第10話 彼女の真意がわからないんだけど……
え……?
やっぱり、そうだよな……。
月見里さんみたいな子が、自分のようなパッとしない陰キャ寄りの奴と正式に付き合おうとか思わないよな。
単なる遊びなのかもしれないと、啓介は落ち込み気味に表情を暗くしていた。
啓介は廊下の壁に背を当て落ち込んでしまう。
壁の先近くには莉子と、もう一人の男子生徒がいる。
さっき見たが、大体、莉子と同い年くらいの人だと思う。
二人の話し声が聞こえないように、啓介はモノを持っている手で両耳を塞いでいた。
この場からすぐさま逃げ出したい感情に襲われるが、二人がどんな会話をしているのか知りたくもある。
途轍もなく複雑な心境だった。
聞くべきか。
もしくは聞かないべきか。
悩ましい問題に直面する中。啓介は耳を塞いでいた手を離し、二人の会話に耳を澄ます事にしたのだ。
啓介からしたら、思い切った判断だった。
「――俺もその日なら問題ないと思うからさ」
「私もその日丁度時間があるし、丁度いいかもね」
「そうだな。じゃ、そういう事で、今週中の休みに」
「そうだね」
「詳しい話は後でするから」
啓介が聞き耳を立てた時には、二人のやり取りが終わりに近づいていた。
今週の休みの日?
という事は、やっぱり、付き合う前提の話なのか?
最初っから耳を塞がないで、しっかりと聞いていれば良かったと、今になって思う。
啓介が緊張感から解放され、ため息を吐いていると隣に人がいる事に気づく。
「難波君?」
莉子は先ほど会話を終わらせたらしい。
「月見里さん? ど、どうして?」
「どうしてって、さっき、そこで会話していたから。難波君はどうしてここに?」
「それは、中庭とかで昼食を取ろうと思って」
啓介は手にしていたイチゴジャムのパンと紙パック系のジュースを証明として見せた。
「私も今からお昼を取ろうとしていたの。丁度いいから、一緒に食べる?」
莉子から誘われるが、啓介は後ずさってしまう。
でも、ここで逃げたら駄目な気がして、一応頷いておいたのだ。




