害虫駆除①
「え~、二の十乗の答えは一〇二四となる。二の十乗はよくテストに出てくるから覚えておけよ~」
午後の数学の授業、担当教師が説明しているなか元成は机の下でトヨネに貰った本を読みふけっていた。
(へ~、三年生は成績十位以内の生徒以外は進学・就職が決まるまで高校総合体育大会終了後の部活に参加できないのか……春高に三年出れないんじゃね? 他には、ほ~う、直近の試験で赤点を三教科も取った生徒は次の大会に参加できないのか。しかも赤点教科に関しては再テストがあり、再テストで八割以上捕れないと部活への参加禁止。流石進学校だな。超厳しい)
「球宮」
「……」
「球宮!」
「……」
「球宮‼」
「! はいっ」
元成は本に集中しすぎて数学担当教師が名前を呼んでいることに三度目でようやく気付く。
「まったく、俺の授業をまじめに聴かないとは、テストでどうなっても知らんからな。……そうだ! せっかくだからこの問題解いてみろ。二の九乗だ。どう解いたかの説明もしろよ」
「はい、答えは五百十二です。解き方は二の十乗は一〇二四と覚え、そこから一乗捕るのだから割る二をすると答えが出ます」
「せ、正解だ」
『おおぉー‼』
(さてと、続きを読もう)
クラス中から拍手が巻き起こるなか、元成は先程読んでいた本の続きを読み始める。
(ふむふむ、なるほど、なるほど。へ~、え、これマジ?)
元成はその後の授業も本を読むことに費やし放課後を迎えた。
「球宮くんは着替え持って来てる?」
「一応ジャージは持って来ていますけど今日は使わないので大丈夫ですよ」
帰りの挨拶が終わるなり琴海は元成に声をかける。
「分かったわ。いつもなら三枝ちゃんに任せてるんだけど、今日から球宮くんに任せるそうだけどもう考えてるの?」
「はい、最初の一週間は増国先輩ともう一人の三年の人以外はストレスがたまるでしょう、特に一・二年にですけど。ま、何とかなるようにしますよ」
「うん、あの子たちが部活を辞めない程度によろしくね。……お、全員そろっているかな。それじゃあ行こうか」
「はい、ところで頼んでいたものですが……」
「多分一時間後の五時半くらいにはできると思う」
「分かりました」
そこから話すことなく、元成と琴海は女子バレー部が待機している生徒玄関に向かう。
生徒玄関から琴海が見えた女子バレー部員は半円形になり琴海を待つ。
琴海は元成を連れ部員たちの前に立つ。
『?』
琴海の横に立つ元成を女子バレー部員たちは不思議そうに見る。それは元成のことを知っている秋穂と朋紀、薫も例外ではなかった。
「えーっと、挨拶の前に彼のことを紹介します。本日から女子バレー部のコーチをしていただく二年三組の球宮元成くんです。自己紹介お願いね、球宮くん」
「はい、ただいま紹介にあずかりました球宮元成です。俺は部員全員にコーチと認めてもらうまでコーチを名乗るつもりはありません。よろしくお願いします」
元成が自己紹介を終えると小さい声で話すものが現れた。そんな中、薫と陽は驚いた表情で元成を見ていた。
「ということで球宮くんは皆さんに認めてもらえるまでコーチは名乗らないそうなので今はマネージャー兼コーチ候補ということになっています。仲良くしてあげてください」
『はいっ』
「それでは私はやらないといけないことがありますので、今日から彼の指示に従ってください。それでは終わったらまた来ますので頑張ってください」
「ありがとうございました!」
『ありがとうございました!』
「……」
元成以外の部員が頭を下げる。数秒後に頭を上げた女子バレー部員は元成の方に体を向け指示を待つ。
元成はからっていたバッグの中からノートを取り出し話を始める。
「最初に言っとくけど今日から一週間、体育館練習を抜きます」
『は?』
元成が言っていることに三枝以外が納得できないでいた。それでももたなりは話を続ける。
「一・二年を六つのグループに分けて練習をします。それぞれのグループに俺と三年がついて一日おきに変わるようにするのでその日の練習内容は担当の三年生に聞いてください。それではまず——」
「ちょっと待ってください」
元成がグループ分けを言おうとしたとき二年の海熊朱莉が言葉を遮る。
「どうかしたか?」
元成は口調を優しくして話を聴く。
「一週間体育館を使わないってどういうこと! 私たちはバレー部なのよ! 体育館使わないで練習なんて冗談じゃないわ!」
「まぁ正しい反論ではあるな。だが、今説明しているところだから、文句なら説明が終わったらいくらでも聞き受けるから待っててくれるか?」
「……わかりました」
朱莉は一度諦めて話を聴くことにした。
それを確認した元成は話を続ける。
「で、グループ分けだけど一つ目のグループは日車葵と椎葉陽、担当は増国先輩。二グループ目は本条恵と島浦伊吹、担当は日々(び)屋華先輩お願いします。三グループ目は奈良咲良と涌井由夢、担当は高原友美さんお願いします。四グループ目は亀梨里桜と王谷コウ、担当は島村花奈さんお願いします。五グループ目は山之内秋穂と日車薫、担当は東郷真由さんお願いします。最後のグループは茅山朋紀と海熊朱莉、今日の担当は俺がやります。時間はそれぞれのグループ担当が決めて六時から七時半の間までに終わってください。終わったら俺に報告してください。書いてもらいたいものがあるのと明日の担当の人を教えますので。それじゃあ言いたいことがある人は残ってください。解散!」
「ありがとうございました!」
『……ありがとうございました』
挨拶の後に外に出ていくのは三枝のグループと華のグループ、そして高原、島村、東郷以外のグループメンバーだった。
「ねぇ、ねぇコーチくん。私たちさぁ、この部活にとっては恩人に当たる人物なんだよね~」
「だからさ、私たちを優先的に試合に出してくれないかな~」
「お礼に~、イイことしてあげるから」
三人はそれだけ言い「じゃあね~」と、手を振って出て行った。
「チッ、あいつら、ふざけんじゃねぇぞ。球宮が男だからって色仕掛けで落としにくるとかマジで——」
「おうぇ、気持ちわる」
朋紀の言葉を元成が気持ち悪そうに遮る。それを見た朋紀は元成が虜になっていないと理解して安どのため息を漏らす。
「それで、どうして体育館を使わないかだったよな?海熊」
「え、ええ、そうよ。でも気持ち悪いのだったら無理に——」
「害虫駆除だ」
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