表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

124/130

四天王の料理特訓

白土悠介先生によるコミカライズ5巻が本日発売です!

こちらは発売記念短編となっています。よろしくお願いいたします。

 先日、四天王たちによる『料理対決』が行われた。

 結果は皆、散々なもので、「他人に不快感や被害を与えない」という消極的な理由でクレア姉の『無』が優勝した。


 しかしそれではあんまりだ──と四天王たちも自覚したようで、クレア姉とカミラ姉による、料理特訓が行われた。


 ちなみに……完成した料理を品評するのは俺。

 せめて食える程度の料理が出てくれれば……と期待するが、どうにもその願いは叶えられそうにない。


 とはいうものの──。



「うおおおおおおお!」



 肉の塊を前にして、クレア姉が雄叫びを上げる。


「おい! クレア! 大丈夫か!?」

「問題ない! 今度こそは出力を間違えん!」


 クレア姉が赤色の魔力を纏う。

 灼熱が唸りを上げて舞い、クレア姉はその魔法名を告げた。


「ファイアートルネード──極小バージョン!」


 炎系の魔法の中でも、最上級に位置する魔法。

 そんなものを肉の塊に施せば、たちまち消し炭になるところだったが、今回は違った。

 普段のファイアートルネードの、()()()()()にまで出力を制限した炎魔法は、肉の塊に僅かな焦げ目を付けるだけで済んだ。

 香ばしい匂いが漂ってきて、俺のお腹がぐうーっと鳴った。


「よし! 上手くいった! あとはブラッドが食べやすいようにカットするだけじゃ!」

「任せろ!」


 カミラ姉が剣を構える。

 目を瞑り、精神統一するカミラ姐。その姿はさながら、神の啓示に耳を傾ける修行僧のようだ。


 そしてカッと目を見開き、


「剣舞──《鳳凰舞炎刃ほうおうえんじん》!」


 技名を高らかに宣言し、目にも止まらぬ剣捌きで焼かれた肉を一閃する。


 伝説の生き物──鳳凰の美しい舞を模倣し、敵を焼き斬るカミラ姉だけが使える奥義だ。

 俺も久しぶりに目にしたので、思わず「おお!」と声を上げてしまった。

 彼女も全力だ。このクッキング特訓に並々ならぬ想いを抱いているのだと、はっきりと分かる。


 だが、それがいけなかった。

 カミラ姉の全力の剣技に、ただの肉が耐え切れるわけもなく──あっという間に、この世から消滅してしまった。


「…………」

「……おい」


 クレア姉が鋭い眼光をカミラ姉に向ける。


「お主はバカか!? 肉がなくなっておるではないか!」

「うるせえ! みじん切りにしろと言ったのは、貴様の方だろうが!」

「これがみじん切りじゃと? お主は手加減を覚えろ!」


 あーあ……また始まった。

 カミラ姉とクレア姉はお互いの髪や頬を引っ張り、醜い喧嘩を始める。


 二人の争いによって、魔王城が微震する。

 城は老朽化も進んでるっていうのに……彼女たちはまた、魔王に怒られたいんだろうか。


「お腹、空いたなあ……」


 幼い頃の俺は腹を押さえ、先ほどまで肉の塊が置かれていた空間を、見つめていたのであった。

白土悠介先生によるコミカライズ五巻が発売されました。

書店などでぜひ、手に取っていただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
☆コミカライズが絶賛連載・書籍発売中☆

マガポケ(web連載)→https://pocket.shonenmagazine.com/episode/3270375685333031001
講談社販売サイト→https://kc.kodansha.co.jp/product?item=0000372856

☆Kラノベブックス様より小説版の書籍も発売中☆
最新3巻が発売中
4fkeqs9af7bucs8gz4c9i682mj_6xg_140_1kw_aw2z.jpg

☆☆新作です。よろしければ、こちらもどうぞです☆☆
「憎まれ悪役令嬢のやり直し 〜今度も愛されなくて構いません〜」
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ