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「無能はいらない」と言われたから絶縁してやった 〜最強の四天王に育てられた俺は、冒険者となり無双する〜【書籍化】  作者: 鬱沢色素
本編

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60/130

60・卑怯な盗賊であったが、全てお見通しだ

「くっ……!」


 盗賊の頭が後ずさりする。


「た、助けてくれっ! オレは命令されていただけなんだ! お前等に恨みなんてない!」


 この期に及んで命乞いか。往生際の悪いヤツだ。


 どうしたものかと思っていると、アリエルが剣を鞘におさめ、彼に一歩近付いた。


「命令されていただけ? ということは、あなたのバッグには誰かいるということですわね」

「そ、それは……」

「言いなさい。言えば、見逃してあげてもいいですわよ?」


 アリエルはそうは口で言っているものの、決して表情は変えない。厳しいままだ。


「オレが命令させれていたのは……」

「されていたのは?」


 さらにアリエルが一歩ずつ、頭ににじり寄ってくる。

 やがて盗賊の頭が手を伸ばせば、アリエルに届くであろう距離まで近付いた。


 その瞬間、頭の目がギラリと輝き、



「……言うわけねえだろうが!」



 胸元から短刀を取り出して、彼女に斬りかかったのだ。


あわれ」


 俺が行動するよりも早く、エドラがファイアーランスを男に放つ。

 これだけ素早く発動出来るということは、あらかじめ魔法を展開していたのだろう。


「あああああああ!」


 炎の槍は頭に命中。

 そして彼の体が炎で包まれ、やがて地面に倒れ伏せたところで消えた。


「エドラ。いけないですわよ。もう少し、粘ろうと思っていましたから」

「ごめん。アリエルが危険だと思っていたから」

「まあ……あれ以上喋るような気配もなかったでしたから、どちらにせよ他の者と同じ末路を辿ってもらうつもりでしたが……」


 見ると既にアリエルも剣を抜いていた。

 こうなることを見越していたということか。

 二人とも、さすがはSランクとAランク冒険者だ。

 相手が降参してもその嘘を見破り、警戒を怠らなかった。


「全員、気を失ってしまったみたいだな」


 これでは話を聞き出そうにも聞き出せない。


「どうしましょうか?」

「取りあえず、モーガンさんに連絡してみる。さほどノワールから距離も離れていないからな。まだノワール冒険者ギルドの管轄内だと思う」


 俺は通信用の魔石を取り出し、モーガンさんと繋いだ。


「モーガンさん」

『ん……? どうしたんだ。もしや緊急事態か』

「はい」



 俺は道の途中で盗賊らしき男達に出会ったこと、そして今戦いが終わったことを説明した。



『そんなことがあったとはな。もう少し詳しく聞きたい。その盗賊共の特徴を言ってくれるか?』

「えーっと……」


 倒した盗賊共の特徴を言う。


 するとモーガンさんは驚いた様子で。


『驚いた。もしかしたら、それは指名手配中の『トカゲの尻尾盗賊団』だったかもしれない。なかなか逃げるのが上手い連中でな。こちらとしても、捕まえるのに手間取っていたんだ』

「そうだったんですか」


 有名な盗賊団だったらしい。


「なにやら魔石を狙っていたみたいですが?」

『魔石っていうのは……紅色の魔石のことか?』

「おそらく」

『紅色の魔石は無事なのか……ってお前に聞くのも変な話か。無事だからこそ、こうやって連絡してきているんだろうしな』


 モーガンさんが息を吐く音が聞こえた。


『分かった。報告ありがとう。すぐに近くにいる冒険者連中を使いに寄越す。そいつらにトカゲの尻尾共は引き渡してもらってもいいか?』

「分かりました。後……誰かに命令されていたみたいなんですが……」

『承知した。それについても、()()()()と話を聞かせてもらおうと思う』


 モーガンさんの物言いに、何故だか鳥肌が立った。

 今からこいつ等はどんな目に遭わされるんだろうな。想像するだけで怖くなってくるが、俺の知ったこっちゃない。


 その後、馬が逃げていってしまったことを話し、さらにはなにか盗賊から情報を引き出し次第、連絡をくれるということで一旦通信を切った。


「王都への到着は少し遅れそうですわね」

「なあに、日数にはかなり余裕があるんだしな。ゆっくり行けばいい。馬車についても、近くの村で補給出来ることになった」

「それは良かったですわ。それにしても……手綱を引きちぎって逃走するなんて、とんでもない力ですわね。火事場の馬鹿力というヤツでしょうか」

「さ、さあな」


 まあ……アリエル達に内緒で、馬には軽めの【身体強化】の支援魔法もかけていたからな。

 それが原因の一つにもなるだろう。無事でいてくれるといいが……まあどこかの人里にでも辿り着いてくれるだろう。


「取りあえず、こいつらを縛っておくか」


 俺達は気絶している盗賊共を、縄できつく拘束した。

 縄には魔法もかけており、ちょっとやそっとの力じゃ解けない仕組みにしておいた。

 こいつ等程度の力で、逃げ出すことは不可能であろう。


 そうこうしていたら、モーガンさんが寄越よこしてくれた使いの冒険者達が現れた。 


「トカゲの尻尾盗賊団を、こんなにあっさり倒すなんて……! かなり戦闘力も高い集団だと聞いていたが?」


 十数人の冒険者達が、唖然とした表情をする。


「そんなことはない。弱かったぞ」

「さすがはSランク冒険者……お前のことは、ギルドから聞いている。オレもいつかはお前みたいな男になりたいもんだぜ」

「ちょっと〜、あんたがなれるわけないでしょ〜」

「うるせえ。夢はでっかくだ」


 なにやら男と女の冒険者が言い争っているようであるが、仲が良いように見えた。


 こういう大人数の冒険者パーティーもいいもんだな……

 なんだかんだで、アリエルとエドラとは正式にはパーティーを組んでいない。この件が落ち着いたら打ち明けてみるのもいいかもしれない。


「じゃあ俺達はこの辺で」

「うむ。こいつ等はオレ達が責任を持って預かる」


 そう言って、俺達はその場を後にした。


「思わぬところで道草を食ってしまいましたわね」

「あいつ等、迷惑」


 道を歩きながら、アリエルとエドラが忌々しげそうに言う。

 しかし疲れた様子ではない。あの程度の戦いでは疲労など一切感じないのだろう。


「あいつ等から有益な情報が手に入れればいいんだが……」

「あまり期待出来そうにないですわね。誰があの人達に命令していたのかは知りませんが、大事な情報を渡していないでしょう」

「違いないな」


 そこまでそいつ等もバカではないということだろう。

 それにしても……誰があいつ等に依頼したのだろうか。ディルクのいた教団とやらか?


 まあ今考えても仕方がないか。


 俺達は気持ちを切り替えて、王都への旅路を歩くのであった。

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