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バレー嫌いの俺が、女子バレー部のコーチします!  作者: 桝田光汰朗
プロローグ
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プロローグ

『ここで決着! 女子日本代表、惜しくも勝利をつかむことはできませんでした。』

 学校に行く途中に床屋のテレビが見えた。

 テレビには昨日のバレーボールの試合が再放送されており、負けたことで悔しがっている日本代表の選手が映っていた。中には涙を流している選手もいた。

『日本代表、メダルまであと一歩及びませんでした。ファイナルセットまでもつれ込みましたが、中国代表の意地を見せられましたね。解説の北隅(きたすみ)さん、この結果どうみますか?』

『いや~、最後は本当に惜しかったですね。でもいい試合でしたよ。世界ランク一位の中国相手にファイナルセットまでもつれ込んだんですから誇ってもいいでしょう。今回は四位という結果に終わりましたが、この結果をどう受け止めて次に生かすかが重要になってきますね』

 解説の人はいい試合だったと言っているが俺にはそう思うことはできない。本気の試合というのは努力の結果だ。結果を残せば努力は報われ、結果を残すことができなければ努力は無駄になる。何よりバレーボールはコートにいる六人でボールをつながなければならない。一人だけ努力しても他の五人が諦めたりしたらそこで終わりだ。さっきの試合だって一人のミスで勝敗が決してしまった。

 小学生の頃は俺もバレーを純粋に楽しみ、努力もしていた。しかし、ほかのメンバーは努力することを怠り、大会のトーナメントでは一回戦で負けた。それが悔しくてチームメイトを恨んだ。努力をした自分を恨んだこともあった。それでもバレーが好きだったから努力を続けた。しかし、チームメイトが努力をすることは無く監督も緩い指導法で遊び感覚のクラブチームになっていた。そして次の大会の時に事件は起きた。初戦でいつも以上に動いた俺は次の試合の途中に、動きすぎて左足を怪我してしまう。

昔、交通事故で怪我をしたことがあるけれど、今回の怪我で長時間ハードな運動をすることができないと言われた。事実上のバレー人生の終了である。

 中学に上がってから帰宅部だったが二年の時に一つ下の妹が入学してきて、女子バレー部の顧問はバレー未経験だから監督をしてくれ、と頼まれた。

中学生では指導者になることができないため最初は断っていたが、冬になったころ女子バレー部の部長も頼みに来るようになったので仕方なくマネージャー兼監督として受けることにした。最初に部活に顔を出したとき、妹が俺のことを話していたようなので変な目で見られることは無かったが、コミュニケーションはうまくとることはできなかった。少しずつ練習に参加することでコミュニケーションをとることができ始めた。

練習は俺が考えたメニューをするようにした。部員は文句を言わずにやっていたが、元から遊び感覚で入っていた部員は退部していった。それでも本気で部活に打ち込んでいた部員は休むことなく練習をした。

しかし、中学三年の最後の大会で再び事件が起きた。

準決勝まで進んだ俺たちは三セット目まで持ち越して、あと一点で勝てるというところで部長が肉離れを起こし、急なことだったので控えの選手も準備ができておらず、相手チームにそこを狙われて逆転負けをした。部長は練習がない時間も自主トレをしていたらしく、自分が悪い、と言っていた。ほかの部員も気にしなくていいと言っていたが、部長の努力をしっかり見ていなかった俺に責任があると思った。三位決定戦は勝つことができたが、その日を最後に俺は転校した。

 その日以来、俺はバレーボールが嫌いになった。


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