激突! 馬ケ背高校VS大淀川高校⑭
一方、大淀川陣営ではサーブを打った海璃が褒め上げられていた。
「海璃ー、ナイスサーブ!」
「あ、絹恵先輩、いや、最後は相手のミスですからいいサーブでは……」
「もー、硬いなー、海璃のサーブで相手がミスしたようなものなんだから喜びなさいよ!」
「そこまでにしなさい絹恵、褒めるのは悪いことではないけれど、褒めすぎるのは相手にとって不快になることもあるからやめた方がいいわよ」
「え~、私は褒められるほど伸びる子だから誉めてくれたら嬉しいけど」
「……誰もがあんたみたいな子なわけ無いでしょ、バカ」
絹恵の自己自慢に率直な意見を返す夜光。その二人を皆呆れた表情で見る。
「喧嘩するほど仲がいいと聞くが、お前たちの場合喧嘩するほど馬鹿らしい、という感じだな」
菊はそう言って絹恵と夜光の間に入り言い合いをやめさせた。
「タイムアウトを挟むごとに無駄な話をするのはやめろ。私が話す時間が無くなってしまう」
その言葉を聞いた絹恵たちはすぐに菊の方へ体を向け話を聴く体制に入る。
「お前たちも気づいているだろう、馬ケ背のセッターは既にスタミナ切れだ。この試合だけを見ればただスタミナがないだけに見えるが、彼女は午前中も試合に出てその時に通常の試合の三倍近く動いていた。このタイミングでのスタミナ切れは仕方ないといえるだろう。だが、そこに同情して試合で手を抜くなよ。ただし、彼女がこのままコートに出てきたのならそこを積極的に狙っていけ。いいな?」
『はいっ!』
そのタイミングで審判の笛が鳴り選手たちがコートにも出ってくる。
ボールを持った海璃はすぐに馬ケ背コートを見て狙いを定める。
(馬ケ背の選手交代は無し。だったら狙うは一つ! だいぶ端によっているけど一年間鍛えてきた私のサーブなら狙える)
笛が鳴ると同時にボールを上げ華をめがけてサーブを打つ。
ボールは華のもとに向かって飛んでいく、がその前に両手のオーバーハンドによるレシーブで拾われてしまう。
「三枝先輩、ナイスレシーブ!」
三枝はボールを上にあげる。そのボールを待っていたかのように薫が落下地点に入り、アタックラインより後ろでトスを上げる。
三枝は着地してすぐに助走に入り、薫がトスを上げるタイミングで跳ぶ。それにつられ風夏は上に跳び楓と恵聖は横跳びでブロックに着く。
しかし、三枝にはトスが上がらなかった。トスが上がったのは伊吹の方だった。伊吹は上に跳びフリーでスパイクを打てる状態、にもかかわらずこの言葉が頭によぎる。
(なんで強く打たなきゃいけないんだろ、腕を振るなんてめっちゃだるいじゃん)
伊吹は飛んできたトスに軽く触れて前に落とす。
「っ⁉」
海璃はブロッカーがいない中正面で強打を警戒していたため、想定外のフェイントに驚き跳びつく。しかし、完全に強打警戒だったため足を動かすのが一歩遅れてしまいボールはコートに落ちる。
「海璃ドンマイ!」
「うん」
(あの十一番、今日二本のスパイクチャンスあったけど、どっちともフェイントだった。それにあの人レシーブに参加しようとしないし、助走にもあまり力を使っていない気がする。多分美郷ちゃんは気づいてないから伝えてもらわなきゃ!)
「楓ちゃん、ちょっと耳かして」
「? どうしたの海璃」
「多分だけど——」
海璃は耳打ちで楓に自身の推測と。
「……なるほど、全然気づかなかった。このことを美郷に伝えればいいんだね。ありがとう海璃」
その話を聴いた楓は一度考え込むも、海璃の推測を理解した。
そして審判の笛が鳴りネット横には紅炎が立っていた。
MB 木城海璃 百五十七・七センチ 二年 十三番 OUT
↓
MB 青島紅炎 百八十五・三センチ 三年 四番 IN
「いいサーブだったよ、海璃」
「紅炎先輩、ありがとうございます」
コートに戻った紅炎はそのまま美郷と交代した。
「美郷、海璃からの伝言」
楓は美郷の耳に口を近づけ海璃の推測を伝える。
「馬ケ背の十一番だけど多分強打の可能性は少ないらしい、今日二本のスパイクチャンスあったけど、どっちともフェイントだったようだし、レシーブに参加しようとしない、助走にもあまり力を使っていない気がするみたい。海璃は憶測って言っているけど思い返してみるとそう思えるんだ。確定はしていないけど」
そう言われた美郷はこの数分の伊吹のプレーを思い返す。
(確かに、言われてみると十一番はそこまでプレー全部に力を入れていない気がする。全然気づかなかった)
「楓、教えてくれてありがと、後で海璃にもお礼言っとかないと」
「そうだな!」
そしてお互いに自身のポジションに戻っていく。
審判の笛が鳴り、サーバーであるコウはボールを前に投げ、ジャンプフローターサーブを打つ。
「あ」
ボールに少しの回転が入ってしまったためコウの声が漏れる。
ボールはなにも変化することなく。美郷の正面に飛んでいく。
(回転がかかってるから変化は少ない。ならアンダーで)
美郷はアンダーハンドで構えレシーブする。
ボールは夜光にAパスで帰り、夜光は恵聖にトスを上げる。
恵聖はトスを見て助走に入り、馬ケ背高校のブロッカーを確認する。
(ブロックは二枚、そのうちのストレートをしめている一人は増国三枝か。でも、そこを狙えば増国三枝と言えども簡単に止められないでしょ)
恵聖は既に狙いを定めて助走に入る。ボールが来たタイミングで上に跳ぶ。
(増国三枝がいても関係ない。狙いはクロスだから)
そして腕を振りクロス方向にスパイクを打つ。
しかしボールの進行方向には壁が立ちふさがっていた。
(な、なんで、増国三枝がクロスをしめているの⁉)
ボールは三枝に叩き落され大淀川コートに落ちる。
「どうして」
恵聖の口からそうこぼれる。その言葉は三枝の耳に入り、その疑問にこう返す。
「体力のない選手がいるならそこを狙う、とても合理的だ。私だってそうする。だが、それさえ分かっていれば止めるのはたやすいことだ」
それだけ言い放ち、チームの元に戻っていく。
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