激突! 馬ケ背高校VS大淀川高校⑪
三枝は持っていたホワイトボードを取り出し皆に見せる
WS 本条恵 百七十二・一センチ 二年 六番
S 日々屋華 百七十一・三センチ 三年 二番
MB 王谷コウ 百六十七・三センチ 一年 十二番
MB 椎葉陽 百七十五・八センチ 一年 十三番
WS 増国三枝 百八十七・一センチ 三年 一番 C
WS 島浦伊吹 百六十九・八センチ 一年 十一番
Li 日車薫 百五十六・二センチ 一年 九番
「何か意見がある奴はいるか?」
一年は困惑状態だった。お互いに一セットずつ取っている中のファイナルセットで、メンバーのほとんどが一年ということに。
そのことを意見するものが一人現れる。
「あの、このセット捕られても、私たちのせいになりませんよね?」
それは椎葉陽だった。陽という明るめの名前とは裏腹に真っ黒のぼさぼさ髪で右目が隠れているのが特徴的な女子だ。
「……椎葉、お前のネガティブな性格には口出しするつもりはないが、その髪は何とかしろ。うちは髪の校則厳しいからな。それで「セットが捕られてもお前たちのせいにならないか」か? それはお前たちしだいだ。ある程度なら私と華でカバーするが、華は長く持たんだろう。まぁ、私はこのセットも落とすつもりはないがな」
そこで三枝はニヤッと笑う。
それを見た一年は一瞬恐怖を感じるも、すぐに頼もしいと思った。
「それじゃあ、行くぞ!」
『はいっ』
一方、大淀川高校陣営でも三セット目の作戦が伝えられていた。
「その可能性ってどれくらいなんですか?」
「私の見たてでは、七十パーセントといったところだろう」
菊は一人の生徒の問いに右手を顎に当て答える。
「一セット目、二セット目を見たところ午前中に出ていた四人以外はあまり試合慣れしていないようだ。おそらく午前中のウィングスパイカー三人が関係あるのだろう。彼女たちがほぼ毎回試合に出ていた、などな」
「でも、流石にセッターと増国三枝以外の選手を変えるなんてことあるんですか?」
「だから言っただろ、七十パーセントだと。この試合の後に約三十分の休憩があるとはいえ、それだけで次の試合もできるほど体力は回復しないだろう。だからこのセットで今試合に出ていた選手はベンチに下がり、ベンチの選手が試合に出てくる。そしてセッターと増国三枝はこのセットは出てくる。出ないと勝率は格段に下がるからな」
菊の説明に誰もが騒然とした。今まで彼女が試合中に長々と話すことはなかったのだ。そして、今回の話は筋が通っていた。
「わ、わかりました。それで私たちの作戦は?」
誰もが唖然とする中代表して夜光が聞く。
「いつも通り」
帰ってきた言葉は通常と変わらぬ言葉だった。
菊はそれだけ言い終えると椅子に腰を掛け、足を組んで目を瞑る。
『…………』
長い沈黙が続く。いうだけ言って椅子に座った菊に驚いてしまっていた。
「と、とにかく、菊先生の言っている可能性も踏まえて三セット目に挑むわよ。大丈夫! 何があっても私がいれば勝てるんだから!」
「よしみんな、ボクたちはいつも通りのプレーをすればいいんだから、馬ケ背高校が選手交代していたとしても気にせずにいこう!」
『はいっ!』
「……キャプテン私なんだけどな」
「仕方ないじゃない、紅炎のほうがキャプテンらしいことを言ってるんだから」
「夜光~」
落ち込む絹恵を夜光は慰める。
「ほら、あんたがいれば負けることはないんでしょ? だったらコートに戻って証明してみなさい」
「……ふふふ、いいわ、見せてあげる。私こそが最強だということを!」
「なら早くコートに戻るわよ」
「わかってるわよ」
元に戻った絹恵を見た夜光は心の中一言つぶやく。
(ちょろい)
その時の夜光の顔はいかにも悪戯を終えた悪ガキ娘の顔をしていた。それに気づくものは誰もいなかった。
選手がそれぞれポジションについたとき、大淀川は三枝のポジションに驚く。先ほどまでミドルブロッカーをしていた選手がウィングスパイカーをしているのだから当然と言えば当然だろう。
「うーわっ、三枝がウィングスパイカーとか最悪もんだよ」
「そうか? 私としては最高のポジションだがな。まぁ今回のメインは私ではないが」
紅炎の言葉は偶然にも三枝の耳に届いていた。
そしてお互いに無言のまま睨みつけあっていた。
しかしお互いに笛の合図で睨み合いをやめ試合に集中する。
華のサーブで三セット目を再開する。華はあまり体力を使わないように「入れるだけサーブ」を打つ。ボールは弱々しく大淀川コートに入っていく。
「オライ!」
美郷はボールの正面に入りレシーブをする。
夜光はボールの落下地点に入りそのまま絹恵にトスを上げる。
レフトから入ってきていた絹恵は助走の力をそのまま使い上に跳ぶ。そのタイミングに合わせてブロックについていた恵と三枝は同時のタイミングで跳ぶ。
絹恵は恵と三枝のブロックにボールが通れるほどの隙間があることに気づく。しかし、
(多分これは罠、私がそこを狙ったタイミングで増国三枝は腕を振ってブロックする。だったら——)
絹恵はそう考え視線はブロックの隙間に向けて腕を振る。
絹恵の打ったボールは視線の右側のほうに進む——かと思われた。しかし、そこにはブロック(壁)が立ちふさがっていた。
「っ!」
絹恵のスパイクはブロックに阻まれ大淀川コートに落ちる。
「今の視線の使い方はよかったよ。でも私が相手だったらあの程度の視線がフェイクだってことくらい余裕で見抜けるからな。スパイク練習ならいくらでも相手になってやろう」
三枝は笑顔でネット越しの絹恵に言い、チームメイトのところに戻っていく。
絹恵はその言葉を聞いた瞬間笑みがこぼれた。戦闘狂である彼女にとって強い相手は大好物の食べ物と一緒なのである。
「夜光、面白くなってきたわ。私にもっとトスを頂戴!」
「わかった。その代わり点数決めなさいよ」
「もちろん!」
絹恵はトスが来ると喜びながら自身のポジションに戻る。
(悪いけど利用させてもらうわよ絹恵、せっかく増国三枝の癖も分かったところだし)
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