VSバレー部②
周りにいる生徒は唖然としていたが、俺はすぐにボールを受け取って次の準備をする。
先生はすぐに笛を吹いてくれた。その音で相手チームは再び構える。
さっきのジャンプサーブを打った後、久しぶりに運動したので両足に違和感があった。一応念のために今日はジャンプサーブをしないようにしよう。
今度は先程より少し前あたりまで下がり、両手でボールを持つ。相手チームに俺を本気にさせたお礼だ。
軽く前にあげたボールにゆっくり助走を合わせながらジャンプし、先程と違い今度は軽くボールを打つ。
打ったボールは相手コートに向かい点で飛んでいく。ボールは名も知らない男子生徒のところに飛んでいく。
「ッシャ! ラッキー!」
レシーブの姿勢をとった名も知らない男子生徒はそんな声を張り上げる。
バレー未経験者の人は先程のサーブと比較してしまうだろう。
ボールは男子生徒のところに飛んでいくが、途中で下に落下してしまい、レシーブを構えていた生徒はボールを取ろうとして、顔面から滑り落ちていた。
俺はもう一度サーブを打とうと思ったが、歩いていると左足に軽い痛みが走ったのでその場で山之内と交代する。
「いいサーブだったじゃん。やっぱりバレー経験者だったんだね」
「……まぁな」
「これで少しでもバレー好きになれた?」
「それは無い」
「即答⁉」
山之内は肩を落としながらコートに戻っていく。
久しぶりにバレーをしたせいか、少し楽しむことはできた。それでもバレーを嫌いという気持ちは変わることは無かった。いや、嫌いではあるが前よりかは少しマシかもしれない。
山之内から旗を受け取って元の場所に戻ろうと思ったが、もう一人の女子バレー部員が付いていた。試合の途中で山之内と変わっていたようだ。少し左足が痛かったのでありがたい。
山之内のサーブから試合が再開するが、打ったボールはラインの外に出てしまいアウト。それと同時にタイマーの音が鳴り響く。
試合終了の合図だ。
山之内のチームが残り茅山のチームともう一つのチームが交代する。
茅山は女子バレー部なので線審につかないといけない。線審は二人でしないといけないので茅山は俺と対角の線審のはずだ。
しかし、茅山は俺のところに来ていた。両手に握りこぶしを作っているので正直怖い。
「おい、あんた。名前は?」
「……なんで教えないといけないんだ」
さっき山之内に反射的に教えてしまったため一拍間をおいて返した。
これで相手も無理に聞いてくることは無いだろう。
「いいから教えろ! 名前は何⁉」
「た、球宮元成だ」
驚いてしまい、またもや反射的に答えてしまった。
「私は茅山朋紀。球宮覚えたから、次は絶対あのサーブ上げて見せるから」
それだけ言うと彼女は対角の線審のところに戻っていった。
それにしても、俺のサーブを上げて見せると言っていたが、あまり威力は強くないとはいえ、女子には男子のようなジャンプサーブを打つ人は少ないはずだ。逆に中学の頃はジャンプフローター系のサーブが多かった気がする。
まるであいつに似ていた。中学の時、妹と一緒に俺を監督に誘ったあの女に。結局マネージャー兼監督という位置についたけれども。
俺のジャンプサーブを上げてみたいという女子は茅山で二人目だ。もう二度とバレーに関わるのは嫌なはずなのに、俺のサーブを上げて見せると宣言されるのは正直そこまでいやではない。
授業はそのまま進んでいき最後の試合が終わったところで片づけを始める。今日は最後の授業なので皆のんびりと片付けている。
そして俺は思い出してしまった。今日の昼休みに起きた出来事を。
『放課後に君の所に行くから、その時要件を話そう』
『逃げたいなら逃げてもいいよ』
『君は逃げきれない、いや、逃げられないよ。私が追いかけなくてもね』
今日の放課後に増国先輩が俺の教室に来る。うちの担任はバレー部顧問の笹木先生なので増国先輩が教室に来てしまえば俺のことがばれてしまうだろう。
それだけはどうしても避けたい。もしあの二人に頼まれたら絶対に断れる勇気はない。むしろ最初は渋ってしまい最終的に了承してしまう可能性が高い。
周りが片づけている間に教室に戻ることにする。誰にも気づかれないように体育館の入り口に向かおうとしたとき、誰かに肩を掴まれてしまう。
振り返るとそこには笑顔の先生がいた。疑いのないほど満面の笑みだ。しかし、その笑顔が不気味すぎてとても怖い。
「ど、どうしたんですか?」
「今、挨拶も終わってないのに帰ろうとしてたよね?」
「い、いや、してないですけ——」
「してたよね?」
「し、してな——」
「し、て、た、よ、ね」
「はい、してました」
こ、怖い。入学したての頃とはまた違った圧を感じる。今は笑顔だからなおさら怖い。
肩を掴んでいた先生の手は俺の手首を掴み体育職員室へと連れていかれる。
そのまま中へと連れていかれて立たされてしまった。
「球宮くんには勝手に帰ろうとした罰として先生の頼みを聞いてもらうね」
「え~、俺早く帰りたいんですけど」
「まぁまぁそう言わないで、もう少し待っててね」
仕方ないので早く済ませて帰ることにしよう。
『ありがとうございました!』
笹木先生を待っていると扉の外から声が聞こえた。
この声は授業終了の挨拶だ。できれば早く帰りたいのにずるをしようとしたのが裏目に出てしまった。
それからしばらく時間がたったころに先生が立ち上がる。
「お、あったあった、球宮くんこれ悪いんだけどほかのクラスの体育委員の子に渡してくれないかな? 本当はこの授業中に渡す予定だったんだけど忘れちゃって。三組には先生が持っていくから二組、六組、八組に持って行ってね。あっ、六組と八組の体育委員は女子だから二組の生徒のところから持って行ってね?」
「いや、それなら六組と八組は机の上に置いとけばいいんじゃないですか?」
「…………はぁ、体育委員に渡してくれる、よね?」
「わ、わかりました」
そして封筒を俺は受け取った。そこには『体育委員に必ず渡してください』という文字が書かれていた。どうやらとても重要なものらしい。




