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「無能はいらない」と言われたから絶縁してやった 〜最強の四天王に育てられた俺は、冒険者となり無双する〜【書籍化】  作者: 鬱沢色素
本編

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33・カミラ、人間を救う

四天王視点です。

※ ブラッド = ブリス

「もう少しで貴様の生まれ故郷につくぞ。良かったな」

「うん! お父さんとお母さんに会えるの、楽しみ!」


 四天王カミラ。

 それと彼女が途中で盗賊から助け出した少女、ルリ。


 ひょんなことから、カミラはルリを村まで送り届けることになったが……この珍道中もそろそろ終わりを迎えようとしていた。


(それにしてもこいつ、随分と私に懐いたものだな!?)


 ルリはカミラに全幅の信頼を置いているようであった。

 その証拠に、カミラの腕にしがみついているルリの表情はとても幸せそうだ。

 腕をほっぺですりすりしたりする。


(なかなかこうして見ると、人間も可愛いもの……って私はなにを考えているのだ!?)


「お姉ちゃん、私の顔なんか付いてる?」

「……! な、なんでもない!」


 ぷいっと視線を逸らすカミラ。


 ちなみに……もちろん、ここまで来る道中でブラッドのことを捜索していたが、足取りさえもつかめなかった。

 しかしルリと一緒にいると、どうしても当初の目的を忘れそうになってしまうカミラであった。


(今日も空は青い。なんとかブラッドのことは魔王様に誤魔化してくれているようだな)


 とはいえ予断は許さない。

 さっさとこいつを両親に引き渡して、ブラッドを探すことに集中しよう。


 カミラはそう強く決意して、とうとうルリの生まれ故郷の村まで辿り着いた。


 しかし……。


「ん?」


 どうやら様子がおかしい。


 魔物が村に入り込んでいるようだが……?


 しかも一体や二体といった話ではない。数十体の魔物達が人間に襲いかかっているのだ。



「ク、クソっ! どうして魔物が村に?」

「なんとか持ちこたえろ! ノワールに冒険者の要請をしているから!」

「ノワールも大変みたいだぞ!? というかここよりも酷い大規模な《大騒動》が起こっているらしい」

「そ、そんな……じゃあこの村は……」



 耳を澄ませていると、そんな人間共の声が聞こえている。


「《大騒動》が起こっているだと? またタイミングが悪い」


 思わずカミラは溜息を吐いてしまった。

 面倒臭い。


「み、みんな! それにわたしのお父さんとお母さんは!? 魔物に殺されないかな……」


 ルリが心配そうに、カミラの手を強く握った。


「貴様の父と母は強いのか?」

「ううん。魔物なんかと戦ったことないし……もし襲われたら殺されちゃう!」


 ルリの声には焦りが滲み出ていた。


 まあ私の仕事はこいつをこの村に送り届けることだし……ここまで済んだら、もう私には関係ないか。うん、ないはずだ。

 だが、両親には会わせてやってもいいだろう。このままでは会えないまま、魔物に殺されてしまうのが関の山だ。


 そう自分に言い聞かせ、目の前に立ち塞がる魔物を倒しながら、ルリの家に向かって進んでいると。


「お父さん! お母さん!」

「ルリ!」


 魔物に襲われている一組の男女を発見した。

 男女はルリを見るなり、目を大きく見開いて驚いた。


 だが、そうしている間にも魔物のウルフは襲いかかってくる。

 男女は木の棒一本でなんとか持ちこたえていたが、これでは倒すまでには至らない。


 ……どうやらルリと男女の反応を見るに、あの二人が彼女の両親のようだな。


 ルリは両親を見てすぐに駆け寄ろうとする。

 しかしカミラはそれを手で制した。


「待て。貴様のような弱い人間が魔物に立ち向かったら、それこそすぐに殺されてしまうぞ」

「で、でも……! お父さんとお母さんが!」


 悲愴な表情になるルリ。


「うむ……」


 正直こいつの両親がどうなろうが知ったこっちゃない。

 ルリ、そして両親を救う義理などカミラにはないのだ。


 とはいえ。


「このままこいつの両親が殺されるのも、なんだかおさまりが悪いな」


 それに私の目の前でこんなバッドエンドなど許さん! 

 なんと不敬なことであろうか!

 人間を殺していいのは私だけだ!


「仕方ない」


 彼女は重い体を引きずって、颯爽と剣でウルフに斬りかかった。


「私に出会ったのが運の尽きだったな」


 あっという間にウルフが斬り伏せられ、ただの死体となった。


「これで無事だ。感動の再会とやらをするがいい」

「お父さん、お母さん!」


 カミラがそう呼びかけると、ルリは両親のもとに走った。

 そして二人の胸に飛び込み、顔を埋める。


「ル、ルリ! 一体どこに行ってたんだ!」

「ごめんなさい……村の外に遊びに行っちゃったら、怖い人達にさらわれて……」

「そうだったのか。だがお前が無事に戻ってくれて、今はそれで十分だ」


 ルリとその両親は顔を泣きはらしている。


 ……なんだこの茶番は?


 くだらん。


 しかし不思議だ。カミラは自分の胸の内から、なにか熱いものが込み上げてくるのを感じた。


「ん? これは魔石か?」


 ふと見ると、地面に紅色の魔石が落ちているのを発見して、それを拾い上げる。


「自然のものではないな。どうやら人工的に作られたものらしい」


 魔力の分析は苦手だ。

 しかしそれでもカミラが調べてみると、どうやら魔石から出ている魔力によって魔物が活性化してしまっていることくらいは分かった。

 これのせいで《大騒動》を引き起こしているということか?


「一体人間はなんのつもりだ? こんなものを引き起こして。しかも同族が魔物に襲われて、殺されそうになっているのだから話にならんではないか」


 なにか実験をしていて失敗してしまったのだろうか?

 どちらにせよ間抜けな話だ。しかし自分には関係はない。


「ふん」


 カミラが魔石を思い切り握ると、パリンを音を立てて割れた。

 これでしばらくしたら、魔物も村から退いていくだろう。


 カミラがその場から立ち去ろうとすると、


「あのお姉ちゃんが助けてくれたんだ!」


 ルリが彼女を指差す。


「おお……! そうだったんですか。ルリをありがとうございます!」

「あなたがいなければ、ルリは無事では済まなかったでしょう!」


 今度はルリの両親がカミラに駆け寄ってきて、その手をぎゅっと握った。


「お、おお……別に礼はいらんぞ。用を済ませるついでだったしな」


 その二人の顔を見て、カミラは戸惑ってしまう。


 人間に礼を言われるなんて初めてのことだ……。


 だが、不思議と不快にはならない。

 それどころか照れくささを感じて、カミラは自分の頬を掻くのであった。


「だが……この村はもうお終いだ。すぐに逃げないと」


 両親の父がすぐに表情を引き締める。


 確かに……ルリの両親が言った通り、カミラが魔石を潰したとはいえ、まだ魔物は村に残っている。

 魔石の魔力をなくした魔物達は、これ以上数を増やすことはないと思う。

 だが、どうやらこの調子なら村の住民は今いる魔物達を全滅させることも難しそうだ。


 じきに村は崩壊するだろう。

 人もいっぱい死ぬ。


「ルリ……この村は貴様にとって大事なものなのか?」


 気紛れでカミラはルリに話しかけた。


「う、うん。わたしがお父さんとお母さんと過ごしてきた大切な場所。出来ればずーっとここに住みたいけど……」


 ルリが暗い表情を作る。

 それを見ていると、カミラは何故かいたたまれない気持ちになった。


「……仕方ない。このまま放置するのも胸くそ悪いしな。それにこの村の住民でブラッドのことを知っている者がいるかもしれん」


 カミラが肩を回す。


「待ってろ、ルリ。すぐにこいつ等を片付ける。貴様はこれからもここに住み続けろ」

「お姉ちゃん、なにを……」


 ルリが全てを言い終わらないうちに、カミラは疾走する。


 この調子ならここだけではなく、近くの村や街も同じような目に遭っているのかもしれない。


 ブラッドの話を聞くためには、そいつらを討伐する必要があるかもしれないが……やむを得ん。


 それに……。


「貴様等、人間共を恐怖のどん底に陥れるのは我等魔王軍の仕事だ」


 自分の知らないところで、人間共が蹂躙されているのはなんだか気持ち悪い。


「許可もなく、人間に襲いかかっているとは……タダで済むとは思うなよ?」


 疾風のごとく剣を振るい、次々と魔物をなぎ倒していくカミラの姿はまるで暴風のようであった。


 やがてそうかからないうちに、カミラは村にいた魔物の殲滅を全て完了するのであった。

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