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激突! 馬ケ背高校VS大淀川高校②

朱莉はその場でボールを軽く前に出し、小さくジャンプしてフローターサーブを打つ。

ボールは恵聖と美郷の間に飛んでいく。

「オライ!」

 美郷は声を出してすぐさまボールと落下地点の間に入る。

ボールは美郷のレシーブで完全に勢いを殺され夜光の頭上に返される。

夜光は誰にあげるかを考えるが、それを遮るかのように声がかけられる。

「夜光、ボクにトスを頂戴!」

 紅炎だ。紅炎は美郷がレシーブでボールを上げる前から助走距離を確保していた。つまり、今の紅炎はいつでもスパイクに入れる状況だった。

(ここは既に準備のできている紅炎に——)

 夜光が紅炎にあげようと決めた時だった。

「ちょっと、一番最初はキャプテンである私が決めるわ」

 絹恵がボールを要求したのだ。

(あ~、ここで絹恵にあげなかったら後で面倒くさいんだろうな)

 夜光は再び考える。そしてその場から一歩も動かずにトスを上げる。

 そのトスは最初にボールを呼んだ紅炎でも、その後にボールを呼んだ絹恵でも、もう一人の前衛である楓でもない人物にあげられたトス。

 後衛にいたもう一人にWSである恵聖はいち早く理解し、助走に入りアタックラインの後ろで前に跳ぶ。

 そして腕を振りボールを打つ。バックアタックだ。

 試合のしょっぱなからバックアタックを予想していなかった馬ケ背の前衛は、その攻撃に一歩反応が遅れる。

 しかし三枝半歩で反応の遅れを取り戻し右の手のひらに恵聖の打ったボールを当て勢いを弱める。

「ワンタッチ!」

 三枝の手のひらに当たったボールはコートの外に飛んでいく。

 薫はすぐにボールを追い落ちそうになるところでフライングレシーブをする。

 薫のあげたボールは馬ケ背のコートに戻り、ボールの落下地点には朱莉がトスの体制で待ち構える。

 ボールが落ちてきたタイミングで朋紀が軽く助走を開始する。

 朱莉は両手でしっかりボールを支えトスを上げる。

 そのトスは少し低かったが朋紀は既に走り出しており、ボールが朋紀を超えたところで朋紀も跳ぶ。それに合わせてブロックについていた楓と紅炎も跳ぶ。

 後ろからの打ちづらいボールを朋紀は狙いを定めて腕を振る。朋紀が狙ったのは楓の腕の横だ。

 朋紀は腕を振りボールを打つ。

 ボールは楓の左腕の左半分にあたり軌道をずらして大淀川コートのサイドライン外に落ちる。

 ブロックアウトだ。

「よっしゃー!」

 朋紀は声をあげ右手を上に突き出す。

「いいスパイクだった。次も決めてくれ」

「はいっ」

 三枝はスパイクを決めた朋紀に激励の言葉を送り朋紀は元気な返事で返す。

「すみません!」

 ブロックアウトを取られた楓は、止められずに点を決められたことに謝礼する。

「気にしなくていいよ、決められた分はキャプテンであるこの私が取り返してあげるから! それより問題なのはトスが私に上がらなかったことだし」

絹恵は楓に励ましの言葉を送り、自分にトスを上げなかった夜光を見る。

「絹恵と紅炎が最初から打つ気満々だったおかげで相手のブロックも前衛の誰かが打つと考えると思って恵聖にあげたの。まさか跳びつくとは思ってなかったわ」

「あの子の運動神経はボクが知っている中では断トツでトップだね」

「まじか」

 大淀川の選手たちは同時に三枝を見る。

 その視線に気づいた三枝は小さく笑い一気に闘志を燃やす。

『ッ⁉』

 紅炎以外の全員が少し身を引く。三枝の闘志は大淀川だけでなく馬ケ背の選手にも伝わっていた。

「ははは、三枝は相変わらずのバレー好きだね。最近初戦敗退って聞いて、その闘志はすでに消沈したのかと思ったけど、まだ消えてなかった。それでこそ叩き潰しがいがあるよ」

「はっ、できるものならやってみるといい。まぁ私が先に叩き潰してしまうかもしれないがな。そうなっても泣くなよ?」

「それはこっちのセリフ。ボクたちがストレートで勝っても泣かないでよ」

「やれるものならやってみろ」

 三枝と紅炎、二人はお互いに気迫を出し合いながら言い合っている。その気迫にやられ二人の言い合いを止める者は選手の中には現れない。そう選手の中には。

「増国さん今は試合中ですよ、いったん落ち着きなさい」

「お前もだ。同じ中学でプレーしていたかは知らんが今は試合に集中しろ。次やったら交代させるぞ」

「分かりました」

「了解しました」

 三枝と紅炎はお互いの教師に言われ返事してチームメイトのもとに戻る。

「三枝」

「ああ、すまない。少し迷惑をかけてしまったみたいだな」

「気にしないで。今は試合に集中。それだけを守てくれればいいから」

「分かった」

 三枝はチームメイトで唯一の同年代である華に叱られた。

 同時に紅炎も三枝とは違う形で叱られている。

「紅炎、なんで叩き潰すなんて言ってんのよ」

「そうよ、相手チームに失礼で——」

「ああいうのはキャプテンであるこの私が言うべきでしょ!」

「絹恵⁉」

「何よあのかっこいいセリフ。『その闘志はすでに消沈したのかと思ったけど、まだ消えてなかった』だの、『それでこそ叩き潰しがいがあるよ』だの。キャプテンでもない紅炎が言ってずるくない⁉」

「絹恵! あなたはキャプテンなんだから相手を挑発すること言ったらだめよ‼ 紅炎も中学のチームメイトが相手だからって挑発するようなこと言ってはダメよ!」

「ごめん夜光。さっきの絹恵の言葉を聴いたらボクがどれだけ恥ずかしいことを言っていたのか理解したよ。今度からは気を付ける」

「そ、そう。分かればいいのよ。それじゃあみんな、試合を再開するから自分のポジションに戻りなさい」

 夜光の合図で大淀川の選手はぞれぞれのポジションに戻っていく。馬ケ背の選手は既にポジションに戻っていた。


読んでくださってありがとうございます。

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