表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「無能はいらない」と言われたから絶縁してやった 〜最強の四天王に育てられた俺は、冒険者となり無双する〜【書籍化】  作者: 鬱沢色素
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/130

57・休暇

「これを王都の魔法研究所まで持って行って欲しい」


 そう行って、モーガンさんが手渡してきたのは例の紅色の魔石であった。


「ノワールでも研究していたんじゃ?」

「うむ……そのことなんだが、ベティが音を上げてしまってな。どうやらベティの持っている道具では、これ以上紅色の魔石を調べることが難しいらしい」


 ベティ……確か古代竜エンシェントドラゴンの検分に立ち会っていた獣人族の女の子だったか。


「ベティは申し訳なさそうな顔をしていたぞ。まあノワールで、彼女一人に任せるのは正直手に余ると思っていたしな。仕方ない

 だが、王都の研究所にだったら最高の設備と人材が揃っている。そこならきっと紅色の魔石も解明してくれるはずだ」

「分かりました」


 紅色の魔石は貴重なものなのだ。途中で紛失しないように気をつけなければ……その貴重さゆえ、盗まれる可能性もあるんだし。

 そう考えたら、SランクとAランクがいる俺達に魔石を預けるのは適任かもしれない。


「話はそれだけですか?」

「ん……まあそうなんだが、さらにもう一つ。お前達に渡しておきたいものがある。シエラ」

「は、はい!」


 モーガンさんに呼ばれ、シエラさんがテーブルの下からなにやら袋を取り出してきた。

 彼女はどっさりと袋をテーブルの上に置き、こう口を開いた。


「今回、任務として王都に行ってもらいます!

 あらためて繰り返しますが、依頼内容は『王国一武闘大会にノワール代表として出場すること』『紅色の魔石を王都の研究所まで送り届けること』です。

 どちらも大事な任務ですから、頑張ってくださいね」

「もちろんですよ」

「依頼なので、報酬金も用意しています。今回はあなた達を信頼して、報酬金を前払いしたいと思います。どうかご査収くださいませ」


 前払い? 

 これまた珍しい。こんなことは初めてだった。


 まあ今回は王都まで行かなければならないからな。

 旅費の問題もあるし、それなら先にまとめて払っておこう……という魂胆か?


 疑問を覚えつつも、俺は袋の中に手を付ける。

 すると……。


「こ、こんなに!?」


 中には大量の銀貨や金貨が入っていた。

 パッと見ただけで、かなりの金額だということが分かる。


「本当に貰っていいんですか!?」

「もちろんです。三人には大事な任務を果たしてもらうので!」

「ですけど……」


 正直気が引ける。

 確かに重要な任務であることには間違いないが、難易度としては今までのものと比べると数段落ちる。


 王都に行くだけだからな。

 王国一武闘大会についても、極論を言えば『出場するだけ』で達成なので、そこまで負担にはならないと思う。

 それなのに……これだけ報酬金を貰うとは。


「アリエルとエドラはどう思う?」

「そうですわね……わたくしも多いと思います。それだけ評価してくれるのは嬉しいことですが」

「不自然」


 やはりアリエルとエドラも、報酬金に関して違和感を抱いているようであった。


「やっぱりシエラさん。こんなに貰えないですよ。なんか怖いですし……」


 タダより怖いものはないという言葉もあるしな。


「で、でも……」

「ああ! もう! 察しの悪い連中だな」


 頭を掻きながら、モーガンさんが面倒臭そうにシエラさんの前に出る。


「確かに依頼難度としては、今までお前等に任せていたものと比べると低めだ。報酬金と釣り合わないとは思う。だが今回は……ずばり言うと、この依頼はお前達への休暇ってことだ」

「休暇……ですか?」

「そうだ。今までお前達は働きっぱなしだったからな。ギルド……そしてノワールへの貢献度と考えれば、お前等に比類する者はいないだろう。街の復興もだんだん落ち着いてきた。魔物についてもお前等がいなくても、十分対処出来る数だ」

「はあ」

「王都で羽を伸ばしてこい。たまには休暇も必要だ。遊ぶためには金がいくらあっても足りないだろう?」


 ニヤッとモーガンさんが笑った。


 休暇を取ってもらおうとしたにしても、なかなか回りくどい方法だな。


 しかし特に頑張り屋のアリエルは「休め」と言われても、素直に首を縦に振らなかったかもしれない。

 そこでこうした洒落た方法を思いついたんだろうな。


「分かりました。そういうことでしたら有り難く受け取ります」

「よし、話がまとまったな」


 パンと手を叩くモーガンさん。


「依頼の達成とは関係ないが、オレ個人の頼みを言っておく。王国一武闘大会で優勝してこい。お前には十分その力がある」

「まあ全力で頑張ってはみますよ」


 モーガンさん直々の頼みか……これはなんとしてでも優勝しなくっちゃな。

 王国から強いヤツが集まってくるみたいだし、今から楽しみだ。


「アリエル、エドラ。二人は王都に行ったことがあるのか?」

「ええ。小さい頃に、お父様に連れて行ってもらいましたわ。それこそ、王国一武闘大会が開かれている時に」

「わざわざ大会の日だなんて……楽しかったか?」

「ええ。その日は王都をあげての盛大なお祭りが開かれます。大会の何日か前から、出店とかもあって楽しいですわよ」


 なるほど……だからこそ今回の依頼は『休暇』の意味合いが強いのだろう。


 全く……繰り返すが、ギルドもなかなか粋な真似をしてくれるものだ。


「エドラは?」

「……あるよ」


 エドラに問いかけると、彼女は短く答えた。

 しかしそれ以上なにも喋ろうとしない。


 なにか事情がありそうだな?

 まあ喋りにくいことなら、現状は無理して聞き出さなくても大丈夫だろう。

 王国一武闘大会の開催まで、まだ日があるみたいだし、そのうちまた聞けばいいか。


「じゃあ三人とも、頼んだぞ」

「「「はい」」」


 こうして俺達は王都に行くことになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
☆コミカライズが絶賛連載・書籍発売中☆

マガポケ(web連載)→https://pocket.shonenmagazine.com/episode/3270375685333031001
講談社販売サイト→https://kc.kodansha.co.jp/product?item=0000372856

☆Kラノベブックス様より小説版の書籍も発売中☆
最新3巻が発売中
4fkeqs9af7bucs8gz4c9i682mj_6xg_140_1kw_aw2z.jpg

☆☆新作です。よろしければ、こちらもどうぞです☆☆
「憎まれ悪役令嬢のやり直し 〜今度も愛されなくて構いません〜」
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ