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「無能はいらない」と言われたから絶縁してやった 〜最強の四天王に育てられた俺は、冒険者となり無双する〜【書籍化】  作者: 鬱沢色素
本編

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98/130

98・作戦の裏側

書籍版2巻が本日発売となります。よろしくお願いいたします。


【SIDE クレア】



「どうして私たちが、人間共の手助けをせねばならぬのだ」


 王城。

 カミラが不機嫌そうに、クレアに文句を言った。


「まあそう言うな。これもブラッドが魔王城に帰還するためのものだ。ブラッドの儂らに対する評価は上げておいて、損はないじゃろう?」

「それはそうだが……」


 まだカミラは納得していない。

 クレアはそんな彼女の態度に溜め息を吐きつつ、こう続けた。


「……なんにせよ、この事件の真相を突き止めなければならぬ。魔王様はなにか察しが付いていたようじゃからな。そのためにはあのユリアーナだとかいう女騎士に話を聞くのが早いが──弟を人質に取られては、なにも喋れぬじゃろう。まさかお主は手ぶらのまま、魔王城に帰るつもりじゃったのか?」

「……気に食わん」

「なにがじゃだ?」

「お前が正論を吐くことだ! 賢そうなことばっか言いやがって。だから私はお前は嫌いなんだ!」


 ぷいっと視線を逸らしてしまうカミラ。


「え、えーっと……喧嘩はやめて?」


 救出し終えたばかりの少年──ユリアーナの弟が、二人の間でおろおろとする。


(こんな小さな子どもを困らせるとはな……)


 機嫌を完全に悪くしてしまったカミラを見て、クレアは本日何度目かになるのかも分からない溜め息を吐くのであった。



 ──少し時は遡る。



 エドラが転移石を使い、王城の中に転移してすぐのことだ。


「よし。儂らも城に向かうぞ」


 クレアはカミラを一瞥もせず、城に向かって一歩踏み出した。


「ん……? 蒼天の姫とやらの救出は、あの少女に任せるんじゃなかったのか?」

「無論、その通りじゃ。しかしそれだけでは済まぬ。まずはあの女騎士の弟を助け出さねば、話を聴けぬからな」

「話……?」


 未だにカミラはピンときていない様子。


(どうして儂がこんなバカ相手に、丁寧に説明してやらんといかんのじゃ。本当にこのバカは四天王なのか? 面倒臭いし、いっそ儂一人で向かおうか?)


 と思わないでもないクレアであったが、そうもいかない。


 彼女はカミラのバカさ加減に頭痛を抑えながら、戦いの最中に覗いたユリアーナの思考を話した。

 ユリアーナの頭の中には、彼女自身の行動を束縛する魔法がかけられている。

 クレアはなんとかそれを解除しようとしたが……ダメ。混戦の最中、さすがの彼女とてそれをするのは至難の業であった。


 それでもユリアーナに近付こうとしたが──そうしている間に蒼天の姫アリエルと共に、城に転移してしまったということだった。


「そこで儂はエドラに転移石を使わせ、蒼天の姫救出に向かわせたわけじゃな」


 そもそも──クレアはエドラのことを、これっぽっちも信頼していなかった。

 クレア一人で転移石を使い、蒼天の姫救出に向かってもよかった。


 しかしここで気に掛かることがある。ユリアーナの弟の存在だ。


「どうやらヤツは弟を人質に取られているらしい。これがいる限り、たとえユリアーナを束縛している魔法を解除したとしても、真相を簡単には喋ってくれぬじゃろう」


 ゆえにユリアーナにかけられている魔法を解き、蒼天の姫を助け出すと同時、彼女の弟も救出しなければならなかった。

 これはなかなか骨が折れる。


「どちらにせよ、二手に別れなければならなかった」


 とはいえ、カミラは城の結界を破ることが出来ない。

 それが出来るのは、ここでただ一人──魔王軍《魔法》の最強格クレアだけだった。


「ゆえにあの少女──エドラに蒼天の姫を任せ、儂らはこれから城の結界を破りユリアーナの弟を救出するというわけじゃな。どうじゃ、理解出来たか」

「分からん」


 クレアが要点をかいつまんで説明してやったというのに、カミラはきっぱりとそう言い放った。

 しかもなんか偉そうである。


(よし、やっぱり殺そう)


 と一瞬、カミラの対する殺意が爆発しそうになるが……クレアは寸前のところでそれをぐっと我慢した。


「まあ事情は分からんが、とにかく。今からその弟を助ければいいんだろ? 単純な話ではないか」


 ニカッと笑みを浮かべるカミラ。


 何故、クレアたちがユリアーナの弟救出に回ったのかというと、エドラではその捜索が困難だと考えたからだ。

 それにユリアーナの頭の中を除いた際、その弟の居場所について大体見当が付いた。それをエドラに説明し、彼女が理解する時間を惜しんだのだ。


 ──ということもカミラの説明しようとしたが、


(やめておこう。どうせこやつでは理解出来ん。儂だけが分かっておけばいいか……)


 頭を抑え頭痛に耐えるクレアを見て、カミラは首をひねった。



 ──そして二人は城の内部に忍び込み、ユリアーナの弟の元まで首尾よく辿り着いわけだ。



 クレアはユリアーナの弟に視線をやって、こう口を動かす。


「さて……ブラッドも戻ってきたことだし、さっさと合流しよう。こんなことをしている場合じゃない」

「それをお主が言うか!? ──じゃが、まあその通りじゃ。予想はしていたが、ブラッドが戻ってきたのは吉報じゃ。すぐに──」


 とクレアはユリアーナの弟の手を引っ張り、ブラッドたちがいるらしい地下牢へと足を進めようとした時であった。



「どこに行く」



 禍々しい声。

 クレアとカミラが咄嗟に振り返ると──そこには不気味な男が、彼女たちを虚空の眼差しで見つめていたのだ。

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