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魔王はやっぱり浪漫を追い求めたい

コミカライズ8巻が好評発売中です!

「型無しか……」


 魔王は先ほど、四天王《剣》の最強格カミラに言われていたことを、思い出していた。



『型が無ければ、ただの型無しだぞ』



 これは剣術に限らず、なにかを学ぶ際に必須となるべき考えである。


 一本の剣も満足に扱えないのに、二刀流にしようなどとは──邪道を通り越して、無謀の一言。

 ブラッドを教育するうえで、カミラの考えは間違っていない。


 しかし彼女と別れてから、魔王はふとこう思うのであった。


「ん? 我、結構強いぞ? とっくに型など身についておる。ブラッドちゃんはともかく、我は二刀流でも大丈夫なのでは?」


 二刀流……いわば浪漫である。


 我が二刀流で華麗に魔物を倒せば、ブラッドちゃんはどんな顔をするだろうか──。

 きっと、『魔王はやっぱりカッコいい!』となるに違いない。


「そうと分かれば、特訓じゃ! 我は二刀流で魔物を倒しにゆくぞ!」


 そう意気込み、魔王は城を出た。




 魔王城の外。

 そこは凶悪な魔物が蔓延る森に囲まれている。

 しかし、どんなに強い魔物であっても、魔王の前では敵じゃなかった。


「ふう……やはり、我なら二刀流でも戦えるな。これならブラッドちゃんも我を尊敬してくれるだろう」


 積み重なった魔物の死体の山。

 魔王はその頂上に鎮座し、そう言葉を漏らす。

 彼女の両手には、二本の同じような剣が握られていた。


「一刀が王道だというカミラの意見も分かるが、我は浪漫を追い求めたいからな。許せ、カミラ」


 さて──と、死体の山から飛び降り、魔王は城の方角へと顔を向ける。


「そろそろ帰るか。腹も減ったしな」


 そして歩き出そうとした瞬間──辺りが真っ暗になる。


「ん……?」


 見上げると、古代竜エンシェントドラゴンが空から魔王に照準を合わせていた。


「ほほお……我に刃向かおうとするとは、いい度胸だ。フィナーレとしては丁度いい。我が二刀流の錆としてやろう」


 ニヤリと笑い、魔王は強く地面を蹴った。


 古代竜エンシェントドラゴンと同じ高さまで上昇し、二本の剣を振り上げる。


「秘技──二刀乱舞!」


 ついあっき適当に考えた技名を叫び、魔王は剣を振り下ろした。


 右の剣が古代竜エンシェントドラゴンを両断し、断末魔も上げず空の覇者を地面に墜落する。


 だがこの時、トラブルが起こる。


「ふんがっ!?」


 左手で握っていた剣がすっぽ抜けてしまったのだ。


 常人なら、大した出来事ではない。

 しかし魔王の剣を振る速度は尋常じゃなかった。その激しい勢いのまま、すっぽ抜けた剣が魔王城へと向かっていく。

 その様はまさしく、一筋の流れ星のようである。


「いかんっ!」


 魔王は焦りの声を発する。


 何故なら勢いを保ったままぐんぐんと速度を上げる剣が、魔王城に衝突すれば……タダでは済まないからだ。

 カミラにも怒られる。


「くっ……止まれええええええええ!」


 魔王は即座に手をかざし、魔法で剣の勢いを殺そうとする。


 すっぽ抜けた剣の勢い──そして魔王本気の魔法の力は、奇跡的に釣り合った。


 彼女の頬から、細い汗が滴り落ちる。

 どんな強敵を前にしても、滅多に余裕を崩さなかった魔王が久しぶりに顔を歪めた。


 その成果あってのことなのか──やがて、すっぽ抜けた剣の勢いは弱くなり、城に当たる直前で停止してくれたのだった。


「はあっ、はあっ……冷や汗をかいた」


 と魔王はほっと安堵の息を吐く。


「……やっぱり、調子に乗ってはダメだ。カミラの言いつけをちゃんと守ろう」


 続けてぼそっと呟き、魔王は反省するのであった。





 後日──。

 四天王の間で「城に隕石が落ちそうになった!」と話題になっていたが、魔王は素知らぬ顔をしていたのは言うまでもない。

白土悠介先生による、コミカライズ8巻が発売されました!

武闘大会もとうとう大詰め。激しいバトルが展開されています。

よろしくお願いいたします!

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☆☆新作です。よろしければ、こちらもどうぞです☆☆
「憎まれ悪役令嬢のやり直し 〜今度も愛されなくて構いません〜」
― 新着の感想 ―
[一言] 魔王ちゃんェ…。
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