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激突! 馬ケ背高校VS大淀川高校⑦

「華先輩、ナイスフェイント!」

「ありがとう、朋紀。ジャンジャントス上げてあげるから、ポジションに戻りなさい。朱莉が不機嫌そうよ」

 朋紀は一度朱莉を見る。

(早く戻りなさい、あんたのせいで集中が乱れて私のサーブが入らなくなるかもしれないじゃない)

 そう思いながら目で訴える朱莉。それを見た朋紀は……。

「腹でも痛いんじゃないですか?」

 と予想外のことを言う。華はその答えに苦笑いをする。

「もしそうだったら早くタイムアウトを取ったほうがいいかもしれないわね。でもうちは流れに乗っているのに、今タイムアウト捕るともったいないから早く相手にタイムアウト捕らせましょ」

「なるほど、わかりました!」

 声を出して朋紀はポジションに戻りながらあることを思う。

(あれ、だったら交代させればよかったんじゃ……)

 それを言おうとしたときに審判の笛が鳴る。

 そこで朋紀は考えるのをやめ試合に集中する。

 一方、サーバーの朱莉は心を落ち着かせようとしていた。

(もう一度集中して……ああもう朋紀のせいで集中が切れたじゃない! こうなったらコートに入らなかったときは朋紀のせいにしときましょう)

 朱莉の心は落ち着かなかった。

 そしてボールを上げてサーブを打つ。

(やばっ!)

 いつもと違った感覚を感じた朱莉はボールの起動を見ると低いのを理解した。

 ボールはそのまま進んでいく。そして白帯に当たり大淀川コートに落ちる。馬ケ背高校の四連続得点だ。

『ナイッサー!』

 ベンチからは盛り上げる声が上がるが朱莉の心は落ち着いていなかった。

(あ、危なかったー! 正直ダメかと思ったわ)

 そう思いながら朱莉はボールを受け取ると、審判の短い笛の音が鳴る。

 大淀川高校がタイムアウトを取ったのだ。

「おいおい朱莉、今のサーブ危なかったな。そんなに腹痛かったのか?」

 お互いにベンチに戻っていく途中、朋紀は朱莉に声をかける。

「あ・な・た、のせいよ! 私が集中がしていたというのに何のんきに話してるのよ。おかげで集中が切れちゃったじゃない」

「ああ、あの時の目線はそう意味だったのか!」

「ほかにどう意味があるのよ!」

「腹痛」

「……私、今あなたを殴っても許される気がしてきたわ」

 朱莉は右手に握りこぶしを作る。それを見た朋紀は……笑っていた。

「ははは、何してんだ朱莉。握りこぶしなんか作って」

 その言葉を聞いた朱莉はそのまま朋紀に殴りかかろうとした。

 しかしそれを見ごとに止める者がいた。

「まぁまぁ、落ち着いて朱莉。今は試合中なんだから、部活が終わった後にしなさい」

「秋穂……わかったわよ。部活が終わった後に殴ることにするわ」

 秋穂が朱莉を止めたことにより朱莉は握りこぶしを崩す。結果、朱莉は部活が終わった後に朋紀を殴るということで一件落着したようだ。

「いや、まずは暴力をやめさせろよ」

 朋紀はそう訴えるが誰も答えなかった。


 一方、大淀川高校ベンチでは三枝対策の話が行われていた。

「増国三枝、やっぱりやばい奴じゃん!」

「絹恵、それを言う前に水分捕ったほうがいいよ。今日は暑いから」

「あ、うん、ありがと」

 夜光はボトルをもって絹恵に渡す。

「でも絹恵の言っていたことは確かよね」

「そうですよ、いくら何でもあの人化け物と言っても過言じゃないですよ!」

「楓、いくら何でも化け物は失礼でしょ」

「でも美郷も見たでしょ、あの人のプレー」

 そう言われた美郷は二セット目の三枝のプレーを思い出す。そしてあることに気づく。

(あの人、考えてみるとあんなに走ったり飛んだりしていたのに息切れ一つしていない?)

 疑問に思った美郷はさっそく紅炎に問いただすことにした。

「紅炎先輩、先輩と同じ中学の増国さんの体力ってどれくらいあるんですか?」

「……」

 紅炎は一度押し黙る。彼女は迷っていた。三枝の弱点を帳消ししてしまうほどの圧倒的なプラス能力があることを。

「紅炎、増国三枝には何かあるの?」

 美郷の質問を聞いていた他のメンバーたちも紅炎の周りに集まっていく。

 さすがに隠し通せないと感じた紅炎は三枝の本当の恐ろしさを話す。

「ボクが一セット目の時に、三枝は元々運動神経と視力がよかった、って言ったの覚えてるよね?」

 その言葉に全員が頷く。それを確認した紅炎は話を続ける。

「でもそんなのは生まれた時からの副産物。つまり才能でしかないんだよ。でも三枝の恐ろしいところはそこじゃない。彼女の恐ろしいのは決して揺らぐことのない鋼のメンタルと圧倒的な体力なんだよ」

「あ、圧倒的な体力って、限界はあるのよね?」

 夜光は震えながら訊く。皆も心して答えを待っている。

「さぁ、どうだろ? ボクも三枝が息切れしているの見たことないからね」

 その答えに大淀川高校の空気が暗くなる。

(さすがにこの空気は不味い。ここは一度喝を入れるべきか)

 外から見ていた菊が動こうとその時。

「増国三枝が圧倒的な体力を持っている? だからどうしたのよ。別に彼女一人がすごくても他の選手は彼女ほどでは無いでしょ! だったら簡単じゃない。増国三枝は無視して他の選手に気を付ければいいのよ」

「絹恵の言っていることは正しいよ、向こうのチームは三枝に頼りっきりのチーム。でもバレーボールはチーム戦。強い選手が一人いるから絶対に強いなんてことは無いよ」

「絹恵、紅炎!」

 絹恵と紅炎の言葉に大淀川高校に明るさが戻ってくる。

「それに、大淀川には桐山絹恵という最高の選手がいるんだし増国三枝なんて気にする必要ないわよ」

「よしみんな、ボクの作戦通りに動いてくれよ」

『はいっ』

「え、作戦ってなに?」

「よし、声出していこう!」

『はいっ』

「え、ちょ、待ってー!」

 タイムアウト捕ったときとは全く違う雰囲気で大淀川はコートに戻っていく。


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