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「無能はいらない」と言われたから絶縁してやった 〜最強の四天王に育てられた俺は、冒険者となり無双する〜【書籍化】  作者: 鬱沢色素
本編

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21・魔王の帰還

四天王視点です。

※ブラッド = ブリス

 魔王城。

 城の入り口で配下達が並び、魔王の帰還を出迎えていた。



「うむ。戻ってきたぞ」



 頭を下げる配下に向かって、魔王は堂々と告げた。


 見た目は褐色肌の幼女である。

 しかし頭には二本の角を生やし、内に秘める大量で上質な魔力を見れば、ただの幼女ではないことは一目瞭然であろう。


「魔王様。お元気そうでなによりです」


 四天王の一人『治癒』の最強格、ブレンダが頭を下げたまま言う。


「うむ。顔を上げてよいぞ。そうへりくだらなくてもよい」

「はっ」


 魔王に言われ、ブレンダはゆっくりと顔を上げる。


「四天王の皆も元気そうではないか。しっかりと城を守ってくれたようだな」


 満足そうに魔王が告げる。

 そしてキョロキョロと辺りを見渡した。


 まずい……! 

 ブレンダはすぐさま機転を利かせ、口を開く。


「ま、魔王様もお疲れでしょう。今日のところはお休みになられてはどうですか? お風呂にしますか? それともご飯? 魔王様が大好きなふかふかお布団も、用意しておりますので……」

「おお、そうかそうか。われはこの城のふかふかお布団が大好きなのじゃ。お日様の匂いがするからのう」

「だったら……」

「だが、休む前に一つ聞いておきたいことがある」


 心臓が縮み上がるような思い。


 魔王は周囲を眺めつつ、こう続けた。



「ブラッドちゃんはどこにおるのだ?」



「——っ」


 ついに来たか。


 四天王はあれから、ブラッドを血眼になって探していた。

 それはそれは血反吐を吐くような勢いだった。


(しかし……結局ブラッドは見つからなかった)


 一体どこにいるのやら。

 そしてブラッドが見つからないまま、とうとう魔王様の帰還の今日こんにちとなったわけである。


「ブ、ブラッドは……」

「どこにもいないようだが? も、もしやブラッドちゃんの身になにかよからぬことが……」

「い、いえ!」


 ブレンダが慌てて、魔王にこう告げた。


「ブ、ブラッドは……! 魔王様の帰還祝いのプレゼント買いに、城外にお出かけに行っています!」

「なぬ。そ、それは本当か?」


 魔王の眉ねがピクリと動く。


 もう後戻りは出来ない。

 後ろから残りの四天王達からの熱視線を感じる。こういう場で、比較的話術に強いブレンダが、誤魔化す役目に任命されたのだ。


 ブレンダは四天王達の未来、そしてこの世界の平和を願いつつ、早口でまくし立てた。


「ほ、本当です! 魔王様が城に帰られるのは久しぶりですからね。とびっきりのプレゼントを探しているはずです!」

「おお、そうかそうか。我のブラッドちゃんがそんなことを……嬉しいのう」


 魔王の機嫌が見る見るうちに良くなっていく。


 しかしすぐに、


「だが、どうして戻ってきていないのだ? 我が戻る日はブラッドちゃんには伝えているだろう?」

「も、もちろんです!」

「なら……」

「な、なかなかプレゼント選びに苦戦しているようです! ブラッドもなんとか間に合わせようとしたんですが、無理だったようで……あ、安心してくださいっ! 魔王様がまた出かけるまでには、()()戻ってきますので!」


 これが四天王達が考えた『取りあえず問題は先延さきのばしにしよう作戦』である。


 正直苦しい言い訳だとブレンダは自分でも思った。


 だが。


「ふふふ、ブラッドちゃんが我のために、そんな必至になってプレゼントを選んでくれるのは嬉しいのう。それなら仕方がないか……」


 少し落ち込んだ様子ながらも、どうやら魔王にブレンダ達の嘘はバレていないようだ。


「しかし」

「ひゃ、ひゃい!」


 ギロッと魔王がブレンダを見る。

 一睨みされただけで、ブレンダは蛇に睨まれたカエルのような気分になった。


「ブラッドちゃん一人だけでは危険ではないのか? 城の外は危険に満ちあふれておる。古代竜エンシェントドラゴンなんかに遭遇すれば、食べられちゃうかもしれない。人間の間で()()()()噂も聞くしな。それなのにお主等は、ブラッドちゃんを一人で行かせたということなのか……?」

「い、いえ! もちろん、ブラッド一人ではありません! 万全を期して四天王のカミラを護衛につかせています!」

「ほお」


 そう……現在、『魔法』の最強格クレア、『支援』の最強格であるローレンス、そしてブレンダはこの場にいるのだが、カミラだけがいない。

 そのことに言われるまで気付かなかったほど、魔王はブラッド一人しか眼中にないのだろう。


 無論、カミラをブラッドの護衛につかせているのは嘘だ。


 カミラはこうしている間にも、ブラッドの捜索に出かけている。


(せめて……こうして時間をかけている間にも、カミラがブラッドを見つけることが出来れば……!)


 それはブラッドを家出させた直接の原因である、カミラに対する罰でもあった。


「カミラがいるなら、大丈夫か……まあそもそも、ブラッドちゃん一人だけでも随分()()からのう。あまり過保護にするのもいけんか」


 魔王は言った。


「まだ魔王様はブラッドを正統後継者とお考えで?」

「うむ。もちろんだ」


 力強い言葉で断定する魔王。


「剣、魔法、治癒、支援……それぞれの分野においては、四天王のお主等に敵う者は誰一人おらんだろう。しかし……こと、全ての分野で総合して考えた時、我の次にブラッドが最強であることは間違いないのだからな」

「ご、ごもっともです!」


 そんなことはブレンダ達だって分かっていた。


 しかし、それが分かってブラッドが調子に乗って鍛錬を止めてしまわないように……四天王達は口裏を合わせ、心を鬼して今まで厳しく接してきた。

 魔王の言っていることには間違いはない。


「まあブラッドちゃんのことは、ひとまず置いておこう。我はお腹が空いた。ブレンダ、今日のディナーは用意しておるかのう?」

「もちろんです! すぐに食堂に来てください!」


 表面上は表情を変えないブレンダ。

 しかし心のうちでは「た、助かったーーーーーー!」と絶叫したい思いに駆られていた。


 とはいえ、問題は先延ばしにしただけだ。

 魔王様がいるうちに、カミラがブラッドを見つけてこなければ……よくて空は暗黒。悪くて世界滅亡のバッドエンドに直行する。


(頼みましたよ……カミラ)


 今頃カミラはどこでなにをしているんだろうか……。

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― 新着の感想 ―
[一言] なるほど 慢心しないように 厳しくやってたら やりすぎてしまったのか 昭和のスポ根漫画でよくあるやつですね
[気になる点] ここまで読みました! 四天王・・・ブラッドが慢心したり図に乗ってから腕を切り落としたり毒攻めすればよかったのに、やっぱ強者は常識や道徳心は薄くて・・・バカなのかな?
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