入部①
大淀川高校との練習試合から二日経ち四月二十四日月曜日になる。
午前中の授業が終わり昼休みになる。
元成は授業が終わるとすぐに教室から出ていく。元成の向かう先はもちろん生徒会室だ。
(さすがに昼休みは生徒が多いな)
第一校舎と第二校舎には売店に向かう生徒がよく歩いる。
(お、人が一気に少なくなった。これで楽に進めるな)
人が多いといっても売店までなため、そこを過ぎると人は少なくなる。
元成は人込みから抜け、すぐに一階に向かう。
一階にある教室は事務室、校長室、会議室、保健室、生徒会室と生徒が用事のある教室など保健室しかないため人が少ない。
元成は事務室や校長室の前を通って生徒会室に向かう。
生徒会室に着くとドアが閉まっていたため、元成は軽くノックをする。
「どうぞ」
生徒会室からは女性の声が聞こえた。元成はその声を聴きすぐにドアを開ける。
「失礼します。二年三組の球宮元成です。入部についての話し合いのために来ました。入ってもよろしいでしょうか」
「どうぞ、入ってそちらの真ん中の席に腰を掛けてお待ちください」
「分かりました」
元成は生徒会長の伊勢紅葉に言われた通り生徒会室に入り、紅葉とは対面にある三つの席の真ん中に座る。
(……ん? 伊勢先輩の左側に座っているのは教頭先生……だよな。その教頭先生の横に座っている人は、確か生徒指導の先生だったはず。じゃあ、伊勢先輩の右側に座っている力士みたいな女性が部活動責任教師の人か?)
元成は教頭先生と生徒指導教師には見覚えがあった。この二人は月一にある全校集会でよく壇上に立ち話をするのだ。しかし、部活動責任教師の女性には見覚えがなかった。全校集会では部活動についての話も行われる。見覚えがなかったのは決して元成が居眠りをしているからなどではない。ではなぜ見覚えがないのか。それは簡単なことだった。全校集会の時に放送で話していたのだ。そのため女性のことを知っているのは教師と部活動の部長だけのため元成のような一般生徒は知らないのだ。
「失礼します」
元成が来て数十秒後に三枝と琴海が同時に生徒会室に入り、お互いに元成の横の席に座る。
それを確認した紅葉は席を立ち話を始める。
「それではお揃いになったので、これより球宮元成くんの女子部活入部についての話し合いを行います。こちらにいる教師が質問しますので球宮くんは正直に答えてください」
「はい」
「それではお願いします」
それを言い終え紅葉は席に座る。
「それではまず私から」
教頭先生は手を挙げ元成に質問を開始する。
「えーと、球宮……くん? 君はどうして女子バレー部に入ろうと思ったんですか?」
「去年から女子バレー部顧問の笹木先生に勧誘されて断り続けてきました。今年度に入り増国先輩にも勧誘され、試合を一度見てから決めてほしいと言われたので一昨日の練習試合を見て入ろうという気持ちになりました」
「……わかりました」
教頭先生は元成の回答を聴き納得する。
「次に僕から質問します」
元成は手を挙げている生徒指導教師に顔を向ける。
「君は下心があって女子の部活に入るわけじゃないよね?」
「もちろんです。下心で入部するのは部活を頑張っている生徒に対しての冒涜だと思っています」
「なるほど、君の言っていることは確かだ。しかし、君が何か不祥事を起こしたらすぐに罰則を与えるからそのつもりで」
「はい」
生徒指導教師はそれだけ言い、机の上にある紙に目を向けた。
元成は残りの部活動責任教師に顔を向ける。
腕を組んで目を瞑っていた部活動責任教師は目を開け元成を見て話しだす。
「私は部活動責任教師兼部室等管理人の近藤トヨネっていうもんだ。私からの質問は一つ、あんたが女子バレー部に入ってもたらす利益は何だい?」
今まで即答していた元成は黙り込む。しかし、これは答えが思い浮かばないからではなかった。むしろその逆、思い浮かびすぎて何を答えていいのか分からなかったのだ。
(利益? 部活を明るくさせる? 全国大会に出場? バレーの楽しさを教える? ……なんかいろいろ思いつくな。とりあえずこれをひとまとめにすると……あっ)
思いついた元成は口を開き伝える。
「結果と楽しさ」
その言葉を告げた時の元成の顔には笑顔が浮かんでいた。
「何か問題起こしたらすぐに罰を与えるから覚悟しときな!」
「はい」
その瞳を見たトヨネは納得した表情で告げた。
「それでは、皆さん球宮元成くんの女子バレー部への入部に異議がないということで承認してもよろしいでしょうか」
「「「異議なし」」」
「それではこれにて話し合いを終了とさせていただきます。球宮くんにはこの後配布物がありますので残っていてください。それではお疲れさまでした」
その言葉を聞きそれぞれ席を立つ。教頭先生はすぐに生徒会室から出ていき、三枝は「今日の部活からよろしく」と元成に言い生徒会室から出て行った。
「球宮くん、これが女子部室を利用するにあたっての注意事項の書かれた紙だ。もしこれを破れば強制退部、期限付き停学もあり得るから気を付けるように」
生徒指導教師は注意事項用紙を元成に渡して生徒会室を後にした。
「私からはこれだね」
トヨネは少し分厚めの本を元成に渡した。
「これは部活に入部するにあたっての原則と注意事項、それと条件が載ってるよ」
「ありがとうございます」
元成は貰った本の一ページ目を開くそこには目次が書かれていた。
「別に部活動に関することを書く本だから、他の本に書かれているような題名とかは、いらないと思って一ページ目か目次を書いちゃってね~。その内容を見た生徒からはよくページ数が多くて読み切れないと言われるよ」
その言葉を聞いた元成と琴海、紅葉は苦笑いをするしかなかった。
元成は目次を読んでとある内容が書いてあるタイトルを見つけそのページを見つける。そこには元成の見つけたかった内容がぎっしりと書かれていた。
「ふ、ふふふ、あはは!」
「ど、どうかしたかい? 何か変ページでもあったのかい?」
急に笑い出す元成に不安になるトヨネ。不安を吹き払うように元成は誤解を解く。
「いや、別におかしいところなんてありませんでしたよ。ただ、どうしても欲しかった情報が書かれていたので」
「そ、そうかい。それで欲しかった情報というのは?」
「これです」
元成はそのページをトヨネに見せる。その後ろから生徒会室に残っていた琴海と紅葉はのぞき込む。
「?」
「……あぁ!」
「なるほどね」
トヨネはそのページの情報がどうしてほしいのか分からないでいたが、琴海はそのページを見て声を出し、紅葉は納得する。
「え? どうしたんだい? 確かに私がこの内容を書いたが、念のために書いたものだよ!」
「実は……」
どうしてもわからないでいるトヨネに紅葉が説明する。
説明を聞き終えたトヨネは一度黙り込み下を向く。そしてついに言葉を発する。
「事情は大体わかった。まず言わせてもらうとしたら琴海先生にも責任があるけど、今回は彼の入部祝いとして見逃してあげるよ! でも次は無いからね!」
「あ、ありがとうございます!」
トヨネに説教を受けた琴海は九十度のお辞儀でお礼を言う。
「それと球宮くん? そんなことなら今からでも私が行動に移すけどそれでいいかい?」
「……いえ、お気持ちだけ受け取っておきます。これは女子バレー部の問題ですので近藤さんに迷惑はかけられません。なので、決行する日にこのページに書いてあった紙を持ってきてくださるとありがたいです」
「……わかったよ。それで、決行する日は決まっているのかい?」
「金曜日でお願いします」
「了解。それじゃあ準備しないといけないからこれで失礼するよ、また金曜日ね! 後私のことはトヨネさんでいいよ」
(紙一枚なのに何の準備が必要なんだ?)
トヨネはそれだけ言い残し生徒会室を出る。元成は最後の『準備』といこ言葉に引っかかったがすぐに琴海の方に向き必要なものを伝える。
「先生、これって準備できますか? 後、部活動の記録の紙で名前を書く欄と感想を書く欄の紙」
「最初の方は時間がかかるけど後の奴は今日の部活が終わるまでに間に合うわよ」
「ありがとうございます。それでは。今日の練習メニューを考えないといけないのでこれで失礼します」
「うん、今日からよろしくね」
元成は「失礼しました」と言い、生徒会室を出て行った。
生徒会室に残った琴海は紅葉にとある写真を渡す。
「それじゃあこれ、よろしくね」
「分かってるわよ」
その後、お互いに生徒会室を後にした。
読んでくださってありがとうございます。
評価・ブックマークの方よろしくお願いします
感想もお待ちしております




