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練習①

「「……はい?」」

 朱莉の話を遮ったかと思ったら想像にもしていない言葉が出てきたため、朋紀と朱莉は首を小さく傾げる。

「このバレー部に存在する害虫の駆除だよ。お前らも知っている害虫(恩人)三人組。あいつらを駆除するためにこの練習をするんだ」

「駆除って、いったいどうやって!」

 朋紀は元成の駆除という言葉を否定せずやり方を聞いた。朋紀自身あの三人が部活にいなくなればいいと思っていたからだ。それは朱莉も同じであった。

 元成はやり方を知りたそうな二人のトヨネから貰った本を見せる。

「これの百七十五ページを見てみろ」

「これ、トヨネさんが書いた部活動の原則と注意事項、条約の書いてある本じゃん」

「これの百七十五ページに何が書いているの?」

 朋紀は持っている本の百ナナ十五を開く。

「ふむふむ、……ん? おいおい、これ、まじか?」

「まったく、どうしたのよ、言われたページを開いちゃって。私も気になるからちょっと見せて!」

 朱莉は朋紀の持っていた本を取り上げ、内容を読む。

「……え、これほんと? ……なんで気づかなかったの。でもこれならあの三人を、ふ、ふふふ」

「「……」」

 不敵な笑い声を上げている朱莉に元成と朋紀は引いていた。

「ま、まぁそういうわけだ。これをするにはお前たちだけでなく、一年が現状を知っていなければいけない。だからこの練習メニューである程度理解してもらいたいんだ」

「なるほど、練習メニューの意味は分かったわ。でもなぜ私と朋紀は一年生と組まずに担当もあなたなの」

 もっともの意見に朋紀は頷いて説明を求めた。

 元成はその質問にしっかりと答える。

「シンプルにあの三人組を嫌いなのはお前ら二人組だろ。だったら組ませて無駄な時間にするよりも、普通に鍛えた方がいいだろうと思ってな。だからこの一週間、お前らの担当は俺がする。死ぬ気で頑張れよ」

「「っ! はいっ!」」

「それじゃあ、手始めに階段ダッシュ十本から行くか。第三校舎の一階から四階までを往復して一往復ずつでタイムを競う。つまり十回タイムを競うということだ。で、一回負けるごとに十往復終わったら一往復追加だ。……さぼるなよ?」

「上等!」

「さぼるなんてありえないわ! 朋紀勝負よ!」

(うんうん、お互いに負けたくないという気持ちがともに強くする。いいこと、いいこと)

 朋紀と朱莉の心に火が付いたことに元成は笑顔で頷く。

「たまたまここに二つのストップウォッチがあったから、軽く運動して準備ができたらスタートな。この白い紙に一往復ごとに記録を書いてくれ、十往復したらこの紙を俺のところに持ってきたら休憩に入っていいぞ」

 説明を受けた朋紀と朱莉はそれぞれ準備運動に入り、お互いに終わったら元成に報告し、スタート位置の階段に着く。

「それじゃあ、よーいドン!」

 その声の合図の後に二人は階段をダッシュで昇り始め、元成は二つのストップウォッチを同時に押し、朋紀の紙の近くに置いた後朱莉の紙の近くにもう一つのストップウォッチを置く。

「それじゃ、他のメンバーのところに行ってみますかね」

 元成はその場を後にして他のメンバーのところに様子を見に行く。

(ふむ、やっぱり増国先輩はボールを使ってレシーブコントロールの練習か。たまに軽くダッシュも入れてまたレシーブコントロール。なるほど、悪くはないな。外だと滑り込めないから厳しいコースに球出しはできないし。他のところ行くか)

 元成は三枝たちの練習場所を後にして次は華のもとに行く。

「ほら伊吹、しっかり罰ゲームしなさい」

「そうだよ、伊吹ちゃんが失敗したんだから」

「え~、でもだるいんだもん」

「しょうがないわね。恵、私たちもやりましょうか」

「はいっ、わかりました!」

「まぁ、二人が一緒にしてくれるなら~、一緒にやるよ~」

 そのような声が聞こえた元成は壁から顔を出し、覗き見る。そこには反復横跳びをしていた華グループがいた。

(反復横跳び? さっき罰ゲームって言ってたけど何かしているのか? ……ん?あれは)

 元成の目には地面に落ちている一つのボールが目に入った。

「よし、それじゃあ続きを始めようか! いくよ恵!」

「はい! 伊吹ちゃん!」

「華せんぱ~い」

 伊吹は華にオーバーハンドでパスを出すがボールは華の前で落ちてしまう。

「こら、伊吹これで四回連続だよ!」

「すみませ~ん、でもなんかオーバーハンドで返すのって腕がだるくなっちゃって~」

「だったらアンダーハンドで返せばいいんじゃない?」

「あ、そっか~」

 元成は練習内容を確認してほのぼのした空気を見てからその場を去った。

 次に元成が向かったのは坂道だった。そこからは「パンッ」という音が聞こえ、数秒後に坂道から咲良と由夢がダッシュで登ってきた。

「はぁはぁはぁ」

「由夢ちゃん大丈夫?」

「だ、大……丈、夫です。はぁはぁ」

 由夢は相当の汗をかいて息切れしており、咲良は息切れはしていないが相当な汗をかいている。

「ほらほら、そんなんだとレギュラーになれないわよ! 休まずに走る!」

「「……」」

 坂道から声がした。元成は上履きのまま外に出て、声の下坂道を見下ろすとそこには地面に座ってスマホをいじっている高原がいた。

 咲良はあまり見ないようにしていたが、由夢はスマホをいじっている高原に近づいていった。

「あの、高原……先輩、先輩も走らないとレギュラー取られちゃいますよ?」

 高原に注意をする由夢を咲良は額に手を当てて小さな声で「あちゃ~」とつぶやき、上から見ていた元成は見つからないように気に隠れて話を聴く。

「はぁ~、あんたは一年だから知らないかもしれないけど、私と花奈と真由はこの部活にとって恩人でもあるわけ。その私たちが試合に出ることはもう決まっているわけ。だから走らなくてもいいの、分かった?」

「……わかりました!」

「ならいい、それじゃあどんどん走るよ、よーいドン」

 高原は再びスマホをいじり始めた。

(証拠品として一枚)

 元成はたまたまポケットに入れていた琴海のカメラを使い、スマホをいじっている高原を写真に収めた。

(こんなこともあろうかと、部活に行く前に借りといて良かった)

 元成はしっかりとれているのを確認しその場を去る。

 その後、島村、東郷のグループを見に行った元成は二人がスマホをいじって一・二年に練習させているのを確認し、スマホをいじっている瞬間をカメラに抑え、朋紀たちのいる第三校舎に戻っていった。

(開けていた時間は十分ぐらいか、あいつら今何往復目だ?)

 元成は第三校舎に着き朋紀の記録を見る。紙には一往復目から七往復目までの記録が書かれていた。

(時間は十二分三十七秒。一往復目は一分十秒だからペースハイフン間違えたな。海熊の方はどんな感じだ?)

 元成は朋紀の記録用紙を見た後、朱莉の記録用紙があるもう西の階段に向かう。

(海熊の記録は……こっちはペース配分がしっかりできているな。一往復目は一分三十秒と朋紀より遅いがこっちの記録は八往復目まで書かれている。お?)

 元成は朱莉の記録用紙を机に置き少し離れた場所に立つ。数秒後にその場に朱莉が走りながら机に到着し、記録を書いて再び会談の方に走っていく。更にその数十秒後に朋紀が東の階段からゆっくりと机に向かい記録を書いて再び階段に走っていく。

元成は第二校舎と第三校舎をつなぐ渡り廊下の前で二人を待つことにした。


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