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「無能はいらない」と言われたから絶縁してやった 〜最強の四天王に育てられた俺は、冒険者となり無双する〜【書籍化】  作者: 鬱沢色素
本編

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53・クレア、ノワールに向かう

「ふむふむ……ではブラッドはノワールにいることで確定なのじゃな?」


『治癒』の最強格、ブレンダの報告を聞いて。

 クレアはそう確認した。


「はい、間違いありません。あれから調べてみましたが、確かな情報でした。そこでブラッドは『ブリス』と名を変え、冒険者として働いているようです」

「冒険者か……」


 冒険者とは自由な職業だ。

 それならば身分不詳のブラッドであっても、お金を稼いで生活出来るだろう。


「それにしてもあの泣き虫ブラッドが……まさか自立しているとはな」

「感慨深いですね」

「じゃな」


 魔王城に戻ってもこないし、野垂れ死んでいないというのはつまりそういうことだ。

 ブラッドが小さい頃、ワイバーンの幼竜に追いかけられて、泣きながら逃げていた光景をクレアは思い出す。


(あれがもう随分昔の話のことのようじゃ……)


 魔王程ではないが、なんだかんだでブラッドに思い入れの強い四天王一同であった。


「魔王様はなんと言っている?」

「すぐにノワールに行って、謝ってこい。そして……出来れば連れ戻してこいと言っています」

「当然じゃな」


 ブラッドがノワールにいることを知った今、魔王はすぐにでも彼のところに駆けつけたいのだろう。

 しかしそれをせずに、まずは四天王達にブラッドを連れ戻してこいと言っている。


 何故なら……。


「ブラッドは気配察知についても一流じゃからな。魔王様のような、強烈なオーラの持ち主が近付けば、すぐに勘付くかもしれん」


 無論、いくらオーラが強いとはいえ、魔王ならそれをある程度漏らさないようにすることが出来る。

 でなければ、移動するのもままならないからだ。


 だがブラッドの気配察知は、さらにその上をいく。


 他の四天王も同様だ。

 生半可な隠し方では、すぐにバレてしまうだろう。


「じゃから儂に白羽の矢が立った……といったところか」


 クレアの言葉に、ブレンダが頷く。


「仮にも我が四天王の中で『魔法』の最強格、クレア。隠蔽魔法もお得意のものでしょう?」

「まあな」


 魔王、そして四天王の中で唯一、本気を出して隠蔽魔法を施せばブラッドに気付かれない存在……それがクレアであった。


(とはいえ、あやつの目をかいくぐるのは、なかなか骨の折れることじゃが……)


 嘆息するクレア。


「本来は魔王様、そして四天王全員でブラッドに今すぐ会いに行きたいところです。しかし、そんなことをしてしまえば確実にブラッドが途中で気付きます」

「その通りじゃな。儂が他のヤツ等に隠蔽魔法をかけることも出来るが、さすがに自分一人よりかは精度が落ちる」

「だからあなた一人で行ってもらうしかないのですよ。クレア」


 ブレンダにじっと見つめられるクレア。

 ……どうやら拒否権はないようだ。


「はあ……分かった。とはいえブラッドを連れ戻せなければ、魔王様のきつーいお仕置きがあるじゃろうから、断れないがな」

「私達の運命はあなたにかかっています」

「……転移魔法を使うのはダメなんじゃろうな?」

「ブラッドに気付かれないなら」


 まあ無理であろう。

 本来、転移魔法など簡単に使えるものではない。魔王軍の中ではクレアと、後は魔王くらいであろう。

 そんなものを使うとなったら、これまた莫大な魔力を使う。それをブラッドが察知して逃げてしまわないとも限らない。


「徒歩か……」

「もちろん馬車も用意していますわよ」

「馬車もいいかもしれぬが、儂が自分に身体強化魔法をかけて走った方が早い。急いだ方がいいじゃろうしな」

「ですね。こうしている間に、ブラッドがノワールから離れないとも限りませんから」


 なかなか面倒臭い旅になりそうだ。

 しかし目的と場所がはっきりしているなら、まだ気が楽だ。


「じゃったら、早速行ってくる」

「頼みました。ブラッドを説得して、なんとか一度魔王城に連れ戻してくれださい」


 ブレンダに手を振って、クレアは魔王城を後にしようとした。


「こんな理由で魔王城を出るのは久方ぶりかもしれぬな……」


 魔王城の外に出るとなったら、大体は人間とのいざこざに首を突っ込む時くらいだからな。

 せっかくだから観光でもしてみようか?


 そんな呑気なことを考えながら、クレアが魔王城の正門を潜ろうとした時である。



「クレア様」



 不意に後ろから声をかけられた。


「ん……どうした、アヒム。儂はブラッドを連れ戻しにノワールに行ってくる。一人で行くと伝令しておるじゃろう?」


 彼の名はアヒム。

 クレアの直属の、そして一番の部下である。

 背中からは翼を生やし、頭からは二本の角を生やした魔族の男であった。


 アヒムは床に膝を付き、こう続ける。


「クレア様の事情も分かります。しかしカミラが持って帰ってきた妖しげな魔石についてはどうしますか? まだ調査結果もまとまっていませんし……」


 そういえばそんなことがあった。


 カミラが人間界から戻ってきた時、ヤツは紅色に光る妖しげな魔石を持って帰ってきた。

 分析を続けると、どうやら魔物や人間を強化したり、活性化して操ることが出来る魔石らしい。

 しかし魔石はまだ未完成品だ。このままでは使いものにならない。


 とはいえ人間界にこんなものがあるのは、明らかに不自然であった。

 ゆえに調査結果をまとめて、魔王に提出する必要があるのだが……。


「優先順位が低くて忘れておったな」

「あなた達にとっては、ブラッド様のことが一番ですものね」

「うむ……しかし魔石については結論を出したじゃろう? 『このままでは使いものにならない』と」

「その調査結果だけで魔王様が納得してくれるなら楽なんですけど」


 アヒムが苦笑する。


「お主はなにが言いたい?」

「どうやらこの魔石は量産されたものだ。複数個あるうちの一つらしい……ということも分かりましたよね」

「そういえば、そうじゃな」

「なのでまだ人間界には、同じような魔石が存在していると考えられます。ノワールに古代竜エンシェントドラゴンが現れたのも、この魔石のせいだと思いますし……ノワールに行くならついでに、その古代竜を操った魔石の行方も調べてくれませんか?」

「なに、そんなことじゃったか。それくらいなら片手間で出来る。分かったら、すぐに内容をお主に送ればいいのじゃな?」

「助かります」


 全く……どうしてこんな簡単なことを、こやつはもったい付けて言うのだろうか。


 そんなことを思いながら、今度こそ魔王城を後にするクレア。


 しかしこの時のクレアはブラッドのことで頭が一杯で、つい見逃してしまった。

 アヒムの口角がぐにゃりと歪んだのを。

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