくなっていた。
月見里莉子は、自分の斜め右前の席なのだが、やっと授業から解放されたという安堵の気持ちから、啓介は彼女の行動を見失っていたのだ。
まだ昼休みも始まったばかりだし、月見里さんを探すか。
そう思い、席から立ち上がると、一先ず自身の昼食を確保するためにも、校舎の一階に常設されている購買部へと向かう事にしたのだ。
学校内には食堂もあるのだが、購買部の方が比較的安価であり、簡単に立ち寄りやすく、購入しやすいという利点があった。
「……今日はこのパンしか残ってないか」
だが、そんな購買部にも大きな欠点がある。
それは簡単に手に入れられるからこそ、他の人に先を越されてしまうと、購入できる選択肢が減ってしまう事。
食堂のように、多めに用意されているわけではないのだ。
今日は、莉子の存在を見失ってしまう上に、購買部でも先を越されてしまっていた。
テンションを落ち込ませながら、イチゴジャムパン一個とコーヒー牛乳一つを同時に購入する。
合計三〇〇円もかからない程度だった。
購買部を後に、啓介がトボトボと一階の廊下を歩き、校舎内を移動していると、少し先の曲がり角を曲がる莉子の姿が見えたのだ。
啓介は早歩きになる。
曲がり角から顔を出し、彼女に話しかけようとしたのだが、莉子の近くに、とある男子生徒がいる事に気づき、パッと壁に姿を隠す。
え、え⁉
もしかして、俺意外とも付き合っていたのか⁉
その時、啓介の感情はさらに暗くなるのだった。
今日は朝から散々目に合ってばかりである。