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「無能はいらない」と言われたから絶縁してやった 〜最強の四天王に育てられた俺は、冒険者となり無双する〜【書籍化】  作者: 鬱沢色素
本編

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50/130

50・ラッセルは人の話を聞かなかった

 収納魔法でアブソーブモグラをおさめてから、俺達はラッセルのもとに戻った。


「持ってきたぞ」


 鍛冶場に入ると、ラッセルは「ん?」とこちらを向いた。


「も、もう戻ってきたのか?」

「ああ」

「……まあ仕方ねえ。ルナー坑道はかなり難度の高いダンジョンらしいからな。いくらお前さんでも簡単に攻略出来ないだろう。オレはいつまでも待ってやる。だから慌てなくても……」


 あれ?

 なんかラッセルの言っていることを聞くと、俺が失敗した前提で話が進んでいるようだが?


「この人、勘違いしているみたいですね……」


 こそこそとアリエルが耳打ちしてくる。

 せっかくだからと、アリエルとエドラもここまで付いてきたのだ。


 ……早くラッセルの勘違いを正さなければ。


「あのー」

「お前さんのことは買ってるんだ。ブリスの武器を見る目は確かだからな。そういうヤツこそ冒険者として探索する。お前さんならすぐにルナー坑道を攻略し、アブソーブモグラの骨を持ってくくるだろう」


 ダメだ……。

 この人、どうやら相手の話を聞かないタイプの人らしい。

 職人にはこういう人も多いらしいが……ラッセルはそれが度を過ぎている。全く話が通じない。


「は、話を!」

「ん? どうした、そう声を張り上げて……っと、今気付いたがお前さん。なんか今度はえらいベッピンさんを連れてきてんじゃねえか。お前も隅に置けないな」


 俺の後ろにいるアリエルとエドラの姿に気付く。

 どうやら話を聞かないだけではなく、周りも見えなくなるタイプらしい。当のアリエルとエドラは困ったような表情をしていた。


 しかし二人に目がいったおかげで、ようやく話に切れ目が入った。

 俺はこの隙を見逃さず、畳みかけるようにして言う。


「ルナー坑道の攻略を断念したわけではないぞ。ちゃんとアブソーブモグラの骨を持ってきた」

「なに?」


 眉間に皺を寄せるラッセル。


「バカ言っちゃいけねえ。オレだって、あそこのダンジョンの危険さは理解しているつもりだ。冒険者共に言ってもなかなか持ってこねえから、オレ一人で挑んだことがあるからな」

「腕に自信があるのか?」

「ああ。毎日剣を打ってるからな。筋肉には自信がある」

「……冒険者の経験は?」

「ない」


 ドヤ顔で力こぶを作るラッセル。


 見事な筋肉だと思うが、それだけでダンジョンを攻略出来るなら冒険者は苦労しない。

 そもそも坑道には毒が満ちているのに、どうするつもりだったというのか……。


「ちなみにどうなったんだ?」

「坑道に入って、三十秒で気を失った。たまたま近くを通りがかった冒険者に救助されたがな」

「二度と止めておく方がいいだろう」


 そう忠告するものの、全く懲りてない様子のラッセルを見て、


「……ブリス。この人、本当に大丈夫なんでしょうか?」


 とラッセルに聞こえないよう、アリエルが声を潜める。


「腕は確かだ」

「だったらいいんですが……」

「心配」


 アリエルとエドラが不安そうな表情を作る。

 まあこの調子だったら仕方がないが……。


 さっさと話を進めよう。


「アブソーブモグラの骨を見せたら、信じてくれるか?」

()()()な。だがお前さんもなかなか強情だな。人の話を聞かないったらありゃしない」

「あんただけには言われたくないな」


 溜息を吐いてから、俺は収納魔法でおさめていた小型のアブソーブモグラを出した。

 数は十体ほどだ。もちろんまだある。


「…………」


 ん?

 ラッセルがアブソーブモグラを見てフリーズしちまっている。


 しかしやがて、これでもかとばかりに目を見開き、



「な、なんだと!? 本当にお前さん達、あのルナー坑道を攻略したっていうのか?」



 と声を大にしたのであった。


「だからそうだと言っているじゃないか」

「あ、有り得ねえ……ギルドに依頼を出したのは、二年前からなんだぞ? この二年で誰一人、アブソーブモグラを一体も持ってこなかった。それなのに一気に十体だと……?」

「十体だけではないぞ」

「……?」

「ここには入りきらないと思ったからな。そうだな……この近くで広い場所はあるか」

「近くに寂れた公園がある。あそこなら……」

「もっと大きなアブソーブモグラを見せてやる」


 ラッセル、そしてアリエルとエドラと近くの公園まで行き、最後に倒した親玉を見せる。


 するとラッセルは「ひええええ!」と腰を抜かしてしまった。


 それから再度、ラッセルと工房まで戻ると、


「す、すまなかった! 正直お前さんの腕を見誤っていた。古代竜を倒したといっても、この目で見てなかったからな。まさかこれほどだったとは……!」


 と開口一番、謝ってきた。


「別に謝らなくてもいい。それで……だ。これだけアブソーブモグラがあれば、良い剣を作ることが出来るか?」

「お、おう! もちろんだ!」


 ラッセルが腕まくりをする。


「しかしすぐには完成しねえ。二週間……いや一週間あれば作ることが出来と思うが。それまで待ってくれるか?」

「もちろんだ。別に急いでないしな」


 俺が同意すると、ラッセルはせわしなく動き始めた。


「こりゃあ、忙しくなる……! なんてたって、これだけ素材があるんだからな! この鍛冶師ラッセル。生涯最高の剣を作ってやるから、期待してろ!」

「楽しみにしてる」

「それから……いくらなんでも剣を作るのに、骨は全部いらねえ!」

「とはいっても、多ければ多いほど良いだろう?」

「確かにそうだ。だがこれだけあれば十分だ」


 とラッセルはアブソーブモグラを取り分ける。


「残りのアブソーブモグラはギルドに行って換金でもするといい。しばらくは遊んで暮らせるだけのお金が手に入ると思うぜ」

「古代竜討伐の時に山ほど貰ったから、あまりお金には困っていないんだがな」

「だったら——全部は無理だと思うが——食ってみたらどうだ?」

「食う?」

「アブソーブモグラの肉はなかなか美味らしいぞ? 素材の使い道が何通りもあるからこそ、値段が高騰こうとうしているんだ」


 なるほど、それは良いことを聞いた。


「ありがとう。試してみるよ」

「楽しみにしてろ!」


 そう言い残し、俺達はラッセルの工房を後にした。


 扉の向こうから、ラッセルが「うおおお!」と気合いの入った声が聞こえた。


「さて……アリエル、エドラ。ラッセルもああ言っていたし、よかったらアブソーブモグラの肉を今からみんなで食べてみないか?」

「い、いいのですか?」


 アリエルの問いかけに、俺は首肯する。


「一人で食べるより、みんなで食べた方が美味しいからな」

「食べるの初めて……楽しみ」


 表情を変えないエドラであったが、俺は見逃さなかった。

 彼女の口から涎がじゅるりと漏れていたのを。


「よし。じゃあ俺がいつも泊まっている宿屋に行くか。宿屋の女将おかみと仲良くなったから、調理場くらいなら貸してくれると思う」


 それにしてもアブソーブモグラの肉か……。

 ラッセルは美味だと言っていた。どんな味がするんだろう?


 今から楽しみだ。

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