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捨てられたお姫様  作者: みるみる
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6、バンデル王子との出会い


リナと男が林の中を歩いていると、前方から馬の蹄の音が聞こえてきました。‥どうやら誰かが馬にのって、こっちにやってきているようです。


「‥お父さん‥誰か来る。」


男はリナを背中に庇いながら、茂みの中へ移動して隠れました。


馬がリナ達の近くで止まり、身なりの良い男性が馬からおりて歩いて来ました。


「‥バンデル兄さん‥。」


「‥お父さん、何か言った?」


「‥‥いや。」


茂みの中で私達は息を潜めて、身なりの良い男性と馬が立ち去るのを待ちました。


馬と男性は近くの湖で休憩をとると、そのまま立ち去って行きました。


「‥行ったな。」


「‥そうだね。」


私達は、茂みから出ると再び歩き出しました。‥‥と、その時‥‥


「‥やっぱり誰かいた。」


先程の身なりの良い男性が馬に乗って、こちらをじーっと見ていました。


「‥‥。」


「あっ、もう立ち去ったと思った?残念だね。僕はこの茂みのあたりには絶対誰かいるって思って、立ち去ったふりをして様子を見てたんだ。


ん?君は‥ナターシャか、いや、ナターシャがこんな所にいる訳ないな。」



身なりの良い男性は、リナを見てナターシャという女性の名前を出しました。


ナターシャ‥‥?私に似てる?リナはその話をもっと聞きたいと思い、無意識に男の方へ身を乗り出していました。


オホン、


「‥僕達は、先を急ぐので‥これで。」


「‥ん?おじさんの声は‥思ったより若い声だな。‥それにその瞳の色は、我がトランタ王国の王族の瞳の色‥。‥二人共凄く怪しいなぁ。‥‥近くにいる騎士達を呼んじゃおうかな。」


「‥バンデル兄さん!頼むからそれはやめてくれ。全て話すから‥。」


男はそう言って、身なりの良い男に懇願しました。


「‥‥兄さん?やっぱり、お前は変身はしているが、5歳で家出したっきりお城へ帰って来なくなったラナンだな!」


「‥‥そうです。」


「‥で、そちらの女性は?」


「‥娘です。」


「‥‥えっ?ラナン、お前の娘にしては大きくないか?‥‥もしかしてお前のその変身は、自分をその子の父親に見せる為?何で?」


「‥‥。」



男二人はそのままその場に座り、話し込んでしまいました。リナは男二人の会話をじっと聞いていました。


お父さんが、本当は「ラナン」という名の、トランタ王国の末の王子だと言う事、そして身なりの良い男性が、その兄のバンデル王子だと言う事を知りました。


‥‥リナは、自分がとんでもない人達と一緒にいる事にようやく気付きました。



「ラナン、その子って姉妹がいたりする?」


「‥!」


「僕の婚約者がその子とそっくりなんだけど‥。」

 

「‥他人の空似だろ」


「ねぇ、君の名前は?何歳なの?」


バンデル王子が、リナに聞いてきました。


「‥リナです。16歳です。」


「16歳だって!?僕の婚約者と同じだ。‥こんなに似てて、しかも同じ歳‥。君、生まれはどこ?親はどうしたの?」


「‥私は赤ちゃんの頃からずっと、このトランタ王国のペンタス公爵領の教会で暮らしていました。ですが、父はすでに亡くなり、昨日家事で家もなくしました。‥途方に暮れていたところを、お父さんに声をかけてもらったのです。」


バンデル王子は、少し考えこむような仕草を見せましたが、すぐに納得したような顔をして、ラナン王子とリナに笑いかけました。


「‥うん。ラナンと僕の婚約者そっくりのリナさんが、親子のフリして旅に出るというんだね。リナさんの仕事や住処を探してると言うなら、この国で、どこか良さそうな場所を僕が紹介しようか?」


「‥‥僕がリナとこの国を出たいんだ。それと、兄さん、どうかリナの事は誰にも言わないで欲しい。‥兄さんの婚約者のナターシャ姫に似てるなんて、何かのトラブルの種になりそうで怖いんだ。」


「‥分かった。誰にも言わないと誓うよ。‥‥ところでリナさんは?君もやっぱりこの国を出たいの?」



「‥実は私の住んでいる教会の領主様に目をつけられてしまって‥‥。なので、できればこの国から出て、領主様から離れたいです。」


リナはバンデル王子に、住んでいた教会が火事になった理由を話しました。


話を聞いていたバンデル王子は頭を抱えて少し悩んだ様子を見せましたが、すぐに頭を上げてリナに向き合いました。


「‥リナさん、大変だったね。だけど、君の領地の‥‥ペンタス公爵を裁くには証拠もないし、下手に君が騒げば君は間違いなく殺されるだろう。」


「‥‥でしょうね。現に私は追われる身なのです。ですから、こうして逃げているのです。それを‥バンデル王子に引き留められて、今こうして足止めをされてしまってる訳です。」


「‥ごめんね。‥‥それにしても、可哀想な君に僕がしてあげられる事が何もない。」


バンデル王子はそう言うと、身につけていた小刀や装飾具をラナン王子に渡しました。


「‥ラナン、餞別だよ。二人ともどうか無事に!」


バンデル王子は私達にそう言うと、馬に乗り颯爽と去って行きました。二人は近くの茂みに隠れて、続いてやってきた騎士達の群れも通り過ぎた後に、ゆっくりと林道に戻りました。そして、その日のうちにトランタ王国を出たのでした。


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