表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「無能はいらない」と言われたから絶縁してやった 〜最強の四天王に育てられた俺は、冒険者となり無双する〜【書籍化】  作者: 鬱沢色素
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/130

44・Sランクに昇格した

 俺達は古代竜をクアミア家の邸宅に保管してから、すぐにノワールにとんぼ返りした。


 受付テーブルまで行き、


「シエラさん、呼び出しを受けたんですけど……」


 受付嬢であるシエラさんに話しかける。

 彼女は俺が冒険者になってから随分世話になっている人だ。


 シエラさんは俺の顔を見るなり、やけに神妙な表情になって、


「本日……ブリスさんにはお伝えしたいことがありまして……」

「そ、それはなんでしょうか?」


 もしかして悪い報せだろうか?

 心当たりはないが、シエラさんの表情を見ていると……それも有り得そうだ。


 何故かシエラさんは低めの声で、少しも笑顔を浮かべず、


「ブリスさんは……」


 と続け、後ろからなにかを取り出し……。




「今日でSランクに昇格です!」




 パン!


 シエラさんが後ろからクラッカーを取り出した。

 クラッカーを引くと、軽快な音とともに紙吹雪が舞った。


「……はい?」


 突然のことで思考が追いつかない。


「シエラさん、Sランクってどういうことですか? 俺、今までDランクだったんですけど……」

「《大騒動》のゴタゴタがあったせいで、昇格試験が有耶無耶うやむやになりましたけど、アリエルさんから聞いていますよ? なんでも一つ目トロールを紙くずのように、バッタバッタとなぎ倒していったって」


 アリエルに視線をやると、彼女は「当然です」とばかりに頷いていた。


「じゃあその昇格試験に合格したということですか」

「そうです!」

「ですが、試験はDからCに昇格するためのものじゃなかったでしたっけ? それなのにSランクって……」

「前にも説明させていただいた通り、DからCには大きな壁があります。C以上にいくためには、試験を受けていただく必要があったんですよ。つまり……その壁さえ乗り越えれば、後はその人の実績によっていくらでも昇格出来るということです」


 なんだそりゃ。

 つまり昇格試験はDからCに上がる際の、一回こっきりということか。

 前の説明を聞いていれば分かることであったが、《大騒動》の騒ぎですっかり頭から抜け落ちてしまっていた。


「はあ」


 なんと返していいか分からず、俺は頭を掻く。


「それにしてもSランクは一気に上がりすぎじゃないですか!?」

「ブリスさんの実績を考えれば妥当ですよ。今までが遅すぎたくらいです」

「当然ですわ」

「アリエルまで……」


 まあ昇格することが嫌なわけではないから、ここは素直に受け取っておこうか……。


「ではこちらが新しく発行した冒険者カードです」


 シエラさんから一枚のカードが手渡される。

 そこにはランク欄のところに『S』と金ぴかの文字で書かれていた。


「ふふふ。ついにブリスもSランクですね」

「なんかここまであっという間だったな」

「ですわね。わたくしがSに上がる時は、もっと時間が必要でしたのに……さすがブリスです」


 あっ、そういえばアリエルはこの街唯一のSランク冒険者だと言っていた。

 つまりノワールにはアリエルに続いて、二人目のSランクが誕生したということだ。そう考えると感慨深い。


「あと……大金だったため用意するのが遅れましたが、これは古代竜討伐の報酬金です! 確認してください」


 シエラさんから白金貨を三枚受け取……って白金貨!?

 白金貨というと一枚一千万イェン以上の価値があったはずだ。それが三枚だなんて……。


「ほ、本当にいいんですか?」

「もちろんです! ブリスさんはこの街の英雄なんですから」


 白金貨一枚あれば、しばらくは働かなくても生きていけるな……まあせっかくSランクにもなったし、もっと世界を見てみたいのでそんなことはしないが。


 とはいえ。


「古代竜は俺だけが倒したわけじゃないからな。アリエルとエドラも一枚ずつ山分けだな」


 そう言って、アリエルに白金貨を手渡そうとすると……。


「こ、こんなに受け取れませんよ! 古代竜を倒せたのはほとんどブリス一人の力なんですから!」

「だが……」


 頑なに受け取ろうとしないアリエル。

 まあ配分については後で考えればいいか……今はそのことよりも。


「それで……シエラさん。ギルドからの呼び出しというのは、これだけですか?」

「あっ、もう一つありますよ! ディルクの野郎の件です」


 やはりか。


「なにか動きがありましたか?」

「どうやら少しだけ、まともに話せるようになったみたいです。ギルドの地下でモーガンさんがお待ちです。すぐに向かってください」

「分かりました」

「わたくしも行きます」


 俺はアリエルと肩を並べて、地下室に向かった。





 ◆ ◆


「おお、ブリス。やっと来たか」


 地下室に降りると、モーガンさんが俺達の顔を見てそう名を呼ぶ。


「なんだか暗いところですね」

「まあな。ここは王都に引き渡すまで、重犯罪者を拘束しておくところだ。最近はそこまでの重犯罪者がいなかったが……全く、久しぶりだよ。こんな馬鹿者が現れたのはな」


 そう言って、モーガンさんは鉄格子に囲まれた部屋の中を見る。


 鉄格子の先には、ディルクが両手を鎖に繋がれて、うなだれている光景が見えた。

 上半身を裸にされており、見るからに痩せ細っている。傷も多く、こうして生きているだけでも精一杯に見えた。


「こいつに()()()()()分かったことが、いくつかある」


 それが単純にディルクと会話を交わした……という訳ではないんだろうなあ、と思いつつモーガンさんの話に耳を傾ける。


「まず一つ。ディルクの背後には『ゼブノア教団』という存在がいる。どうやらそいつ等にそそのかされて、今回の凶行をやってのけたらしい」


 ゼブノア教団……聞いたことがないな。


 記憶を探っていると、モーガンさんはネックレスのようなものを取り出した。


「こいつが持っていたものだ。最初はなんだと思っていたら、これがどうやら教団のマークになるらしい」


 ネックレスには黒い蝶のようなマークが付けられている。

 見ているだけで禍々しさを感じた。


「アリエルはゼブノア教団を知っているか?」


 アリエルにも話を振ってみるが、彼女も首を横に振った。


 モーガンさんの方に視線を戻すと、彼はさらに話を続ける。


「そしてもう一つ。どうやらディルクはゼブノア教団の中でも、そこまで地位が高くなかったらしい。そのせいでゼブノア教団の全貌について、聞き出すことが出来なかった」

「下っ端だから、あまり情報を知らされていないということですか」

「そういうことだ」

「古代竜については?」

「それについても詳しく分かっていないが、ディルクは『教団から借りた』と言っている。ゼブノア教団っていうのは、とんでもない連中だな」


 モーガンさんの言う通りだ。


 ノワール、そして周辺に《大騒動》を引き起こしたディルクですら、教団の中では下っ端の方だったという。

 教団は古代竜をなんらかの方法で保管していたということか。


 そんなことが出来る力をゼブノア教団は保有している。

 そう考えると、一人や二人の集団ではなさそうだ。


「紅色の魔石もゼブノア教団が作ったものでしょうか?」

「おそらくな」


 アリエルの問いに、モーガンさんが答える。


 ディルクに先日のようなことをやらせて、一体ゼブノア教団はなにを考えているのだろうか?


 とはいえ。


「……今分かっている情報はそれだけですか?」

「そうだな。おそらくディルクから引き出せる情報も、これ以上はなさそうだ」


 再度ディルクの方を見ると、


「カカカ……せ、世界はオワリだ! 私を捕まえたところで、ナンビトたりとも教団の邪魔はデキヌ!」


 と壊れたように不気味に笑っていた。


 紅色の魔石に取り憑かれた者の憐れな末路だと言えるだろう。


「ちなみにディルクはこの後、どうなるんですか?」

「王都に引き渡されると思う。《大騒動》を引き起こした重犯罪者だからな。ノワールだけでは対処出来ん。おそらく処刑になると思うが……」

「カカカ! 私を殺しても、世界の破滅は止められヌ!」


 地下室にはディルクのけたたましい笑い声が響いていた。

【作者からのお願い】

「更新がんばれ!」「続きも読む!」と思ってくださったら、

下記にある広告下の【☆☆☆☆☆】で評価していただけますと、執筆の励みになります!

よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
☆コミカライズが絶賛連載・書籍発売中☆

マガポケ(web連載)→https://pocket.shonenmagazine.com/episode/3270375685333031001
講談社販売サイト→https://kc.kodansha.co.jp/product?item=0000372856

☆Kラノベブックス様より小説版の書籍も発売中☆
最新3巻が発売中
4fkeqs9af7bucs8gz4c9i682mj_6xg_140_1kw_aw2z.jpg

☆☆新作です。よろしければ、こちらもどうぞです☆☆
「憎まれ悪役令嬢のやり直し 〜今度も愛されなくて構いません〜」
― 新着の感想 ―
[一言] 新興宗教というのは知名度上げるためかわかりませんがロクでもないことをすることが多いですね。 日本ではオウム真理教の地下鉄サリン事件を思い起こす人が多いかもしれませんが、かつてキリスト教も新興…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ