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「無能はいらない」と言われたから絶縁してやった 〜最強の四天王に育てられた俺は、冒険者となり無双する〜【書籍化】  作者: 鬱沢色素
本編

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72・共闘

 王都で大規模な《大騒動スタンピード》が起こっている。


 本来ならば有り得ないことであった。

 何故なら王都は王国の中心。王国でも選りすぐりの戦士や魔法使いが集まり、防衛面でも他の街や村とは比にならない。

 それなのに、どうして王都にいる人達が対処出来る容量キャパを超え、《大騒動》が起こってしまったというのか。


「取りあえず、一時休戦じゃ」


 クレアねえはステージ上に張った結界魔法を解く。


「ブリス!」


 それと同時、アリエルとエドラがステージに上がってきた。


「ブリス、これは一体どういうことですか? この人は誰ですか? お姉さんと言っていましたが……それに先ほどの魔物のような鳴き声は」

「話は後だ」


 俺はアリエルの両肩を持って、落ち着かせるように言う。


「今、王都で《大騒動》が起こっている」

「な、なんてこと!」

「それを片付けなければならない」


 俺は言って、今度はクレア姉を見る。


「クレア姉。姉さんも《大騒動》をおさめるのを手伝ってくれるか?」

「ふん。どうして儂がお主の言うことを聞かねばならぬのだ?」


 とクレア姉は鼻で笑う。


 相変わらず自分勝手なヤツだ。俺には自由を与えてくれないというのに、自分は傍若無人ぼうじゃくぶじんな態度を取る。


 だが。


「人間の集落など、どうなろうが儂には関係ない。じゃが魔物が好き勝手に暴れ回っているのも、それはそれでしゃくじゃ。人間を殺していいのは、儂等魔王軍のみなのだ。それに」


 クレア姉は俺の顔を見て、不敵な笑みを浮かべた。


「ここでブラッドの好感度を上げておくのも、それはそれで好手じゃろう。なあ、ブラッドよ。もしこの《大騒動》をおさめることが出来たら、魔王様と話だけでもしてくれぬか?」

「……分かった。確かに、お前等はともかく魔王になにも言わず出て行ったのは悪かった。約束しよう」

「今言った言葉、忘れるなよ」


 そう言い残し、クレア姉は浮遊魔法を使って空へと向かっていった。


 本当は気まずいし、魔王とすら顔を合わせたくない。

 しかし背に腹は代えてられない。

 この戦況で、クレア姉の戦力は必要不可欠なのだ。


「それにしても……あいつの辞書にはチームワークって言葉はないのか。まあ好き勝手に暴れてくれるだけでも、大分魔物の数は減らせると思うが」


 遙か上空では爆発や雷撃が発生している。

 おそらく空の魔物を、クレア姉は狩ってくれているのだろう。


 見上げていると。


「あの……ブリス。あの方となにをお話していたんでしょうか。()()なんて言葉も出てきましたが……」

「言っただろう。話は後だ。これが終わったら()()話してやる」

「絶対ですよ?」


 とアリエルは俺に釘を刺した。


 さて、切り替えよう。


「どうして《大騒動》が起こっているのかは分からない。しかしこのままでは、騎士団やこの街にいる冒険者では対処しきれないだろう」


 ただでさえ武闘大会のせいで、王都は人が多い。生半可にやってしまえば、多数の犠牲者が出てしまうだろう。


「だが……これは推測であるが、紅色の魔石が絡んでいる可能性が高い」

「べ、紅色の魔石ですか?」

「そうだ」


 普通は《大騒動》なんて起こらないのに、今王都で起こっているこの状況。

 魔物達もいつもより活性化している気がする。それに普段は徒党を組まないヤツ等なのに、これだけ一斉に襲撃をかけるのは不自然だった。

 先日のノワールでの一件によく似ている。


「まだ推測の域に過ぎないがな。となると、魔法研究所に預けている紅色の魔石が気になる」

「ということは……今から私達で研究所に向かうの?」


 今度はエドラが問いかける。


 俺は首を縦に動かして。


「ああ。だが、三人もいらない。ここは俺一人で魔法研究所に向かいたいと思う。アリエルとエドラは王都内にいる魔物の討伐をお願いしたい」

「ブリス一人で大丈夫なのでしょうか?」

「問題ない。あまり悠長に話し合っている時間もない。俺は早速研究所に向か……」


 と足を動かそうとした時であった。


「待って」


 エドラが俺の服の裾を引っ張る。


「私も連れてって」

「言っただろ? 俺一人で十分だって」

「……私も、どうしても研究所に行きたい」


 エドラがばっと顔を上げ、俺を見つめる。

 瞳には強い意志の炎が宿っていた。


 ふう、やれやれ。

 こうなってしまえば、彼女を説得するのは難しそうだ。


「しかしだな……」


 別にエドラを連れて行くこと自体は問題ない。

 だがその場合、アリエルを一人にさせてしまうのだ。


 いくらアリエルであっても、さすがに一人にするのは抵抗がある。なにか不測の事態が起こらないとも限らない。


 誰か……アリエルと一緒に剣を振るってくれる人がいればいいんだが……。


 そう頭を悩ませていた時であった。


「ボクだったらどうかな?」


 不意に声が聞こえる。

 声のする方向を振り向くと、そこには先ほど俺と戦った女騎士ユリアーナの姿があった。


「さっきの君と謎の女性の話も聞かせてもらったよ。色々と問い詰めたいところもあるが、今はそんな場合じゃないようだね」

「そう言ってくれると助かる。だが、ユリアーナは騎士団長だろう? 自分の騎士を指揮しなくて大丈夫なのか?」

「もちろんさせてもらうよ。騎士団と一緒に街の魔物達を片付けたいと思う。だが……ボクとしても後一つ、大きな戦力のコマが欲しい。そこでアリエル、君に一時的に騎士団に加わって一緒に戦ってもらいたいんだけど、どうかな?」


 ユリアーナはアリエルに問う。


「ブリス」

「ああ」


 アリエルが答えを求めるかのように俺の顔を見てきたので、黙って頷いた。


 願ったり叶ったりの話だ。


 ユリアーナ、そして王都の騎士団が一緒なら彼女を安心して任せることが出来る。

 ユリアーナとは先ほど剣を交わして、信頼の出来る相手だと分かったからな。


 時に戦いは、ただ言葉を交わすより深く相手のことを知ることが出来る。


「じゃあアリエル、任せたぞ。俺とエドラは研究所に向かう」

「気をつけてくださいね」

「もちろんだ。行くぞ、エドラ」

「うん」


 嫌な予感がする。

 この《大騒動》においては、襲来したのが魔物()()ではない気がするのだ。


「出来れば予感が外れて欲しいところだが……」


 俺はそう呟き、研究所へと急いだ。

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