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「無能はいらない」と言われたから絶縁してやった 〜最強の四天王に育てられた俺は、冒険者となり無双する〜【書籍化】  作者: 鬱沢色素
本編

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25・アリエルのお父さん

「まさかアリエルが領主様の娘だったとはな」


 馬車の中で、俺はアリエルにそう声を投げかけた。


「はい……」

「どうして嫌そうな顔をしているんだ?」

「あまりあなたには知られたくなかったので」


 アリエルは何故だか、暗い表情を作っていた。


 あれから俺はシエラさんにアリエルの家庭事情について聞いた。

 なんでもアリエルは『クアミア家』という貴族であるバイロン伯爵の、一人娘だったそうだ。


 そしてクアミア家というのは、ここら一帯の領主様だ。

 さらにその中には俺達は住む街、ノワールも含まれている。


 その丁寧な言葉遣いから、高位な身分とは思っていたが……まさかノワールの領主様と親子関係があったとは。


「ふーん……まあ俺は相手が貴族だからといって関係ない。アリエルがよければ、今後も仲良くしてくれると助かる」

「本当でしょうか?」


 アリエルが顔を上げる。


「あ、ああ。だが、どうしてそんなに前のめりなんだ?」

「嬉しくて……!」


 胸の前で手を組むアリエル。


 うむ……アリエルがなにを心配していたか分からないが、彼女にも色々悩み事があるらしい。


 本来アリエル一人だけで帰る予定だったが、シエラさんから渡された手紙には『ブリス君も一緒に来て欲しい』ということが書かれていた。

 なので俺達は一緒に、領主様のお屋敷に向かっているわけだ。


 その後、俺達は他愛もない話をしながら、クアミアの屋敷まで真っ直ぐ向かった。


「なかなか立派な建物だな」


 馬車を下ろされて一番最初に目に付いたのは、大きくて豪壮な建物であった。



「お嬢様。お待ちしておりました」



 建物を眺めていると。

 気付けば一人のメイドが俺達のもとにやって来て、そう出迎えた。


「シェリル。お久しぶりですわね」


 アリエルが声をかける。


「お嬢様もお元気そうで」


 そう言うメイド……シェリルは表情を一切変えなかった。どことなくエドラに似た雰囲気を感じる。


「ブリス、紹介いたしますわ。この子はクアミア家の筆頭メイドのシェリルと申します」

「筆頭? 随分若いように見えるが?」

「若いからといって侮らないでください」


 とシェリルは淡々と口にした。


「すまんすまん。俺はブリスだ。よろしくな」

「よろしくお願いします」


 握手をしようと手を差し出したが、シェリルはぷいっと視線を逸らして応じてくれなかった。


 俺、いきなり嫌われたのか?


「お嬢様。ご主人様がお待ちかねです。行きましょう」


 淡々とシェリルが告げ、屋敷の中に向かって歩き出した。


 俺達もその後を追いかける。


「なあ、アリエル」

「なんでしょうか?」


 シェリルに聞こえないように、ひそひそ声でアリエルに話しかけた。


「俺……シェリルって子に嫌われてんのか?」

「……? そういうわけではないと思いますが」

「でも……」

「ふふ。シェリルはこういう子なんですよ。別にあなたのことが嫌いなわけではありませんので、安心してください」


 微笑むアリエル。


 まあ嫌われていなかったらなによりだ。


「お嬢様、こちらです」


 やがて大きな扉の前につき、シェリルがそれを押し開ける。


 中には……。



「アリエルよ、久しぶりだな」



 白髭でダンディーなおっさんと、その隣には執事らしき男が控えていた。


「お父様、お久しぶりです。とはいっても三ヶ月ぶりくらいでしょうか」

「三ヶ月()だ」


 おっさんが苦笑する。


「ブリス。改めてご紹介いたしますわ。この人がわたくしの父、バイロン。そして隣にいるのが執事のディルクです」


 シェリルに引き続いて、アリエルが目の前のおっさん……バイロンさんを紹介してくれた。

 というかいつの間にかシェリルがいなくなっている。自分の役目が終わったら、さっさといなくなるとは……プロだ。


 執事のディルクという男は、軽く頭を下げただけでなにも言葉を発しなかった。


「初めまして。俺はブリスです」

「君の噂は常々聞いているよ。なんでもゴブリンマスターをたった一人で倒したそうではないか」

「そんなことはありません。あれは調査隊みんなの力です」

「……そして謙虚な男だとも聞いていたが、話の通りだったみたいだ」


 バイロンさんの感心するような声。


 褒めてはくれているが、俺を品定めするような厳しい視線を感じる。

 まあ俺みたいな身分もよく分からないヤツが、目の前にいるんだからな。警戒心を強くするのは正解とも言えるだろう。


「それでお父様。お話とはなんでしょうか?」


 アリエルが話の本題に入る。


「話? 父が娘に会いたいと思うのは不自然なことかね?」

「わたくし、これでも冒険者として忙しいのです。あまりこういうことに時間を割いていられないのですが?」


 アリエルの険がある声。


 珍しいな。

 いつも優しいアリエルが、こんな風に人と接するところは初めて見るかもしれない。

 もしかしてこの二人、仲が悪かったりするのだろうか。


()()()としてね……」


 バイロンさんは含みを持たせた言い方をする。


「聞いたぞ。なんでもSランクに昇格したらしいではないか」

「そうです。これでもノワール唯一のSランクなんですよ」

「それは素晴らしいことだ。しかしアリエルよ……そろそろ冒険者を……」


 バイロンさんがなにか言いかける。


 しかしそれに被せるようにして、



「止めましょう、お父様。客人もいるのですよ? そんな話をここでするのは」



 とアリエルがすかさず言った。

 言葉には少し怒りが含まれているように感じた。


 アリエルに鋭い視線を向けられて、バイロンさんは深く溜息を吐く。


「そうだな、失礼した。まあ今日は泊まっていくといい。そこのブリスにも部屋を用意しておる。この屋敷には広い風呂もあるし、今日はゆっくりとしていくといい」

「いいのですか?」

「ブリスは冒険者になったばかりだが、かなり優秀と聞いておるしな。そのおかげでノワールも平和が保たれている。歓迎するのは当然のことだろう?」

「……じゃあお言葉に甘えまして」


 それにアリエルも心配だしな。


 直帰するのもあれだし、今回はバイロンさんの言葉を受け入れよう。


「ではシェリルよ。客人を部屋まで案内してあげるといい。私はアリエルともう少し話があるからな」

「はっ」


 うおっ、ビックリした!

 いなくなったと思っていたシェリルが、いつの間にか隣に立っていた。


 この人……メイドとしても優秀だと思うが、冒険者とかになったらそれはそれで良いところまで行けるのではないだろうか?


「では行きましょう」

「あ、ああ……」


 心臓がバクバクしていたが、それを悟られないように冷静にそう返した。


 部屋から出て行こうとする時。


「ブリスよ。一つ、聞かせてもらってもよいか?」


 バイロンさんに声をかけられた。


「なんでしょうか?」

「その……なんだ。アリエルとはどういう関係なのだ?」


 関係?


「友達ですね。俺が冒険者になりたての頃に、色々教えてもらいましたので」

「友達か……うむ。友達なら()()()()大丈夫だ」


 ギリギリ? 

 ならこの線を越えてしまえば、どうなるというのだろうか。


 バイロンさんはコホンと一つ咳払いをして、仰々(ぎょうぎょう)しくこう続けた。


「一応警告しておく。もし……私の娘に手を出そうとしたら、クアミア家全勢力を上げて貴様……失敬。そなたに罰を与えなければならない。そこは分かっているだろうな?」

「ちなみに……手を出すってどのレベルですか?」

「肌と肌が触れ合うレベルだ」


 厳しっ!

 だがバイロンさんの表情を見ると、冗談を言っているような雰囲気は一切なく、どうやら本気で言っているようだ。


「は、はは……そんなわけ、ないに決まっているじゃないですか。安心してください。では俺はこれで……」

「うむ」


 扉が閉められる。


 その……あれだな。

 昨日酒場で起こったことは、バイロンさんに言えるわけもない。

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