練習②
先に元成のもとに着いたのは、やはり朱莉だった。朱莉は最後の記録を書いて元成にもっていく。
「はぁ、はぁ、これ、でいいんでしょ」
「ああ、それじゃあ茅山が来るまで休憩していてくれ」
「はぁ、はぁ、わ、はぁ、わかった」
朱莉はそのまま水道のところまで行き口に水を入れ飲み込んだ。その後持っていたタオルでぬれた口元と書いた汗を拭う。
朱莉が休憩に入り五分後に朋紀が記録を書いて元成のもとに紙を持ってきた。
「お疲れ、休憩は何分欲しい?」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、い……」
「い?」
「いち」
「一分か? おいおい本当に大丈夫かよ、相当疲れてんだろ」
元成は人差し指を一本立てて「いち」という朋紀を心配そうに見るが、朋紀は新なことを気にせずに再び口を開いてこう言った。
「はぁ、一時間」
「……心配した俺が馬鹿だった」
元成は一つ溜息を吐き今の時間を見る。
(ちょうど五時か)
「休憩は十五分だ。それまでにある程度回復しろ」
「……は~い」
だらけた返事をした朋紀はゆっくりと水道に向かい水を飲んで床に座った。
(さて、今からこの記録に書いている一往復のタイム差を計算していくか)
元成は二人の一往復のタイム差を出し、お互いの結果を見比べる。
(茅山が六往復のペナルティー、海熊が四往復のペナルティーか。……あんまり差が出なかったな)
朋紀は計算し終えた後、朋紀と朱莉の休んでいる場所まで行き十往復の記録用紙を返す。
「茅山は六往復、海熊は四往復のペナルティーな、十五分になったら呼びに来るからしっかり休んどけよ」
元成はそれだけ言い二人から少し離れた場所に腰を下ろし外を見る。そこには三枝が葵や陽と同じペースで走っているのを見つけた。
(明らかに増国先輩は疲れてないな。日車姉も疲れてはいるがまだいけるような状態、一年の椎葉は……だいぶ体力が限界に近いな。やっぱり新入生の一年には体力をつけるのが先か)
元成は外で走っている三枝たちを見て、新しい課題に直面する。そんなことを考えていると既に十五分になっており、急いで朋紀たちのもとに向かう。
朋紀と朱莉は既に準備運動を済めせており、いつでも行ける準備にをしていた。
「……もう走っても大丈夫か?」
「おう!」
「はい」
「よし、次は勝負とかは無いから自分のペースではしていいぞ」
「「はい!」」
元成の号令で朋紀と朱莉はともにスタートする。
二十分後、元成のもとに琴美がゆっくり歩いてやってくる。
「球宮く~ん、頼まれていた紙、できたよ~!」
琴海は手に持っていた紙を元成に渡し背伸びをする。
元成は紙を受け取り一枚目に目を通す。
「ありがとうございます。……要望どうりで来てますね。せっかくですし少し椅子に座って休まれては?」
「気づかいありがと! でも、ずーっとデスクワークで椅子に座ってたから遠慮しとくね」
元成は椅子を一つ取り出し座ることを勧めるが琴海は誘いを断り、元成が取り出した椅子を元の場所に戻す。
「ちなみに今は何の練習をしているの?」
(球宮くんの練習メニュー気になるな~。もしかして外でもできる技術力アップの練習かな?)
元成にコーチを一番最初に頼んだのは他でもない琴海だ。だからこそ元成の練習内容が気になるようだ。
「今の練習内容は六つのグループに分かれて、それぞれのグループ担当の三年と俺が練習内容を決め六時から七時半までの間で行うというものです。これを一週間行います」
琴海は空いた口がふさがらなかった。彼女の思っていた技術力アップの練習などではなく全く想像していなかったグループ練習だったからだ。
そうなると次に彼女が気になるのは練習で得られるものだ。
「ち、ちなみにこの練習にはどのような意味があるのかな?」
「……簡単に言うとチームの団結力を強めるというものですね。共通の敵を作ることで力を合わせるというやつですよ」
「共通の敵?」
琴海は右人差し指を顎に当てきょとんとする。
「はぁ、害虫三人組ですよ」
それを見た元成は一息ついて共通の敵を教える。
「害虫三人組で共通の敵? ……ああ、なるほど……って、球宮くん! 人を害虫呼ばわりしたらいけません!」
「先生も害虫で誰か分かったじゃないですか」
「そ、それは……と、ともかく! 人を害虫呼ばわりしないように!」
「……一応頭に入れておきます」
害虫呼ばわりをしたことを怒ることねだったが、元成に自分も害虫で納得したと指摘され話を逸らす。
ちょうどその時、四往復し終えた朱莉が元成と琴海のもとにやってきたため一度話を終える。
「はぁ、はぁ、じゅ、十分休んだと思ったのに、ぜ、全然体力が回復していなかった。はぁ、はぁ」
朱莉は膝に手をついて下を向き呼吸をする。
「ゆっくりでいいから歩いて息を整えろ。そっちの方が楽だぞ。あと給水も」
「わ、わかった」
朱莉は元成に言われた通りに水道のところまで歩き、水を飲みゆっくり歩いて息を整える。ちょうど歩き始めたタイミングで朋紀も息を切らして戻ってきた。
「はぁ、はぁ、お、終わったぞ、六往復!」
「そうか。とりあえず止まらないでゆっくり歩け。そして水分捕って息を整えろ」
「ら、ラジャー!」
朋紀も元成に家あれた通り、水道のところまで歩き、水を飲みゆっくり歩いて息を整える。
「それじゃあ、今から六時まで休憩な、その後ボールを使うから部室に行って取ってきてくれ」
「「はーい」」
元成は琴海にもらった紙をもう一度見直し他に要望がないかをチェックする。朋紀と朱莉は壁に背中を当て休憩をする。琴海はちょくちょく外の様子を窺っている。
「……よし、六時だな。悪いがボール捕ってきてくれ、後メジャーも」
「「はーい」」
息を整えた二人は普通に歩いて部室に向かう。
朋紀と朱莉が部室に道具を取りに行くのとすれ違うように九人の人影が元成と琴海の目に映る。
「いや~、疲れた疲れた」
「ほんとそれね」
「でも、六時で上がれるなんてラッキーじゃん」
高原・島村・東郷のグループだった。
(⁉ ちょ、あの三人以外へとへとじゃない!)
琴海は後ろから来た他のメンバーを見て驚きを隠せないでいた。
秋穂たちは一言も喋ることなく部室へと向かっていく。
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