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「無能はいらない」と言われたから絶縁してやった 〜最強の四天王に育てられた俺は、冒険者となり無双する〜【書籍化】  作者: 鬱沢色素
本編

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54・名剣

 あれから平和な日々を過ごしていたが、そんな俺にとある吉報が入った。


「どうやら剣が出来たみたいだな」


 手紙は鍛冶師のドワーフ、ラッセルからだ。

 そこには『剣完成したり。すぐに来られよ』という文字が書き殴られていた。


「楽しみだ」


 俺は心を躍らせ、ラッセルのところへと向かった。



「おお、来たか!」



 ラッセルは俺の姿を見るなり、そう声を大きくした。


「こんなにすぐ来るとは思っていなかったぞ」

「早く見てみたかったからな。どんな剣が出来たのかを」

「まあ楽しみにしてくれてたなら、オレも嬉しいがな!」


 俺がそう言うと、ラッセルはニカッと少年のような笑みを浮かべた。


「ラッセルこそ早かったじゃないか。もっと時間がかかると思っていた」

「生涯で一番の大仕事にしようと思っていたからな。それに今まで喉から手が出る程欲しかった素材が山ほどあるんだ。三日三晩、夜通し作り続けたよ」


 よく見ると、ラッセルの目の下には薄いくまが出来ていた。

 どうやらここ数日、あまり寝られていないようだな。

 しかし疲れている様子どころか、顔は活力に満ちている。

 これはやはり期待出来そうだ。


「それで剣というのは……」


 俺がキョロキョロと工房内を見渡すと、ラッセルはおもむろに一本の剣を取り出した。


「これだ」


 ラッセルがその剣を俺に手渡す。


「軽い……!」


 見た目は地味な造りの剣であった。

 刀身は黒く、無駄な装飾は一つも付けられていない。その場で一度軽く振るうと、まるでなにも持っていないかのような感覚さえ覚えた。


「デュランダム……そうオレは名付けている」

「いい名だな」


 デュランダムを俺は注意深く眺めていた。


「ん……? いくつか魔法が付与されているのか?」

「ああ。ドワーフという一族は、付与魔法だけは得意なヤツが多いからな。もちろんオレも付与魔法が使える。五重に付与魔法をかけさせてもらった」

「ご、五重も!? 普通は付与魔法は重ね掛けすることすら、困難だったはずだが」

「まあ、そこはオレも経験が長いからな」


 照れ臭そうにラッセルは頬を掻いた。


 驚いた……。

 良い職人だと思っていたが、まさかここまでだったとは。


「どうしてこんなに軽い?」

「風魔法を付与しているから……ってのもあるが、一番の理由はアブソーブモグラの骨だな。こいつを素材にすると、非常に軽くて頑丈な剣が作ることが出来る。だからアブソーブモグラの骨は、『鍛冶職人が一度は使ってみたい剣の素材ランキングベスト一位』にも輝いたことがあるんだ」


 素材ベスト一位……って、そんなランキングあるんだ。

 まあ鍛冶師の界隈でも、色々と賑わっているんだろう。


「早速試し斬りをしてみたい」

「ならやってみるといい。一応試し斬り用の人形もあるが……」

「どうせなら魔物相手に試してみたい」


 人形相手じゃよく分からないからな。


「……そうか! 後で感想を聞かせてくれよ。せっかく作ったんだから、お前さんが満足するような剣でありたい」

「もちろんだ」


 というわけで、俺はラッセルから剣を受け取った後、魔物が蔓延る平野に行くことにした。





 ◆ ◆


 街を出て、少し行った地点で足を止める。

 少し待っていると、スライムやウルフが寄ってきた。


「もっと集まれ」


 どうせだから、この剣を使って暴れ回りたい。

 だだっ広い平野で、ここなら少しくらい動き回っても大丈夫そうだ。


 スライムやウルフ一体だけでは、すぐに倒してしまうだろう。

 というわけで一旦魔物から逃げ回りつつ、俺のところへ魔物が集まってくるのを待った。


 そして集まった魔物の数、およそ三十。

 これくらいだったら、思う存分試し斬りが出来る。


「いくぞ!」


 剣を振るう。

 うむ……やはり軽い。これなら何度振るっても疲れることはないだろう。


 ズドーーーーーン!


 剣を近くの地面に振り下ろすと、大きなクレーターが出来た。

 それを見て、やっとのことで魔物は『俺』を脅威だと認める。怯んでいるのか、すぐにかかってこようとしなかった。


「おいおい、なに怖がってんだ」


 挑発するように、クイクイッと手を動かすと、何体かの魔物が一斉に襲いかかってきた。

 そうこなくっちゃな。


 一度ひとたび剣を振るうと、暴風が巻き起こる。

 周囲の草も魔物とともに散り、見る見るうちに周囲の風景が変化していった。


 やがて三十体の魔物を、それほど時間がかからずに討伐することが出来たのだった。


「やはりこの剣は素晴らしい」


 満足し、俺は剣を鞘におさめた。


 ついつい嬉しくなって、弱い魔物相手にオーバーキルしてしまった。

 今までの剣でもこの程度は朝飯前だったが、かかった時間が違う。疲労も感じなかった。


「今までなかなか酷い剣を使わされてたからな……」


 言わずもがな、四天王のせいである。

『剣』の最強格、カミラにはいつもボロボロの剣を使わされていた。

 少し当たってしまえば、すぐに折れてしまうような剣だ。その上に切れ味もとても悪い。


 それをカミラに言うと、



『すぐに折れる? それはお前が、魔物のわざわざ斬れにくい場所に当てているからだ。筋肉と筋肉の切れ目に剣を通せばすうーっと斬れる。それに戦場では常に名剣を持たされるとも限らないからな。剣士は暴風のように暴れ回りながらも、そよ風のような繊細さも持ち合わせる必要もあるのだ』



 とまともに取り合ってくれなかった。


 ヤツが本気で戦ったところは、それこそ台風が通り過ぎたかのように変わり果てる。

 しかし同時に、その気になれば虫一匹すらも殺さないような繊細さも持ち合わせていた。


 そして今度はメチャクチャ重い剣を手渡してきて、こうも言ってきた。



『重い? 甘えるな。その程度の剣を使えなければ話にならんぞ。筋力トレーニングにもなるしな。甘ったれたことを言っている暇があったら、素振りを一日十万回を早くこなせ』



 ……と。


 まあ今思えば、ヤツのメチャクチャな特訓方法で俺はここまで剣の使い方が上手くなったともいえる。


「……そんな剣ばかり渡されてきたものだから、いかにこの剣が素晴らしいか実感するな」


 ラッセルは良い剣を作ってくれた。

 さて……魔物の死体をこのままにしておくのもんなんだし、収納魔法でおさめて……っと。ギルドに行けば換金してくれるだろう。


 試し斬りが満足に終わった後、俺はその場から去った。

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