練習試合終了②
三枝は手を振り階段を下りていく。
それを見届けた元成は二階の渡り廊下から第二校舎に行き、自分の教室に入る。一つの机にとある紙を置き予め持ってきていたボールペンと判子を取り出しその紙に書く。
判子を押し終えたらその髪を持ち第一校舎と第二校舎をつなぐ渡り廊下を通って職員室に向かう。
職員室のドアの前に着いた元成はノックをしてドアを開き職員室内を見渡す。職員室には琴海しかいなかった。
「笹木先生、お時間よろしいでしょうか?」
「? ああ、球宮くんね、今少し忙しいけど一応用件だけ聞いとくわ。どうしたの?」
「いえ、入部届を持ってきただけですけど」
刹那、椅子が倒れる音が職員室に響く。
「いてっ!」
それと同時に琴美の声も響く。しかしすぐに立ち上がり元成に詰め寄る。
「い、いいいい、今、なんて⁉」
「え?」
「だから! なんて言ったの⁉」
「入部届を持ってきただけですけど」
その言葉を聞いた瞬間、琴海は床に倒れてしまった。しかし顔は誰が見ても幸せそうな顔だ。
「よ、ようやく球宮くんがコーチを引き受けてくれた。苦節一年、これまでの道のりは長かったよ」
琴海は袖で涙をぬぐう……ふりをする。
「あ、まだコーチをすると決まったわけではないですよ」
「……はい?」
涙をぬぐうふりをする琴海の腕が止まる。そしてすぐに元成に本当の涙話流しながら飛びつく。
「ど、どゔじで~。なんでゴーヂやっでぐれないの~!」
「ちょっ、汚い!」
跳び疲れた元成は涙だけでなく鼻水まで流す琴海を無理やりはがす。そして、そうしてコーチをすると決まったわけでないかを話す。
「急に同じ高校生がコーチをすると決まって選手が納得するわけないじゃないですか。もし先生や増国先輩が任命したなら納得すると思いますけどそれでは意味がありません。しっかりと選手たちに認めてもらわないと意味がありませんので」
その言葉を聞いた琴海は掴んでいた服を話しティッシュで鼻をかむ。
「入部届の紙貸して」
「は、はい」
元成は紙を差し出し、琴海はそれを受け取り自分の机にもっていく。紙を机に置いて入部届の担任の欄に『笹木琴美』と名前を書いて判子を押し元成のもとに戻って紙を渡す。
「多分生徒会室にいると思うからこうちゃんのもとに持って行ってね。あとのことはしてくれると思うから。私も一緒に行きたいけど少し忙しくなるからあとは頑張って。それじゃあまた月曜日にね。またね~」
それだけ言い琴海は職員室のドアを閉める。
「……生徒会室に行こ」
取り残された元成は一階にある生徒会室に向かって歩き出す。
階段を下り一階に着いた元成は生徒会室のある隅っこの教室に向かって歩く。
生徒会室に着くとドアは開いており中が見える。そこには一人椅子に座り読書をしている生徒がいた。生徒会長の伊勢紅葉だ。他の生徒は誰もおらず、ただ一人黙々と本を読んでいる。
元成は紅葉がいるのを確認しドアをノックして紅葉の気を自分に向ける。
「あら、球宮くん、どうしたの?」
「入部届を笹木先生に持っていったら生徒会室にいる伊勢先輩に渡せばあとはやってくれる、と言われたので持ってきました」
「そうなの、それで先生は?」
「なんでも忙しいようで」
「……そう」
忙しいという言葉に紅葉は怪訝そうな顔つきになるが元成の紙を受け取り内容をチェックする。
「うん、問題ないわね。それじゃあ少し待っててくれるかな? 今からある人に電話するから」
それだけ言い入部届の紙をもって生徒会室に置かれている固定受話器を使い電話を始める。
「あ、お疲れ様です。……はい、はい、実はとある男子生徒が女子バレー部に入部するのですが、……はい、下心は無く顧問の笹木先生と部長の増国三枝さんが勧誘しているので大丈夫だと思います。……二年三組の球宮元成くんです。……はい、……はい、私が調べた中では成績は優秀ですが、足を怪我しているため体育の実技がそこまで高くありません。……はい、聞いてみます。球宮くん階段の上り下りって普通にできる?」
紅葉は受話器を話し元成に質問をする。
「はい、連続でなければ普通にできます」
「そう、ありがとう」
質問の答えを聞いた紅葉は再び受話器を耳に当て、話を続ける。
「連続でなければ大丈夫だそうです。……はい、はい、わかりました。笹木先生と三枝には私の方から伝えておきます。それでは失礼します」
話し終えた紅葉は受話器をもとに場所に戻す。その後入部届をクリアファイルに入れて机の中になおす。
「球宮くん、来週の月曜日の昼休みが始まったら、生徒会室に来てください。一昨日言った話し合いをするので、もし忘れたりしたら入部を認めることはできません。気を付けてくださいね」
「は、はい。それでは失礼しました」
「うん、また月曜日にね」
元成はそのまま生徒玄関に向かい帰路に着いた。
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