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「無能はいらない」と言われたから絶縁してやった 〜最強の四天王に育てられた俺は、冒険者となり無双する〜【書籍化】  作者: 鬱沢色素
本編

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51・アブソーブモグラの肉を食べよう

「ブリスは料理が出来るのですか?」


 宿屋に戻って開口一番、アリエルにそう問いかけられた。


「ああ。冒険者になる前、よく()()の料理を作らされていたからな。()()な料理くらいなら作れるぞ」

「そうなんですか……ブリスはなんでも出来ますわね」

「アリエルとエドラはどうだ? ソロで冒険者をやっていた期間が長いだろうし、愚問かもしれないが」

「……!」


 今度は俺から質問すると、何故だかアリエルはビクンッと肩を震わせた。


 一方エドラは、


「私は……出来るよ」

「さすがだな、エドラ」

「えへへ」


 そうはにかんだ。

 感情表現に乏しいエドラが、不意に見せる女の子らしい仕草を見るとドキッとしてしまうな。


「アリエルは?」

「も、ももももちろん出来ますわ! 任せてください!」

「頼もしい」


 では早速料理に取りかかるとするか。


 ちなみに宿屋の女将おかみに頼むと——晩ご飯を作るまでの間ではあるが——厨房を借りることが出来た。


 ある程度設備も整っている。

 調味料も少しなら使ってもいいらしい。


 これは腕が鳴るぞ。


「じゃあ始めるか」


 市場で買った野菜や酒、そしてアブソーブモグラの肉の一部をテーブルに並べる。

 こうして見ると、なかなか圧巻の光景だ。


 ちなみに……ここに並べられていないアブソーブモグラについては、ギルドで換金しておいた。

 目ん玉が飛び出そうな金額を提示されたが、表面上は驚かずにおとなしく受け取っておいた。


「アブソーブモグラの肉だが……まずはこの毒をどうにかしないとな」


 毒が充満しているルナー坑道に長らくいたためだろう。

 俺はこのまま食べても大丈夫だが、アリエルとエドラはそういうわけにはいかない。


「毒抜きをするか」


 毒抜きのポーションをボールにドバドバと入れる。

 アブソーブモグラを包丁で切り削いで、そのポーションの中に浸した。


「これで少し経つと、毒がすっかり抜ける。その間に付け合わせの料理も作っておくか」

「私も手伝う」


 エドラが俺の隣に立つ。


 その後、俺達は手際よく料理を進めていった。


「……よし。毒抜きも終わったみたいだ」

「どうする?」

「取りあえず焼いてステーキにしてみよう。もちろん他の肉料理も作るけどな」


 フライパンに油を浸し、アブソーブモグラの肉をじゅーっと焼く。

 肉汁が出てきて、美味しそうな匂いが漂ってきた。

 ……うおっ、これは想像以上に美味しそうだぞ。すぐにでもかぶりつきたくなった。


「これに市場で買ったワインを入れて……」


 じゅーっ。


 続いて、フライパンに赤ワインを入れると、さらに涎が零れてしまいそうな匂いが立った。


「美味しそう」

「エドラもそう思うか?」


 焼き方は……そうだな。ミディアムくらいにしておくか。

 本当はレアで食べてみたい気持ちもあるが、なんてたってアブソーブモグラの肉は初めて食う。

 生焼けでお腹を壊しても困るからな。


「後はこれにコーンや人参を添えて……っと」


 あっという間にアブソーブモグラのステーキが完成だ。


「この調子でどんどん作っていこう。今度はとんぺい焼きでも作ってみるか」

「とんぺい焼き?」

「東方の伝統料理だ。旨いぞ〜」

「楽しみ」


 エドラが目を輝かせる。


「あ、あわわ……」


 それにしても……こうしている間にも、アリエルは近くであたふたしていた。

 エプロン姿の彼女は可愛らしいが、同時にあまり着慣れていないような印象も受ける。


「どうした、アリエル? 具合でも悪いのか?」

「そ、そんなことはありませんわ!」

「だったら良いんだ。そうだ、このキャベツを千切りにしてくれるか?」

「わ、分かりました!」


 半玉のキャベツを前に、アリエルが包丁を構える。


 そしてすうーっと息を吸って、


「参ります。第一料理剣《千本キャベツ》!」


 ダダダダともの凄い勢いで包丁を上下に動かす。


 おおっ! 

 まさか彼女の代名詞でもある《千本華》を料理に応用するとは!


 さすがはアリエル、目にも止まらない速さだ。


 だが。


「きゃっ!」


 手から包丁がすっぽ抜ける。

 包丁は宙でクルクルと回り、俺のところまで落下してきたので片手で受け止めた。


「す、すみません! 大丈夫ですか?」

「も、問題ない」


 慌ててアリエルが駆け寄ってくる。


「アリエル。もしかして……料理、苦手なのか?」

「!!」


 さらにアリエルがギクッとした表情になる。


「キャベツも切れてないし……というかまな板が千切りにされている……」


 キャベツには一切傷が付けられておらず、そのままの状態で残っているのみである。

 まな板……後で弁償しなくっちゃな。


 俺が指摘すると、アリエルは「うぅ〜」と俯き、


「お恥ずかしながら……実家にいた時は、メイドのシェリルが料理をしてくれましたし、冒険者になってからもほとんど外食でしたので……料理は不慣れなんです」

「そうだったのか」

「料理が出来ない女の子だなんて、ブリスに嫌われちゃいますよね?」

「そんなことない」


 俺は続ける。


「人には得意不得意というものが往々にしてあるものだ。別に女の子だから料理が出来なきゃ……という先入観はくだらないものだと思う。自分をそう卑下するな」

「〜〜〜〜〜! ブリスは優しすぎます……分かりました。でもわたくし、料理練習しますね!」

「だから女の子だから料理が出来なきゃという訳では……」

「違いますわ。ブリスにわたくしの手料理、食べて欲しいんです! 食べてくれますよね?」

「そ、そうか。楽しみにしている」


 俺がそう言うと、アリエルは嬉しそうに笑みを浮かべた。


 さて……続きをやるとするか。



 俺達は料理を再開し、そう時間はかからないうちにアブソーブモグラのフルコースが完成したのだった。



「じゃあみんなで食べよう」

「はい!」

「早く食べたい」


 まだ晩飯前の中途半端な時間ということもあって、食堂も俺達以外に人はいなかった。


 テーブルに並べられた料理の数々は、光り輝いて見えた。


「ワイン、飲んでみてもいいでしょうか?」

「もちろん。ただ飲み過ぎるなよ?」

「は、はい!」


 せっかくだから俺も少しだけお酒を飲むとするか。


 その前に……。

 まずはアブソーブモグラのステーキを食べてみるか。


 フォークで切り分け、口に運んだ。

 その瞬間。


「……旨い!」


 ジューシーな肉の感触。

 上質な豚肉のような味がして、一噛みするごとに肉汁が出てくる。


 これは想像以上だったな。

 ラッセルの言う通り、アブソーブモグラの肉は美味であった。


「こちらのとんぺい焼き? っていうのも美味しいです! お酒が進みますわ」

「……野菜も新鮮で美味しい」


 次から次へと料理がなくなっていく。

 たまにはこういう落ち着いた日があってもいいもんだな。


 やがて一枚残らず料理の入った皿が空となり、俺達は食事を終えたのであった。


「ふう、美味しかった……けど後片付けもしないとな」

「わたくしも手伝いますわ。それくらいなら出来ますので」

「後片付けも大事」

「助かるよ」


 俺達は空になった皿を流し台のところに持って行き、洗っていった。


「それにしてもアリエル、エドラ。この後はどうするんだ? 外も暗くなってきたし、泊まっている宿屋まで送っていこうか?」


 なにげなく聞いてみた質問であった。


「せっかくだし、もう少しブリスとお喋りしておきたいですよ」

「アリエルに同じく」

「……そっか。こういう落ち着いた時間ってなかなかないしな。お酒も余ってるし、もう少し喋ろうか」

「「はい!」」


 そうなんの考えもなしに答えたことで、あんなとんでもないことが勃発ぼっぱつしてしまうとは……。


 この時の俺は想像だにしていなかった。

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