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9・受付に摘んだ薬草を提出する

 俺達はすぐにノワールの冒険者ギルドに戻り、受付嬢のシエラさんに話しかけた。


「あっ、ブリスさん。それにアリエルさんも。お二人とも一緒だなんて……ふふふ、仲が良いんですね」


 なにを勘違いしているんだろうか、シエラさんが小さく笑った。


「シエラさん。薬草摘み、終わりました」

「もう終わったんですか!? 早いですね。さすがブリスさん……薬草摘みも一流なんですね」

「いや……それほどでも」


 そんなに早く終わった実感もない。道草もくったしな。この程度で早いと言われるとは……他の連中は薬草摘みにどれだけ時間をかけるんだ?


「これです」


 魔法で収納していた薬草計三十束を、受付テーブルに置く。


「あれ……? ブリスさん、どこから薬草を出したんですか? なにもないところから現れたように見えましたが……」

「収納魔法です」

「ははは、ブリスさん。面白い冗談ですね。でも少しベタすぎます。よそ見している人の前になにかを出して『収納魔法で出したのさ。ははは!』っていう冗談は、魔法使いの間でよく使われていますからね」


 別に冗談でもないんだが……。

 魔法使い達の間で冗談として使われる収納魔法とは一体……。


「それにしてもえーっと……二十九……じゃなくて三十束もよく集めましたね。依頼では五束だったのに」

「薬草摘みに夢中になってたら、いつの間にかそんな量になってました」

「ふうん? なるほど。でもブリスさん、いいんですか?」

「なにがですか?」

「毒草が混じっていたら、違約金が発生しますよ」


 なんだと?


「昔、粗悪な薬草だったり毒草を持ち込んだ冒険者の方が多発しましてね。そうなったら、ギルドとしても仕分けするのが大変なので、こういう制度が生まれたんです」

「そうなんですか。けど、まあ問題ありません。ちゃんと仕分けしたので」

「またまた〜。いくらブリスさんでもこんな短期間で、薬草を三十束摘んで……しかも毒草と仕分けするなんて、不可能ですよ。今だったら引き返せます。本当にいいんですか?」

「大丈夫ですから」


 薬草と毒草に仕分けることは、鑑定魔法を使えばすぐに済むはずだ。

 それなのに、どうしてシエラさんはこんなにもったいつけるんだろう?


「……分かりました。まあ依頼達成金で違約金を相殺そうさい出来るでしょう。少々お待ちくださいね」


 とシエラさんは言って、俺の持ってきた薬草を受付の奥に持っていった。


 なんか俺が間違っていること前提で話を進められたな。


「どこに持っていくんだ?」

「ちゃんと薬草なのか見分けるためでしょう」


 アリエルは「なにをそんな当たり前なことを」と言わんばかりの表情で口にした。


「別にここでやったらいいじゃないか」

「……? 器具がないじゃないですか。薬草と毒草を仕分けるための」

「……念のために聞きたいんだが、薬草と毒草を仕分けるには、一般的にどういう方法が使われているんだ?」

魔水式ますいしきがよく使われていますね」


 アリエルに問いかけると、彼女は丁寧に説明を始めた。


「魔水という特殊な水に薬草をつけるんですよ。それで時間が少し経過したら、魔水の色が変わります。緑色だったら薬草、赤色だったら毒草です。これが現在、薬草と毒草を仕分けるのに、最も簡単で手軽だと言われている方法ですね」

「それじゃあ時間がかかるじゃないか。面倒臭いし」

「そうですね。時間もかかりますし、まあまあ面倒臭いです。しかし仕方ありません。間違って毒草なんか納品したら、大変なことになりますから」

「……これも念のために聞くんだが、鑑定魔法を使おうという発想には至らないのか?」

「鑑定魔法? あんなもの、誰もが使えるものではありませんよ。上位の魔法使いしか使えないとされています。そんな魔法使いをいちいち呼ぶのも、お金がかかりますし手間ですからね。そうなったら魔水式の方がいいでしょう?」

「そ、そうだな」


 やはりか。

 シエラさんとアリエルの態度を見ていてなんとなく察しが付いていたが、どうやら鑑定魔法は一般的ではなかったらしい。


「まさかブリス、鑑定魔法を使って薬草と毒草を仕分けた……とでも言うつもりではありませんよね?」

「ま、まさか〜。ちゃんと 魔水式? ってので仕分けたぞ」

「ふふふ、ですよねー。鑑定魔法使えないですよねー。そういうことにしておいてあげます」


 アリエルは含みを持たせた笑いを顔に浮かべた。


 咄嗟に口から嘘が出てしまったが……俺が鑑定魔法を使えることは、薄々感づかれているようだ。

 女というものは恐ろしい。


 そんな感じでアリエルと会話をしていると、



「お、お待たせしました!」



 しばらくしてシエラさんが受付テーブルに戻ってきた。


「さ、三十束、なんと全て薬草でした! おめでとうございます!」

「どういたしまして」


 だから最初からそう言っているというのに……。


「疑ってすみませんでした! 新人冒険者が間違って毒草を納品するのは、ギルドあるあるでして……ブリスさんもいきなりその洗礼を浴びたものだと、私思ってました!」

「そ、そうですか」

「まさかこれだけ短時間……しかも五束じゃなくて、三十束もあって全部薬草だと思いませんでしたので……ブリスさんには失礼なことを言ってしまいました。すみません……」


 しゅんとシエラさんが肩を落とす。


「シエラさん、気にしなくていいですよ。俺は良いですから」

「あ、ありがとうございます。そうおっしゃっていただけるなんて、ブリスさんは優しいですね」


 シエラさんが気を持ち直す。


「ああ、そうそう。シエラさん、納品するのはこれだけじゃないんですが……」

「へ?」

「アリエルと一緒に魔物も倒しました。その魔物も換金したいんですが、大丈夫ですか?」

「ふふふ、アリエルさんのことを呼び捨てにするなんて、仲睦むつまじいですね……それで魔物というのは?」


 ようやく話の本題だ。

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