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116・長旅の終着点

 ──あれから幾許かの月日が流れた。



「モーガンさん」



 ノワールの冒険者ギルドに入り、アリエルはギルドマスターのモーガンに声をかけた。


「おおっ! アリエルか! 久しぶりだな!」

「はい」


 微笑むアリエル。


「エドラも元気そうでなによりだ。前回の戦いでは世話になったな。お前がいなかったら、ノワールは壊滅していただろう。怪我とかはしていなかったか?」

「平気。それに私一人の力じゃないから。魔王軍の人達の力があってこそ」


 アリエルの隣で、エドラは淡々とそう口にした。



 女神がアリエルの体を乗っ取り、世界を白紙にしようとしたことはまだ記憶に新しい。

 世界の各地では女神の分身である巨人が出現。

 人々はなすすべもなく、女神の分身に駆逐されていった。


 しかし──そこで魔王軍の四天王。そして魔王が蜂起する。


 各地で暴れ回る女神の分身を、次々と倒していった。

 その姿はさながら、御伽噺の英雄のようだった。


 ──ということを、アリエルはブリスやユリアーナから伝え聞いていた。



 戦いも終わり、アリエル達は一度魔王城に集合した。

 エドラが彼女の顔を見るなり抱きついてきた時は嬉しさやら照れ臭さで、ちょっと困惑してしまったほどだ。


 そしてその後、ブリスと一緒に王都に帰還。

 ユリアーナから話を聞きつつ、街の復興作業を少し手伝ってから──こうして、ようやくノワールに帰ってこられたということだ。



「随分と長旅になりましたね」

「うん」


 アリエルの言葉に、エドラが首を縦に振る。


 最初は紅色の魔石を届けるのと、王国一武闘大会に出場するためだった。

 それが終わればノワールに戻ってくるつもりだったが……随分と回り道をしてしまったものだ。


「ブリスはいないのか?」


 とモーガンが彼女達に問いかける。


「ブリスなら魔王城にいます。なので帰ってくるのはもう少し後になりますわ」

「そうか……それにしても驚いたな。まさかブリスが魔王軍の人間だったなんて……」


 モーガンは自分の顎を撫でながら、微妙な表情でそう口にした。


 ──ブリスが魔王軍に所属していること。

 そしてこの街にやってきた事情は一部の人間には伝えている。

 モーガンもその中の一人だった。


 最初に打ち明けた時、モーガンは大層驚いた声を上げていた。

 しかしアリエルやブリスが丁寧に説明すると、次第に納得していった。


「えー! ブリスさんはまだ戻ってこないんですか!? 楽しみにしてたのに……」


 後ろからひょこっと受付嬢のシエラが顔を出す。

 彼女にも無論、ブリスの正体は伝えている。


「ふふふ。どうしても外せない話し合いが魔王城で開かれるらしいですわ」

「外せない話し合い? それはなんなんでしょうか?」

「さあ……? エドラはなにか聞いています?」

「聞いてない」


 アリエルとエドラもその詳細は知らない。

 もちろん、ブリスにも聞いてみたが、彼も詳しくは知らないらしい。なにかを察している様子ではあったが……。


「ブリスは本当に戻ってきてくれるのか?」


 心配する様子で。

 モーガンの口から疑問が漏れた。


「どういうことですか?」

「いや……なに。元々、魔王軍の人間だったんだろう? 喧嘩別れして、城を飛び出したとはいえ──そのわかだまりも、今回の戦いで解消したんじゃないか?」

「その通りですわ。ブリスはもう、四天王さん達のことを恨んだりしていません」

「ならばこのまま魔王城に居着くんじゃないか? ヤツにとって、そっちの方が居心地がいいんじゃ──」

「なにを言ってるんですか、モーガンさん!」


 アリエルが口を開くより早く──シエラが前のめりになって、モーガンにこう反論した。


「そんなことを口に出したら、ブリスさんが本当に戻ってこなくなる気がするじゃないですか!? それにまだまだ問題は山積みです」


 彼女の言う通り、教皇──を名乗っていた女神がいなくなったこと。そして紅色の魔石も全て消滅したことから、ゼブノア教団の影響力は急激に薄れていった。

 しかしそれも完全ではない。

 暴徒化した教団の残党が各地で暴れ回り、その対応に国の騎士団や冒険者ギルドは追われているのだ。


「不甲斐ない話ですが、ブリスさんがいなければ解決することが出来ません……それなのにモーガンさんが、そんな気になっていたらダメですよ!」

「お、おう。すまん……」


 シエラに叱られて、モーガンもたじたじである。


「まあ、まずは労を労うことが先決ですけどね。ブリスさんにはしっかり休んでもらわないとっ!」


 とシエラは腰に手を当てた。


 彼女が少し動く度に、その豊満な胸が上下に揺れている。

 アリエルはつい、彼女の双丘に目がいってしまった。


(労を労う……って、なにをするつもりだったんでしょうか?)


 もしかして、その大きな胸でブリスを包み込み──。

 ちょっとエッチな妄想をしてしまい、アリエルはブンブンと首を横に振った。


「大丈夫」


 シエラとモーガンの懸念を否定するのは、エドラだった。


 彼女は自信満々にこう断言する。


「ブリスなら絶対に戻ってくる。愛する恋人を放って、魔王城に居着くだなんて私が許さない。そんなことを考えていたら、私が無理矢理にでもブリスを連れ帰ってくる」

「「愛する恋人?」」


 シエラとモーガンが声を揃える。


 エドラに視線を向けられ、アリエルは頬を朱色に染めるのであった。

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