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「無能はいらない」と言われたから絶縁してやった 〜最強の四天王に育てられた俺は、冒険者となり無双する〜【書籍化】  作者: 鬱沢色素
本編

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39・ブリス、傷ついた人々を治癒する

「ふう……もう街の中に魔物はいないですわね」


 街を眺めながら、アリエルは額に浮いた汗を拭った。


「そうだな」

「でも……負傷者がいっぱい……」


 エドラは心配そうに、苦しんでいる街の住民達を見ていた。


 戦いは終わった。

 しかし被害は甚大であった。

《大騒動》が起こったにしては、最小限に抑えることが出来たが……それでも、魔物に破壊された建物があったり、傷ついている人々が確かにいるのだ。


 建物は時間をかければ再建することが出来る。

 問題は人だ。


「うぅ……痛いよお」


 壁に背中を預けて、座り込んでいる子どもの姿があった。

 近くに立っているのは……母親だろうか? 

 母親も所々傷を負っているが、子どもの方は見ていて痛々しい傷を負っていた。


 このままじゃいけない。


「少し待ってろ」


 俺は子どもの前でしゃがみ、血を流している右腕に手を当てた。


「《治癒ヒール》」


 優しい光が子どもの右腕を包む。


「……よし。どうだ? 痛みはなくなったか?」

「え……う、うん! すごい! もう全然痛くないよ!」


 子どもはぶんぶんと元気そうに右腕を振り回した。

 後遺症も残っていないな。元通りに戻ったのだ。


「ああ……! ありがとうございます! あなたは神様ですか?」


 子どもの母親らしき人間が、涙目で俺の両手をぎゅっと握る。


「……神様なんかじゃないさ。ただの人間だ」

「ありがとうございます、ありがとうございます! このご恩は一生忘れません!」


 母親は何度も礼を繰り返していた。


 ……古代竜戦の時に囚われていた邪念のことを思うと、とてもじゃないが自分のことを『神様』などとは思えない。


「ブ、ブリス!? あなたは治癒魔法も使えるのですか?」

「ああ。とはいっても、人を蘇生させることは出来ないが……」

「蘇生魔法なんて使える人、いないですわよ!」


 四天王。『治癒』の最強格であったブレンダは、死亡して一分以内なら相手を蘇生させることが出来ていたが……まあ一般的じゃないんだろう。


 今の光景を見ていたのか、近くの傷ついた人々も俺達に近寄ってきた。



「頼む……! オレも治してくれ!」

「右腕が切断されちまった……もう治らねえと思うが、せめて痛みだけでも取ってくれ」

「私も助けてください!」



 これだけの大惨事なのだ。

 街にいる治癒士だけでは、治療が追いつかないに違いない。


「ああ、もちろんだ。全員治してやる。それから右腕が切断されてしまった人。元通りに治せるから、安心してくれ」


 これはある程度、まとめて済ませた方がいいだろう。


 俺は十人程度を一ヵ所に集めて、その人達に手をかざす。


「《治癒ヒール》!」


 それが終われば、また次だ。


「《治癒ヒール》!」

「《治癒ヒール》!」

「《治癒ヒール》!」


 何度も何度も。


 正直、連戦につぐ連戦で魔力が枯渇しかかっている。

 しかしここで治癒を止めてしまっては、今までの苦労が全て水の泡になる。


 それからアリエル達と街の中を隈無く探索し、緊急性が高い負傷者達を全員癒していった。


「これで全員か?」


 まだ軽い傷を負っている者はいるが、あれくらいなら他の常駐している治癒士達に任せておいても大丈夫だろう。


 俺はほっと安堵の息を吐く。


「ブリス……す、すごいです! こんなに大人数を一気に治療してしまうなんて……!」

「あなたに出来ないことはあるの?」


 アリエルとエドラが俺を褒めてくれた。

 とはいえ、褒められるようなことをしたつもりはない。俺は当たり前のことをしたまでだ。


「ギルドに向かいましょう。ギルドマスターやシエラさんの様子も気になるので」

「そうだな」


 今の街の状況を一番把握しているのも、冒険者ギルドだろう。


 俺は疲れた体を引きずって、ギルドへと向かった。





 ◆ ◆


「ブリスさん! アリエルさん! エドラさん!」


 ギルドに入ると、真っ先にシエラさんが俺達を見つけて名前を叫んだ。


「シエラさん……無事でしたか」

「は、はい! そんなことよりも、ブリスさん達もご無事でなによりです。古代竜を倒した、あの黒色の炎……あれはブリスさんの魔法ですよね?」


 シエラさんに問われ、俺は首肯した。


「全く。お前等は大したヤツ等だ」


 話していると、奥の方から大柄で髭を生やした男が現れた。


「えーっと……」

「そういえば、こうして顔を合わせるのは初めてだったな。オレはモーガン。一応ここ冒険者ギルドのマスターをしている」

「そうでしたか。初めまして。俺は……」


 名乗ろうとすると、モーガンさんはさっと手で制した。


「いや、名乗らなくても大丈夫だ。ブリス、お前さんのことはよーく分かっているんだからな」

「そうでしたか」


 まあ俺のことは、ギルド内でさすがに評判になっているのだろう。


「それで……街の状況はどうですか? 俺達は《大騒動》を止めることが出来たんですか?」


 一応質問すると、モーガンさんはぐっと親指を突き立てた。


「大丈夫だ! 魔物も全員討伐したし、これだけの《大騒動》が起こったのに死者は誰一人出てねえ。お前さん達のおかげでな」


 くしゃくしゃと、少年のような笑みをモーガンさんは浮かべた。


「よかった……」

「それに近隣の街や村にも《大騒動》が起こっていたらしいが、目立った被害はないらしい。なんでも女の『救世主』が現れたって、みんなは言っているらしいが……お前さんたちじゃないよな?」


 俺達は顔を見合わせ、一様に首を横に振る。


「まあ、後はオレ達だけでなんとか出来るから、今のところは休んでおきな——ってブリス!?」


 なんだろう。

 もう大丈夫だと分かったら、急に気が抜けた。


 ふわあっと妙な浮遊感を感じ、俺の体はそのまま床へと倒れようとしていた。


「「ブリス!」」


 しかし寸前のところでアリエルとエドラに抱きかかえられる。


「アリエル、エドラ……すまん。どうやら俺、相当疲れているみたいだ」

「当たり前です。ゆっくり休んでください」

「ブリス、よく頑張った」


 彼女達の声を聞いていると、より一層安心してきて眠気を感じた。


 俺はそのまま瞼を閉じて、眠りに落ちるのであった。

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