表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/130

15・調査隊集結。魔法使いの可愛い女の子がいた

 翌朝。

 俺とアリエルは森の前で、調査隊のみんなが集まるのを待っていた。


「どういう人が来るんでしょうか?」

「さあ……」


 優しい人達だったらいいなあ。


「ブリス。みんなが来る前に、一つだけアドバイスさせてもらっていいでしょうか?」

「なんだ?」

「その……謙虚なブリスも素晴らしいと思うのですが、みんなの前で敬語は止めておいた方がいいと思います」


 アリエルは何故だか、申し訳なさそうな口調で告げた。


「確か敬語を使っていたら、他の冒険者に舐められる……だっけな」


 俺が言うと、アリエルはコクリと頷く。


「ただでさえブリスはDランクなんですからね。もちろんランクだけで、人の善し悪しを決めるなど愚かなことだと思います。ですが、自分のランクより下の人間を見下す方もいますので……」

「まあ舐められても、あまり良い気分にはならないな」

「でしょ? だからブリスは堂々としておけばいいですわ。実力は誰よりもありますので」

「分かった。ありがとう」


 アリエルの忠告もごもっともなことであろう。


 実力は誰よりもある……というところは引っ掛かるが、アリエルが言っていることだし信じよう。


 彼女とそんな話をしていたら、続々と調査隊の他のメンバーが集まってきた。



「これで全員でしょうか?」



 集結したゴブリンキング調査隊のメンバーを見て、アリエルが問う。


 最終的にシエラさんから聞いていた調査隊の人数は、俺達を入れて十人ぴったり……誰一人遅れずに来たみたいだな。


「初めましての方は初めまして。わたくしはアリエルと申します。一応今回の調査隊の隊長をやらせていただきます。仕切るのは不慣れですが、頑張りますね。よろしくお願いします」


 ペコリとアリエルが頭を下げた。


 その様子を見て、他の冒険者達は……、



「わあ……Sランク冒険者のアリエルさんだ。初めて見た」

「後で握手してもらおうかな」

「おいおい。まずは依頼を無事にこなさないといけねえぞ。ゴブリンキングを相手にするのは、さすがに骨が折れる」

「キレイだなあ」



 とアリエルに見惚みほれているようであった。


 やはりアリエルは人気者だ。全員、彼女のことはあらかじめ知っているようであった。


「はは! 一時的とはいえ、アリエルさんと一緒にパーティーを組めるなんて光栄だぜ。オレはチャド。よろしくな」


 チャドと名乗った男が、アリエルに手を差し出す。彼女もそれを受け入れ、彼と握手をした。


「えーっと、君は……」


 困惑した表情で、チャドが俺に視線を移す。


「俺はブリスだ。サポート役として調査隊のメンバーに加わっている」

「ブリス……ブリス。どこかで聞いたことあるような……」

「ブリスはこれでも、ゴブリンキング十体以上を一人で倒したんですわよ。謙虚な方ですので、サポート役と言っていますが、実質調査隊のメイン戦力です。えっへん」


 チャドが記憶をさかのぼっていると、隣からアリエルがフォローを入れる。


 どうしてそんなに誇らしげなんだ?


「ゴ、ゴブリンキング!? そういや、そんな噂がギルド中で流れていたな。しかもDランクの新人だって。嘘だと思っていたが、まさか実在していたとは……」


 チャドは俺を見て、驚きを隠せないようであった。


「その……なんだ。ゴブリンキングくらいなら、俺一人でもやれる。Dランクだからといって、心配しないでくれ」

「ああ、もちろんだ! 信じがたいが、アリエルさんのお墨付きなんだからな。握手してもらってもいいか?」

「もちろんだ」


 チャドと手を握り合う。


「これでもオレはBランクだ。経験も長いし、ノワールの森の地形ならよく分かっているつもりだ。君の足を引っ張らない程度には頑張るから、安心してくれ」

「頼もしいよ」


 他のメンバーも半信半疑ながら、少なくても俺を嫌悪しているような人物はいないようであった。


 だが俺はその中で一人、みんなの輪から離れて立っている少女に目がいった。


「……君は?」


 話しかけると少女はゆっくりとこちらに顔を向けた。


「エドラ……。魔法使い、よろしく」


 彼女——エドラは短く名乗ると、すぐに俺から視線を逸らす。


 白のフードを被った少女である。全体的にダウナーな雰囲気が漂っているが、顔立ちは整っていてとても美人だ。

 思わず彼女の顔を見て、一瞬息を呑み込んでしまった。


「エドラ……確かAランクの魔法使いでしたわね?」


 アリエルが近寄りエドラに訊ねるが、彼女から返事は返ってこなかった。


「知ってるのか?」

「ええ、有名人ですもの。実力は確かですが、誰ともつるもうとしないって。まさか調査隊のメンバーに加わってくれるとは思っていませんでした」


 アリエルが驚いていると、


「金払いが……よかったから」


 またもや最低限の言葉でエドラは答えた。

 しかし相変わらず、俺達と視線を合わせてくれなかった。


「……まあ確かに依頼の報酬金はよかったな」

「ですわね」


 とはいえ調査隊となれば、チームワークも必要になってくるだろう。

 果たしてこの調査の中で、彼女とコミュニケーションを取ることが出来るのだろうか……。


「ふふ、ブリス。心配しなくてもいいと思いますわ」


 俺の考えを読んでのことなのか、アリエルが微笑む。


「悪い子ではないとは聞いています。それに高位の魔法使いは貴重です。どーんと構えましょう」

「そうか。ならアリエルの言った通り、どーんと構えるよ」

「はい。どーんとです」


 もしかしたらエドラはただ恥ずかしがり屋だけなのかもしれない。


 これは俺の勘だが……別にエドラは俺が嫌いだから、こういう態度を取っているわけではないだろう。

 その証拠に顔を逸らしたものの、エドラはチラチラとこちらを気にする素振りを見せている。


「なんだ?」

「……!」


 問いかけると、すぐにエドラは慌てて顔をぷいっと別の方向に向けてしまった。

 魔法使いというのはコミュニケーションが苦手な研究者タイプも多い。エドラもその類だったらいいんだが。


「それにしても魔法か」


 どうしても四天王の『魔法』の最強格であるクレア姉を思い出してしまうな。

 彼女はことあるごとに、俺を魔法で痛めつけてきたな。



『くくく。ブラッドが毒で苦しんでいる顔も可愛いのう! よし、後三セットじゃ。もう少しでお主は毒の極地を体感するはずじゃ!』



 魔法狂まほうきょうであるクレア姉は常々そんなことを言っていたが、結局『毒の極地』なるものは見たことがない。


「……ダメだ、ダメだ。俺は生まれ変わったんだ。あいつ等のことを思い出すのは止めよう」

「ブリス?」


 アリエルが首をかしげる。


「なんでもない。じゃあ準備も出来たし、早速調査を開始しようか」

「ですわね」


 アリエルが先導し、俺達調査隊のメンバーはノワールの森を進んでいくのであった。

 調査開始だ。

書き上がれば、今日はあと一回更新予定です。

がんばります…!


「更新がんばれ!」「続きも読む!」と思ってくださったら、

下記にある広告下の【☆☆☆☆☆】で評価していただけますと、執筆の励みになります!

よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
☆コミカライズが絶賛連載・書籍発売中☆

マガポケ(web連載)→https://pocket.shonenmagazine.com/episode/3270375685333031001
講談社販売サイト→https://kc.kodansha.co.jp/product?item=0000372856

☆Kラノベブックス様より小説版の書籍も発売中☆
最新3巻が発売中
4fkeqs9af7bucs8gz4c9i682mj_6xg_140_1kw_aw2z.jpg

☆☆新作です。よろしければ、こちらもどうぞです☆☆
「憎まれ悪役令嬢のやり直し 〜今度も愛されなくて構いません〜」
― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公の過去の苦労が忍ばれる。 [一言] 頼むからハーレムルートだけはやめてください。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ