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14・調査隊

「わたくしが……調査隊の隊長ですか?」


 アリエルが質問すると、シエラさんはコクリと首を縦に動かした。


「はい」

「でもどうしてわたくしが?」

「アリエルさんは当ギルドで唯一のSランク冒険者ですからね。これほど、ふさわしいかたもいないと思うのですが……?」


 まあ確かにそれは言えてる。

 彼女ほど人気と実力を兼ね備えているなら、上として引っ張ってもらえる方が人は付いてきそうだ。


「やっぱり……ゴブリンキングの大量出現は、森の異変だと考えている。ギルドはそう見ているんですよね?」


 今度は俺が問いかけると、再びシエラさんは頷いた。


「はい。今までノワールの森にこんなことは起こりませんでした。本来ゴブリンキングが一体現れただけでも、ギルドでは騒ぎになっていたんですよ。それなのに……いきなり十体以上だなんて。森でなにか異変が起こっている可能性があります。このまま放置しておくとあまり良くない事態を生むかもしれません」

「あまり良くない事態とは?」

「たとえば……《大騒動スタンピード》が起こるような可能性です」


大騒動スタンピード》という単語に、アリエルの表情が強ばった。


大騒動スタンピード》とは、大量の魔物が一気に街に押し寄せてくる現象……だったはずだ。


 どれだけ大量かと言われると、その街の冒険者や騎士全員でも対処しきれない数のことを言う。

 そうなるとキャパがオーバーし、街が壊滅状態になってしまう。最悪の場合、街を放棄する必要も出てくるのだ。

 このようなことが起こらないように、冒険者は街の近くの魔物を定期的に狩っているのだ。


 ……ということを、四天王のクレア姉が偉そうに講釈こうしゃく垂れていた。

 あいつ等の言うことも、たまには役に立つものだ。


「まだ十体くらいなら、かなり苦しい戦いになるかもしれませんが、街の冒険者全員で対処出来るかもしれません……まあブリスさんがいるので、大丈夫かもしれませんが」


 とシエラさんは話を続ける。


「しかしこれが二十、三十……百体以上となれば? 冒険者のキャパを超え、《大騒動》となります。このような事態になる前に、ゴブリンキング大量出現の理由を突き止め、そして未然に防がなければなりません」


 うむ。シエラさんの言っていることもごもっともなことだな。

 Sランク冒険者のアリエルに頼むほどだ。ギルドもこの事態を重く見ているということか。


「……分かりました。わたくしに隊長が務まるかは分かりませんが、なんとかやり遂げてみせます」

「あ、ありがとうございます!」

「ですが!」


 アリエルが人差し指を突き立てる。


「一つだけ条件があります」

「な、なんでしょうか……?」


 恐る恐るシエラさんは口を動かす。


 アリエルは突き立てた指をそのまま動かし……俺を指差した。


「ブリスも調査隊のメンバーに加えてください。それが条件です」

「俺か?」


 急に話を振られ、つい聞き返してしまう。


 だが、シエラさんは「なにを当たり前なことを」といった顔で、


「は、はい! もちろんです! それにどちらにせよ、ブリスさんにも声をかけようと思っていました。実力的にも申し分ありませんし、前はあれだけ大量のゴブリンキングを倒してましたから!」


 とまくし立てた。


 まいったな……。

 どうやら俺も参加する流れだ。


「ブリス。よろしいでしょうか?」

「まあそれで街の平和が守れるなら……それに俺もゴブリンキングについては気になるしな」


 俺はどうやら結構強いみたいなのだ。

 正直シエラさん達が「なにをそんなに思い詰めているんだ?」と思わないこともないが、ゴブリンキングはアリエルでも手間取っていた。

 俺が行かないわけもいかないだろう。彼女のことも心配だし。


「十体や二十体くらいなら、俺一人でもなんとかなるが、百体以上となるとな。さすがに面倒臭いし、足下をすくわれかねない」

「油断もしない……さすがブリスさんですね。強い人は不用心であることが多いんですが、ブリスさんに関しては心配なしです。慎重なブリスさんもカッコいいです!」


 シエラさんが言った。


 俺としては、まだ自分が強いことに半信半疑だ。街のみんなでドッキリを仕掛けてるんじゃないか? と心のどこかで思っている。

 だからそんなに褒められると、どこかむず痒い気持ちになった。


「調査隊について聞きたい。調査隊は何人くらいを予定しているんですか?」


 戦力の把握は重要だ。

 シエラさんに質問する。


「十人程度を予定しています。それ以上増えると、統率が取れなくなる可能性もありますから……あっ。Cランク以上の方だけに声をかけるので、心配しないでくださいね。新人冒険者には声をかけませんから」

「俺も新人冒険者なんですけど……」


 というかDランクなので、Cランク以上という条件も果たしていない。


「ブリスさんは特別です!」


 俺が苦笑すると、シエラさんはすぐさま否定した。


「いつに作戦を開始でしょうか?」


 今度はアリエルが訊ねる。


「明日の朝を予定しています。本当は今すぐにでも……と言いたいところですが、調査隊のメンバーがまだ確定していませんので。アリエルさんにはいち早く、と思い声をかけさせてもらいました」

「分かりましたわ。ブリス、明日は頑張りましょうね」

「ああ」

「わたくしを守ってくださいましね」

「それはお互い様だよ」


 と俺は肩をすくめた。

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