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四天王たちは可愛い弟を鍛えたい

コミカライズ一巻、発売記念短編です。

「今週のブラッドには、どのような訓練を施す?」



 魔王城。

 会議室で《剣》《魔法》《治癒》《支援》それぞれの最強格──四天王が一同に介していた。

 皆、表情が真剣そのもので、場には重苦しい雰囲気が流れていた。


「体に魔法で電流を流すのはどうじゃ? 強い男を目指すなら、雷の直撃くらいは耐えられないと話にならぬしな。耐性を付けたい」

「ちっ……てめぇは、そんなのしか思い付かないのかよ! 相変わらず脳筋だな!」

「カミラ、お主には言われとうない!」


 カミラとクレアがバチバチと視線で火花を散らす。


「こらこら、喧嘩はやめなさい。そう言うカミラは、なにか良い案はあるのですか?」


 ブレンダがカミラに質問を飛ばす。


 するとカミラは自信満々の表情で。


「うむ……ブラッドも、剣技については、()()()()身についてきた。しかしいかんせん、体術についてはまだまだだ。きっと剣に頼った戦い方に慣れてきたためだろう」

「確かに、体術は全ての基本ですからね。まずはその基本をしっかりと身につけようというのは分かります。さすが四天王一の理論派カミラ。ということは、ブラッドには体術を施すと?」

「そうだな。まずは魔王城の周りをランニングさせよう。一日百周。その後は腕立て伏せと腹筋を十万回ずつ……一連の準備体操が終わった後、体術の訓練に移ろうと思う」

「お主の言ってることも大概じゃろうが。そんなことをしていたら日が暮れる」

「なにを言いやがる。ブラッドは普通の人間じゃねえ。これくらいやらないと、私とまともに戦うことも出来ん。お前よりは百倍タメになることを言ったつもりじゃが?」

「なんだとっ!?」


 カミラがクレアに掴みかかる。髪を引っ張られたクレアは、代わりにカミラのほっぺを押して対抗する。


 子どもじみた二人の喧嘩に、ブレンダは溜め息を吐いた。


「ローレンスはなにかありますか?」


 カミラとクレア──バカ二人の話に付き合いきれなくなり、ブレンダはローレンスに話を振る。


「ふえぇ、ボクはカミラとクレアみたいに厳しい訓練を施すつもりはないよぉ」

「そうですね。あまり厳しいことを押し付けられたら、ブラッドが泣いちゃうかもしれません。まあ、その程度で逃げ出すほど柔な精神力メンタルはしていないと思いますが……」

「でしょ? だからボクはブラッドを癒したい。だから魔王城の敷地内にある『オマール谷』の足湯に連れて行こうと思うんだー」

「一つくらい、そういう趣旨のものがあってもいいかもしれませんね。オマール谷の足湯に浸かれば、疲れが一気に吹っ飛ぶでしょう」

「うんうん!」


 ローレンスは表情を明るくする。


 ちなみに──オマール谷は、魔王城敷地内の中でも屈指の攻略難易度を誇るダンジョンである。

 そして足湯は、そんなオマール谷の頂上にある。無論、ただの足湯ではなく『浸けた足を一度腐敗させ、その後再生させる。再生させた後はすっかり疲れは取れているが、腐敗していく過程は地獄のような苦しみで──』という宣伝文句(?)が付いており、屈強な魔族でも裸足で逃げ出すほどの荒療治なのだ。足湯だけに。


「プリンの方が旨い!」

「ヨーグルトじゃ!」


 一体どこをどうなったのか、「プリンとヨーグルト、どっちが旨いか」論争に発展しているカミラとクレアをチラッと見てから、今度はローレンスがブレンダにこう問いを投げる。


「ブレンダはなにを考えているの?」

「私はそこまで大したものではありませんよ。ブラッドには蘇生魔法をそろそろ使えるようになって欲しいんです。なので見本を見せるためにも、一度ブラッドに()()()もらってから、蘇生魔法をかけようと思います」

「いいね! お手本があった方が、ブラッドもやりやすいだろうしね!」


 ニコニコと笑みを浮かべるローレンス。



 そう──。

 この四天王たち、やり方は少し違うものの、全員がナチュラルにブラッドを痛めつける算段をしている。

 しかし過酷な環境下で生き抜いてきた彼女たちには、それに気付いておらず、こうして地獄のような話し合いになっているというわけだ。



「カミラ、クレア! いい加減、喧嘩をやめなさい! 会議が進みません!」

「だ、だが、クレアがバカだから……」

「お主の方がバカじゃろうが!」

「こんの……っ! いつも喧嘩ばかりしやがりまして……」


 とうとう怒りの沸点に達したブレンダの拳が、会議室のテーブルに叩き落とされる。

 たった一発の拳でテーブルが真っ二つに割れ、部屋の壁や天井にヒビが入った。


「あなたたちのせいで、会議でいつもまともな結論に至らないでしょうが! ブラッドのことをちゃんと考えているのですか!?」

「や、やべえ! ブレンダが怒った!」

「こやつは怒ると、一番タチが悪い! おい、カミラ。ここは一時的に共闘して……」


 その後。

 ブレンダの危惧通り、会議で話した内容が曖昧となってしまい、時間を無駄にしてしまう四天王一同であった。

コミカライズ一巻が本日発売となりました!

よろしくお願いいたします。

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